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転生したらエルフだったので無双する  作者: 随喜夕日
第01章 誕生と出会い
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No.04 隣となり

 もうすぐ4歳になろうかという頃、何時もとは違った騒がしさで僕は目が覚めた。窓から外を覗いてみる。

 僕の部屋は二階なのでいつもなら(へい)の外の通りの様子までよく見えるのだが、今日は違った光景が見えた。


 馬車3台が屋敷の前に停まっている。そこから出てきた人は荷物を隣の家に運び込んでいる。

 隣の家はつい先月出来たばかりの新築で、大きさは僕の家より一回り小さいくらいだ。


「引っ越しか」


 常識的に考えてそうだろう。

 一体どんな人が越してくるのか、と気になり暫く彼らの作業を見つめていると周りの人とは身なりが違う、貴族らしい服装の男が馬車から降りてくる。

 彼がそうだろうか?と見つめていると、男は荷台の方に手を差し出す。その手をとって一人の女性が降りてくる。母さんにも劣らない美貌の、淑女(ぜん)とした人だ。いや、よく見ると彼らは...


「エルフ...だ」


 もう一人、男の手を借りて降りてきた。

僕と同じくらいの、エルフの少女だ。 幼いながらに凛とした雰囲気を醸し出している。

 恐らく家族であろう彼らは僕の家の方に歩いてきて...

その時、部屋のドアをノックして誰かが入ってくる。セシリアさんだ。

「アルバート様、お早う御座います。早速ですが、お着替え下さい」

 その手に着替えを持った彼女はそう言った。


     ◇◆◇◆◇


 朝食の席、僕は何故か外出用の正装を着せられて席についている。

 両隣にはオンス父さんとシャルル母さん。そして向かいには、先ほど窓から見えた三人家族のエルフがいた。

「久しぶりだな、オンス」

向かいの男は父さんに向かって挨拶する。口振りからして知り合いの、しかもそれなりの仲らしい。

「ああ、何年ぶりだ?会えて嬉しいよ、ハンク」

 本当に嬉しそうに、父さんはハンクというらしい男に返事した。

「シャルルも変わらないわね、相変わらず元気そう」

 ハンクさんの奥さんが挨拶してくる。

「アイナちゃんも変わってないわねぇ」

 奥さんはアイナという名前のようだ。4人は何かの話で盛り上がっている。僕と、目の前の少女は蚊帳の外だ。

 暫く話が続いたのち、突然に父さんが僕の肩に手を乗せる。

「...それで、コイツが息子のアルバートだ。よろしく頼む。アル、挨拶しな」

 父さんが目の前の彼らに僕を紹介した。僕も挨拶をする。

「初めまして。アルバート・シュティーアです」

 座ったままで一礼するとハンクさんが返事をくれた。

「そうか、君がアルバート君か。オンスからの手紙で聞いているよ。ほら、レーナも挨拶だ」

「イレーナ・ルセイドです。宜しくお願いします」

「レーナもアルバート君と同い年だよ」

 ハンクさんに言われて目の前の少女、イレーナが挨拶をするが、やはり母親のアイナさんに負けず劣らずの淑女然とした振る舞いが見てとれる。よほど親の躾がなっているのだろう。

「イレーナちゃんヨロシクね~」

そう言う母さんに対し、イレーナは「はい、宜しくお願いします」とにこやかに返事をした。


 ...本当に同い年なのか、この子は?


 少し疑問に思うが、礼儀がよくて悪いことなどないので気にしない事にする。

 そうしているとセシリアさんとファシスさん(この屋敷の料理係を勤めている方だ)が朝食を運んでくる。来客が居ることもあり、何時もより少し豪勢だが、胃がもたれないような丁度良い料理だった。

「じゃあ、3人も長旅で疲れたでしょうし、朝食にしましょうか」

 シャルル母さんがそう言って音頭をとる。

「彼らとの再会と出会いに感謝して、頂きます」

「「「頂きます」」」


 朝食を食べ終わると父さんはハンクさんと一緒にどこかに出掛けてしまう。母さんとアイナさんは世間話なんかに夢中だ。僕と、イレーナは二人で遊んできなさいと庭に連れ出された。

 今庭にいるのは僕とイレーナ、セシリアさんの3人だ。イレーナさんは端のほうで控えるように立っている。実質、イレーナと二人きりみたいなものだ。

「えっと、何しようか」

 正直、幼子の遊びなど何をすれば良いか分からない。だが何時もやっているような只走り回ったり、棒切れ振り回したり何ていうのはこの淑女然とした彼女とすることではないだろう。そんなことを考えていたら、彼女は突然来ていたワンピースを脱ぎ出す。

「ちょ、ちょっと!何してるんだ!」

 僕は慌てて止めようとするが彼女は構わずに脱ぎ捨てる。中にはシャツとショートパンツを履いていた。ひとまず下着でないことに安心するが、彼女の行動が謎だ。

「何って、こんな動きづらい服じゃ遊べないでしょう?」

 相変わらずの落ち着いた口調で彼女は言った。

「そっか、そうだね。じゃあ、何をしようか」

 納得した僕は問う。

「とりあえず。かけっこでもしましょうか?」

 屈伸をしながらイレーナは言った。かけっことは以外だが案外と運動が好きなのだろうか?


 ...いや待て、屈伸?確かに彼女は屈伸をした。だがこの世界には運動前に屈伸何ていう準備運動の概念はない。せいぜいノビをする程度。何故屈伸を知っているのか。そう考えた所で思考は停止される。

「ほら、走らないの?」

 そう急かされ僕も彼女の隣につく。

「じゃ、ゴールはあの木ね」

 イレーナが指差したのはおおよそ20m先の少し大きめな広葉樹。

「セシリアさん、合図してくれないかな?」

 僕がいうとセシリアさんは「(かしこ)まりました」と言い、僕たちの隣までやって来た。

 僕たちは構える。ちらとイレーナを見ると3才らしからぬ力み過ぎない適度な緊張感を持った構えであった。つくづく本当に『同い年』なのか疑問に思う。

「では、位置について。用意、ドン!」

 合図と共に僕たちは走り出す。

(速い!)

 走りだけではない。合図に対する反射神経も早かった。そして走り方、前世よく公園で見かけたような、テレビで見かけたような幼児の走り方ではない。洗練されたものだった。あっという間にゴールの木を過ぎる。時間にすれば5秒か6秒。大人からすれば遅いが、もうすぐ4歳になるような幼子(おさなご)の走りとするならばかなり速い。ゴールはほぼ同時で、スローカメラでもなければ勝負は分からないだろう。

 だが、この勝負一つで、何か確信めいたモノを感じた。木陰に移動し、木に手をつきながら僕は問うた。


「君は、転生者かい?イレーナ」

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