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No.55 予兆

 翌日、アルバートとイレーナはする事も無く暇を持て余していたので、街を歩いて回る事にした。

 モアルドは町とは言えど、やはり辺境の田舎で人通りは少ない。しかし、それでも人で賑わう場所はある。例えば市場や冒険者集会所がそうだ。

 二人は丁度集会所の前を通りかかった。

「入ってみるか」

「ええ」

 二人は軽い依頼でもないか探すことにした。

 中に入ると、王都の集会所と同じく酒場と一体化したような場所にテーブルなどが置かれ、その反対側に受付があった。

「あれ、坊ちゃん!?」

 ふと、聞き覚えのある呼び声がする。声の方を向くと、そこには三人組の冒険者が羊皮紙片手に立っていた。三人とも見知った顔だ。

「ラルズさん、ギルさん、マルクさん!」

 そう、かつての旅でアルバートと共に土竜を相手したあの3人組だ。3人とも以前と変わらない様子で元気そうな顔つきをしていた。

 聞けば、3人はあの旅の後このモアルドに定住することにしたらしく、土竜討伐の資金でそれぞれ家まで買ったそうだ。

「どうしてこの街に住むことにしたのですか?」

 イレーナが訊ねると、ギルが照れくさそうに答えた。

「それは、まあ、お嬢様方にご恩を感じているからです。ここへ住んで魔獣狩りなんかをして、少しでもお二人のご両親が住むこの町を平穏にしよう...って。頭の悪い俺らにはそれぐらいしか恩返しの方法が思いつきませんでしたから...」

 このモアルドは辺境で山や森も近く、魔獣が活発に活動をする夏などは町周辺に魔獣が下りてくる事もしばしばある。そういった場合は兵士や冒険者が討伐するので冒険者は町に必要な存在と言える。

 イレーナは、彼らが自分達に恩を感じて自らそういう選択をしたのであれば自分から何か言うことは無いと思った。

「そうですか、有難うございます。これからもこの町を宜しくお願いしますね」

 イレーナが頭を下げて感謝の意を伝えると、ギルの後ろからマルクが顔を出して言った。

「お礼を言うこたぁ無いですよ!それにコイツ、集会所の酒場で働いてる娘と仲良くなって、去年にはとうとう結婚しちまいやがった!これもお二人のおかげでさぁ!」

 すると、ギルは焦ったように振り返って「馬鹿っ、俺が自分で言うつもりだったのに!」と憤り、マルクを叩こうとするが彼はひょいひょいっとそれを(かわ)していた。それをみてラルズは咳払いを一つし、仕切り直す。

「まあ、俺達だってこれでもそれなりに名の売れた中堅冒険者なんですぜ?冒険者ってのは自由でいい加減な奴らの集まりなんでさあ、そいつらの勝手な行動に一々お礼なんていりませんぜ」


 ラルズは言い終えてからへらっと笑い、「そうそう、このあと暇ですかい?一緒に飯、いきやせんか。お二人の王都での話が聞きたいんでさあ」といって話題を変える。

 アルバートは「構いませんよ、3年ぶりで今は3人の方がここに詳しいでしょうし、おすすめの店でも紹介してくださいよ」と快い返事をし、何から話そうかと考えた。


「あ、そうそう。僕らはまだ成人してないんでお酒はまだ飲めませんよ?」

「ええっ、まだ成人してないんですかい!?そりゃまいった、成人前からそんなに(たくま)しいのに成人しちまったら国でも創り始めそうだ!」

 等と冗談交じりに5人は仲良く店に向かう──と言っても、3人のおすすめの店と言うのが集会所の酒場であったので30秒も歩かなかった。

 因みに、そこで働くギルの妻(茶髪の獣人であったのでリーフェを思い起こさせられた)も見れて話題に尽きなかった。



     ◇◆◇◆◇



「アル、ちょっといいか?」

 二人がモアルドに帰省してから三日目の朝、イレーナと共に読書をしていたアルバートの元にオンスがやって来た。

 やって来た、とは言ってもここはオンスの家なのだから居るのは当然なのだが、彼がアルバートを呼ぶような用事が思い当たらないのでアルバートは「何だろう」と思って本を閉じ顔を上げる。

 オンスは廊下の扉際から顔を出して手招きしていた。その顔にはいかにも何か企んでいる怪しい笑みを携えている。

「ちょっと行ってくる」

 アルバートはイレーナに一言断って席を立ち、廊下の方に歩いてゆく。イレーナは特に気にするでもなく「ええ」と返事をして、すぐに本に視線を戻した。

 バタリ、とアルバートが扉を閉めて部屋に静寂が訪れる。聞こえるのは、彼女が読んでいる本の少し硬い紙を(めく)る音だけで、そのカサリという()()()()が感じられる音が耳に残る。

 しかし、その静寂もも数十秒のうちに破られた。キィ...、と木の軋む音が小さく鳴り、一人の女性が音も立てずに入ってくる。

「イレーナお嬢様、アイナ様がお呼びです」

 イレーナに丁寧な口調で伝えたのはシュティーア家に仕える女中(いや、格好で言うとメイドと呼ぶ方が相応しいだろう)のセシリアだ。

「お母様がですか?」

 イレーナはセシリアに聞き返す。彼女の母親であるアイナはルセイド家の人間で、ここはシュティーア邸だ。そのアイナが呼んでいるというのをここでセシリアに伝えられるのは、いささか不自然であった。セシリアは答える。

「ええ、それにシャルル様もご一緒で御座います」

 シャルルが一緒なのであれば、それは二人でお茶会でもしているのだろう。ならば不自然でもないな、とイレーナは思考を止めて立ち上がった。

「分かりました、今行きます」

「こちらです」

 イレーナは、シャルルとアイナがいるシャルルの個室へと招かれる。

 当然、この一連の動きは両親4人組による「ある企み」が動き出したことを示しているのだが、それが両親4人組や両家に仕える者のみでなくモアルドの町の一部の者まで巻き込んだ以外にも壮大な計画である事をアルバート達はまだ知らなかった。

 少し前より三人称での表現に変更しておりますが、これは一人称では表現に限界があり、自分の作風に向いていないと感じたからであります。

 突然の変更となり少なからず混乱をお招きしたかも知れません。

 一つの告知もせずに変更いたしましたことをお詫び申し上げます。

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