No.63 騎士の訓練
それから一週間後、ようやく全新人近衛騎士が揃ったようでピトムニクから召集がかかった。
鍛錬場の中央広場に約20名の男女が制服に身を包んで整列している。それぞれ年齢はまばらで二十代も終盤らしい者もいたが、共通して言えるのは全員が活気に溢れている事だ。その中でもアルバート達特待生五人組は一番若いらしかった。
「──さて諸君!まずは入団おめでとう。そして宜しく頼む!
私は騎士団長として、長として、私は君達の援助を最大限に行っていくつもりだ。
君達も試験を通ったからと言って、推薦で入れたからと言って努力を怠らず、誠心誠意務めを果たしてくれることを願う!
君達は国内最強の騎士団に入団したのだ。これからは周囲への振る舞いにも気を付けるように!」
その前に立ち、声を張り上げて喋っているは近衛騎士団長ピトムニクだ。
彼はそれからしばらく騎士としてあるうえでの心掛けや注意すべき事などを語り、そしてそれがひと段落ついてからそれまでの強く勇ましい声を弱めて言った。
「──しかし、君達は過酷な試練を乗り越えた強者達だ。絶え間ない努力をして私達の目に留まり、そして認められた修練の結晶達だ。
きっと、これからのこの国を護り抜いてくれる事だろう。期待している。
これにて私からの挨拶は終わりだ!──この後君達の訓練教官を発表する。それぞれ呼ばれたらその教官の前に整列するように。
では、敬礼!」
彼の合図で新人騎士らは習いたての敬礼をする。
そして、ピトムニクが脇によけてから近衛騎士の一人が前に出て担当教官の名前と、その下につく新人の名前を呼び始めた。アルバートが呼ばれたのは三人目の教官の時だ。
「──続いてイリヤ・マリア一上士の訓練生。
アルバート・シュティーア。
イレーナ・シュティーア。
アンリ・エリオット。
リーフェ・フリードマン。
ガルム。
呼ばれた五人はイリヤ一上士のところへ」
「はい!」
呼ばれた全員が内心で、この特待生五人組の面子が固まって呼ばれた事に驚いていた。
小走りでイリヤのいる所に行き、横一列に整列する。順番はイリヤから見て左からアルバート、ガルム、イレーナ、リーフェ、アンリである。
彼女は、その全員がしっかりと居ることを確認し、「うん、良し」と言って手を叩く。
「さあ、今日からお前らの教官をやるイリヤだ。イリヤ教官かイリヤ一上士って呼んでくれ。くれぐれも様付けをするんじゃあないよ」
「はい!」
彼女は5人の返事を確認すると、右端のアンリに手を差し出した。
握手だ。彼女は全員と握手をし終えると、また手を一度パンッと叩いて言う。
「よぉし、お前らの実力は確認した!アタシはそれに合わせて訓練するが、死なない程度に頑張りなよ」
まるで血に飢えた狼のように、妖しげに口角を上げて歯を見せるイリヤ。そこへアンリが手を上げた。イリヤは彼女の前に立って訊ねた。
「どうした」
「はい。イリヤ教官は実力を確認したと仰っていましたがどう言う意味でしょうか」
アンリは、一、二歩分前にいるイリヤを見上げながら、しかし臆することなく質問する。
イリヤはそれを聞いて一度意外そうな顔になり、そして答えた。
「ん、言ってなかったか」
「はい」
「...ああ、そうか。驚かそうと思って言わなかったんだったか...
──ゴホン。実はな、アタシは『賦力』持ちなんだ。だからお前らの力は触れば分かる、文字通り『手に取るように』な。
賦力持ちだって言うと大抵の奴らは驚いてくれるんだが、お前らはそこに賦力持ちが二人も居るからそりゃあ驚かないよな」
彼女はへらっと笑ってアルバートとイレーナに視線を送る。
彼女にその事は言っていないからその情報は彼女の『賦力』で入手したのであろう事はすぐに分かった。
因みに、賦力とは言わずもがな『神から賦与された力』の事である。
「ええ、驚きはしませんが尊敬は致します。しかし、それなら私達の実力を理解しているというのも頷けました」
「そうかい、そりゃ良かった」
自己紹介も程々にして、一人と五人は訓練を開始した。
五人はこの三年間鍛えてきただけあって多少の運動では疲労のひの字も見せない殊勝ぶりをみせた。五人とも騎士になるに当たって書類上は『魔道士』として登録されているのだが、武術士としても十分通用しそうな基礎体力にイリヤは感心した。




