No.80 授与式典
騎士正装に着替えたアルバートとイレーナの二人は指定された通り、再びピトムニクの待つ詰め所に戻った。
どうやら彼は授与式の会場である謁見の間へ先に向かったようで、代理の者が対応してくれた。
代理の「彼」とは、近衛騎士団に入る前から面識があり、入団以降も何度かプライベートで食事をしたほどの間柄だ。
「アルバート君、また今度組手に付き合ってくれよ」
「またそう言って、リーフェに怒られますよ」
「ははは、君もだんだん僕の扱いに慣れてきたな」
彼はそう笑って頭頂に生えた栗毛の犬耳を撫でた。彼の──シャルゴ・フリードマンの妹であるリーフェと同じ耳だ。
「だって、この間も手合わせしたじゃないですか。僕は構いませんが、『あいつは部隊管理が主任務なのにすぐ鍛錬場に行きたがる』ってニューオリンズ二上士が愚痴ってましたよ」
シャルゴは魔法科学校を首席卒業した後、近衛騎士団でもその秀才ぶりを発揮し、わずか二年のうちに団の管理をする役職についていた。
だが事務仕事は得意であれど好みではないらしく、隙を見つけては鍛錬場に足を運んで誰かと手合わせをしようとする。
古参で団の幹部とも言えるニューオリンズからはその自由さは目に余るものがあったようで、以前に冗談めかして愚痴をこぼしていた。
「そうか、あの人を怒らせてしまうと当分事務室に閉じ込められそうだ。しばらくはやめておこう」
「その方が良いでしょう」
三人は笑いつつも王城の開放感ある廊下を進んで行った。
謁見の間は王城内でも特に装飾にこだわって作られた「もてなし」の場だ。その扉も大きく、荘厳さを感じずにはいられないものだった。
シャルゴは扉の前に立って、準備はいいかを二人に尋ねた。二人ともが首を縦に振ると彼は一つ咳払いをして声を張り上げる。
「では……。アルバート・シュティーア三上士、イレーナ・シュティーア三上士の二名が到着致しました!これより入場致します!」
すると、両開きの扉が内側からゆっくりと動き出し、中の様子が伺えるようになった。
手前両脇には重鎧を身につけた完全武装の護衛騎士と、政府大臣らが拍手をして迎えていた。最奥にはユーク国王が玉座に着いており、その隣の椅子にはオーシア王妃も座っている。
だが、今日はその二人だけではなかった。あともう二人、王らの隣に椅子を設けて座っている者が居た。
アルバートはその二人を知っている。いやこの王都に住んでいる者なら、彼らを知らない筈はないだろう。
「両名、敬礼ッ!」
ユーク王の脇には近衛騎士団長のピトムニクが控えており、彼の号令によってアルバートとイレーナは敬礼をする。
次いで「その場で拝跪」との指示を受けてその場に跪く。そうしてようやく、王の御言葉を拝聴することが出来るのだ。
「アルバート・シュティーア。イレーナ・シュティーア。両名とも、昨日は屈強な賊をものともせず立ち向かったこと、大儀であった。両名の行動に私から感謝の印として名誉勲章を与える。受け取り給え」
「はっ!」
ユークは隣に座る王妃と、さらにその隣の二人を見た。そしてアルバートらの方に向き直ると厳かな声音で言う。
「今日は我が息子と娘が、諸君らを一目見たいと参上した。二人から勲章受け渡そう」
紹介に預かった男女は席を立ち上がり、それぞれ名乗る。
「第二王子のエッジ・ウォードクだ」
「第四王女のアーチャ・ウォードクで御座います。この度のご活躍、誠に勇敢であったと聞き及んでおります」
二人は階段を降りて、跪くアルバートらの前に立ち、侍女が持ってきた勲章を手に取る。ピトムニクが「気をつけッ!」と指示を出したのでアルバートは立ち上がって気をつけの姿勢をとった。
エッジ王子がイレーナの、アーチャ王女がアルバートの胸元に勲章を刺す。
これで二人の胸には二つの勲章が輝くようになった。それは騎士団に入ってからまだ一年の若手としては異例の数であり、この二人の実力を公に証明するものでもあった。
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