No.69 近衛騎士団とは
3ヶ月経った。早いものでもう夏間際だ。
マーリアの気候は穏やかで四季を通して安定した気温であるとは言え暑くなるのに違いはない。最近は薄着が目立ってきた。
3ヶ月という期間を経て『彼は』は非常に成長した。当初アンリが体力の少ない事をアルバート憂いたのも今は昔の話である。
「さァ、貴様ら。新人訓練も今日で終わりだ」
「ハイッ!」
「明日からは部下であり同僚!そして仲間だ!よろしく頼むよ!」
「宜しくお願いしますッ!」
今日も今日とて新人騎士達と教官達の威勢の良い声や怒声が聞こえていた。
だがそれも今日で最後。明日からは形式上彼らの事は正式な騎士として扱う事になる。
皆、この三ヵ月で随分と成長した。軍学を学び、部隊単位での戦いの経験も積んだ。
あとは実戦の経験、といった感じである。
近衛騎士団の仕事は数多くあるが、他騎士団とは違うところが2つほどある。
先ず、王宮警備という大役。例え王都に勤める上級騎士でも王宮内で仕事をする者は一握りであり、それは王宮内で働く貴族──つまりマーリア王国の幹部の事である──の護衛という名目であって王宮勤めという訳ではない。つまり例外を除いて基本王宮内にいる騎士は近衛騎士という事である。
それは何故か。
近衛騎士団とは言わば国の象徴である。王族の権威を武力という形で分かりやすく周囲に知らしめる存在である。それゆえ近衛騎士に求められる要素は他騎士団よりも高い水準になっている。
近衛騎士に必要な要素、それは大きく分けて実力、知力、人格の三つである。
実力は当然戦う上での力であり、武術・魔術・賦力の事だ。これがなければそもそも通常の騎士としての素質すらない必須の能力である。
知力は軍・部隊単位での戦いを統率する上で必要な戦略・戦術など軍学的知識の事である。これにより近衛騎士全員が物事を自分で判断し、打破することのできる指揮官クラスの人材に絞られる。なぜそこまでのことを求められるかについては後述しよう。
人格は愛国心。国を敬い、仲間を信頼し、民を思いやる心である。近衛騎士団が国の象徴であるとは先ほど述べたが、それは近衛騎士団がこの国の最たる象徴、長である王(あるいは王族)の直属の唯一の部下であることから由来する。つまりは近衛騎士団の一挙手一投足がそのまま王族への評判につながるというわけだ。だからこそ素行の悪いもの(女癖が極端に悪かったり、周囲から嫌われているような存在の事)は近衛騎士団には迎えられない。
これらに加えて礼儀作法なども(たとえば他国の使者が王宮に訪れた際に見くびられないように)必要で、それらをすべて身に着けた者こそが王族なのである。
もう一つが地方派遣。前述したように近衛騎士には実力は勿論のこと指揮者としての素質も求められる。その理由がこれだ。
騎士は普通戦時以外に派遣などはなく、拠点より遠くに行くことはない。大体は自らが仕える領主の賜っている領土までである。近衛騎士ならば、王宮内、広くて王都がその対象にあたる。しかし、近衛騎士にはこれ以外にも地方の駐屯地や砦、騎士団の拠点に派遣される。一度の派遣での滞在期間はおよそ2,3ヵ月で、その場所での指揮権か参謀級の権限が与えられる。
派遣の目的は「伝授」である。
王都の、それも最高峰の騎士団で培われているのは常に新しく、日々進歩する技術である。それを近衛騎士たちが年に一度ほど、地方を訪れ騎士・兵士達に伝え、教える。
つまりは情報の更新や国全体の軍事力の向上が目的なのである。通常、平民や商人などが扱うことのできない高度な魔術などは広まりづらい。それを早く伝えることができるというわけだ。また、先述した通り近衛騎士は王族への畏敬の念にも影響する存在であるので彼らが地方で活躍し騎士・兵士たちにも慕われれば王族の威光の届きづらい地方にも王族への信仰心が確立され、統治が容易なのである。
つまり、アルバート達5人のこれからの仕事は、王族の護衛や王宮警備、地方派遣などである。
そして、その中でも訓練や修練、勉学などは当然続けなければならない。厳しい職場であった。
今回は説明のみで終わってしまい申し訳ありません。
次回は騎士団の日常編です




