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7.小惑星国家の結婚事情

 〈ヘスペリデスの園〉を見た海堂=ドローンが険しい声を出す。


『おい、これ中心にあるの、超小型ブラックホールだぞ』

「あ、それテレビで聞いたことがある。ブラックホールって、黒い穴って意味だよね」

『なんだろうな。間違ってないのに、すごく間違ってる気がする訳し方だな。重力が大きすぎて光すら逃げ出せないから、目に見えない星だ』

「それで、アンドロメダ。海堂くんが、このブラックホールに入って、秘宝を取り出してくればいいの?」

「いいえ。ブラックホールに入ってしまっては、いくら資格者リテイナーでも脱出できません。秘宝が隠してあるのは、リングの中です」

『リングは、超高速で回転する岩の集まりだ。へたに突っ込むと、岩の竜巻に巻き込まれてズタズタにされるぞ』

「なるほど。十両高校女子ラグビー部のタックルに潰されるみたいなものね」

『どうしてまた、意味不明なたとえを、ドヤ顔で語ってんだお前は』

「いやだって! 十両高校女子ってすごいのよ! がーん、とぶつけられたら、男子だって吹っ飛ばされちゃうんだから!」


 亜里砂は、我ながら適切なたとえができたと思っているので不満顔だ。


「破壊されずに〈ヘスペリデスの園〉に入るルート情報は、私のナノマシンに入っています。これを亜里砂さまにお伝えします」

「え? 私?」

「はい」

「中に入るのは、海堂くんだから、私じゃなくて海堂くんに直接伝えたら? 私、記憶力にはあまり自信なくてさー」

『お前、俺ひとりで行かせる気だろ』

「私いても、役に立たないってば。ジェットコースターとかの絶叫系、苦手だし。目をつぶっちゃうんだよねー」

『ブラックホールの降着円盤を、アトラクションと一緒にするなよ!』

「そういうわけで、アンドロメダ。海堂くんに伝えてくれる?」

「……イヤです。そんな不潔なこと、できません」


 アンドロメダは、大きな瞳に涙を浮かべて言った。

 続いて、顔を手でおおって、わっ、と泣き崩れる。


「ひどいです、亜里砂さま。いくら今はメカとはいえ、男と私を契らせようとなさるなんて」

「わ、わ、泣かないでよ。ゴメン、泣くほどイヤなら、海堂くんに触らせたりしないから」

『泣きたいのはこっちだよ。なんで会ったばかりの未来人の女子に、ここまで嫌われなきゃならんのだ』

「そっちもゴメンて。思春期の女子は、生理的に男を受けつけないコもいるから。私、別に海堂くんはダメじゃないと思うよ。女子の間でも、一度も名前が出たことないし」

『それ、悪い噂どころかいい噂すらないってことだよな。へーへー、どうせ名前も覚えてもらってなかった同級生ですからねー』

「だから、ゴメンてばー」


 亜里砂は、片手でアンドロメダの背を撫でて慰めながら、片手で拝むようにして海堂の半球ドローンに謝る。

 泣いていたアンドロメダが掌の隙間から顔をあげ、海堂のドローンを見てニヤっと笑う。


『あ、この女……』

「え?」

『いや、なんでもない……で、どうやって情報は渡すんだ』

「それはもちろん、婚姻の儀式です!」


 アンドロメダが嬉しそうに声をあげる。

 亜里砂がギョっとした顔になる。


「婚姻?」

「はい。私の体内のナノマシンは、我がアルニス王家に伝わるもの。王家の者にしか伝授はできません。母から娘へ、そして結婚相手の女性にのみ伝えることが許されます」

「私とアンドロメダが結婚するの? それは……ええー……」


 亜里砂が困った顔になる。

 アンドロメダは手を組んで、上目遣いになって亜里砂に迫る。


「私ではおイヤでしょうか、亜里砂さま?」

「あの、その、イヤってわけじゃないんだけど……結婚って人生の大事だし……」

「大丈夫です。この結婚は、正式なものでなくて、一種のお試しみたいなものですので、束縛するものではありませんから」

「そ、そう? でも女の子同士で結婚しても大丈夫なの?」

「え?」


 アンドロメダは首をかしげた。


「女性は女性同士、オスはオス同士で結婚するものですよ」

「ええっ?!」


 アンドロメダの説明は、こうだ。

 はるか遠い昔に、地球からきた人々が、資源採掘のために、このあたり一帯の小惑星に入植した。その頃には、子供を産んだり育てたりは、別の星にある居住惑星で行っていたらしい。また、食料を始めとする多くの物資は、別の星で生産して持ち込んでいた。

 永劫戦争末期、大歪曲という時空震が発生し、文明は崩壊。他の星との行き来もできなくなった。人々はなんとか小惑星の中だけで暮らせるように小惑星鉱山を改造して宇宙都市を作り上げた。


「ですが今度は、新たな危機が生じました。人が増えすぎたのです」

「増えすぎって……?」

『小惑星改造の宇宙都市は、人口の上限が厳しいんだろう。酸素や水、食料なんかの資源の全部を人の手で作り、さらにリサイクルしないといけない』

「人口爆発の原因は男にありました。女とみれば手当たりしだいに孕ませて子供を作る男と一緒にいては、人口爆発で滅びてしまう。私たちの先祖は男を追放し、女だけの国を作ったのです。こうして私たちは滅亡をまぬがれたのです」

「……ちょっとタイム!」


 亜里砂は海堂の入ったドローンを掴むと、部屋の外に出た。狭い戦闘機内には通路はなく、居室の隣の部屋は台所や倉庫、そしてトイレを兼ねている。トイレと台所が仕切りもないひとつの部屋になっているのは、亜里砂的にはどうかしている気がするが、水回りをひとつにまとめてコンパクトにする理由があった。


「アンドロメダの言ってること、本当だと思う?」

『ウソは言ってないと思う。事実として、人口を抑制するために男と女は別々の小惑星に暮らしているんだろう。しかし、解釈は歪んでる可能性がある。何せ男というものがいない社会で暮らしてきたんだから』

「なんか海堂くんにあたりが強いなー、と思ってたんだけど、男に免疫全然ないんだね。納得した」

『まあ、ヘンなことも言うだろうが、本人としては真面目なんだろうと思うぞ』

「そうだね……ところでさあ」

『男同士、女同士で、どうやって子供を作ってるか、なんて聞くなよ? 俺だってわからんぞ』

「いや、そっちじゃなくて。やっぱり、男って女とみれば手当たりしだいに孕ませたがるものなの?」

『お前もずいぶん男の解釈歪んでるな、おい!』


 海堂が亜里砂の誤解(?)をとくには、ずいぶんと手間がかかった。

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