No.93 信頼(2)
翌朝、砦に駐在する全兵士に召集がかかった。
場所は訓練場。
そこに総勢二百三名が集結する。
彼らの前に置かれた演説台に、三人の男女が登った。
そのうちの一人、ヘンダーソン指揮官が先に前に出る。
「諸君! 数年ぶりに王都から近衛騎士殿が派遣されてきた──」
彼はアルバートとイレーナを兵士たちに紹介した。だが兵士たちの反応はと言えば、大半が「見くびって」いる。
年齢とは一つのステータスだからだ。
齢三〇〇のエルフ、と聞けば誰もが驚き、そして敬うだろう。「きっと素晴らしい知識を持っているに違いない」と。
積み重ねた年齢は「経験」とも同義だ。
その点、二人には──無論、前世と言う異例を除けばの話だが──それがない。
兵士たちからはただの十六歳の「ガキ」に見えてしまうわけだ。
レイトンだけが特別反対的だったわけではないという事が、彼らの反応から十分わかった。
(なるほど、どうりで派遣任務が新人に任されないわけだ)
アルバートは納得した。だが、
(だがイリヤ一上士は「お前達なら大丈夫だ」と信頼してくれていたんだ。その信頼を裏切るわけにはいかないな)
そう思って、気合を入れた。
ヘンダーソンからの紹介が終わり、今度はアルバートとイレーナが前に出て喋る。
上官として──否、上に立つ者として話すときはそれらしいモノでなくてはいけない。
堂々として、声を張り上げる。
「ご紹介に預かった、アルバート・シュティーアだ! 諸君らとは一回りも若いが、腕には自信がある。二か月の間だがよろしく」
イレーナも同様に名乗った。
「同じくイレーナ・シュティーア。特別指揮官として、二か月間どうぞよしなに」
ふん、と。
鼻で笑ったような声がどこかから聞こえた。やはり歓迎されてはいない。
だからアルバートは思いっきりに叫んだ。
「──どうやら諸君らは我々を『生意気なガキ』だと思っているようだ!」
先ほどまでにやついていた者達の口元が逆側に歪む。アルバートは続けた。
「思うだけなら構わないが、それを態度や行動にまで出されてしまっては困る」
これは事実だ。昨日のような命令違反が続かれては非常に問題となる。
「そこで、だ」
一息つき、アルバートは周囲を見渡しながら言った。
「試してみようではないか、実際はどちらが上なのかを──」
今度は、彼自身がその口元に笑顔を携えながら。
かくして、訓練場は闘技場に役割を変えたのだった。




