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No.38 謁見

 今日は一日中ガルムを鍛えるつもりだったが、出来なかった。


 まだ昼になりきっていない頃にウォーデンがやって来た。

 その隣には面識のない男が居て、ウォーデンが彼を紹介した。

 彼は政府大臣だと言う。政府大臣といえば、このマーリア国の王城内で政治をし、国を操っている国の首脳格である。

 そんな方が何故こんなところに、と聞くと僕とイレーナに用があるらしい。僕達はエルゲイ荘に入り、中央室で向かい合って座る。

 政府大臣はいかにもな高級な服装であった。


「それで、用と言うのは何でしょうか?」

 僕が政府大臣の男に聞いた。政府大臣は無機質に答える。


「これは我らが陛下のご勅命で御座います。

 アルバート・シュティーア様、

 イレーナ・ルセイド様、

 御二方を土竜討伐に多大な貢献をなされたとして、陛下がご対面をお望みであられます。

 是非、王城にいらして頂けませんか?」


 なんだと?陛下が...ユーク王が僕達と対面したい?


 まさか、あの土竜討伐がここまで大事(おおごと)になるとは。全くもって予想外だった。

 僕は前世の頃から重苦しい会合や行事などは好きではないのだが......

 しかし、待てよ?


 ふと考えるとこれは良い機会ではないだろうか。ガルムの父親であるユーク王と話をする機会が出来たのだ。願ってもない好機だ。

 これは喜んでお受けしよう。


「それは、今からでしょうか?」

「ええ、是非」

 急な話だな。まあ、この世界ではそんなものなのだろうか?

「分かりました。制服のままで宜しいですか?」

「ええ。準備が出来ましたら学園の入口にいらして下さい。馬車でお送りします」


 僕とイレーナは部屋に戻って私服から制服に着替えた。あの執事服モドキとワンピースだ。黒を基調にしていて気品があるからこういう場面には持ってこいだな。

 学園の外に出てみると、以前アンリに乗せてもらったものと引けを取らないほどに豪華な馬車が待っていた。


 僕達が近付くと先ほどの政府大臣が現れて馬車に乗せてくれた。

 僕らが乗ったのを確認して、馬車はゆっくりと王城を目指しはじめる。


 馬車の中では、これから行う事とその時の振る舞い方を教えられた。


 窓から覗く謁見通りはいつもの様に人で賑わっていた。流石は大都市である。

 その通りを真っ直ぐと進んで行けば、王城である。王城はその周囲が堀になっており水が張られている、有事の際に侵入を困難にする為だが、それも景色の装飾の一つとなっていた。

 王城に入るには橋を渡る、橋の向こうにあるものは全てが豪華絢爛であった。

 塀や城、その間の中庭や建てられた像まで、全てに多くの職人を使ったのであろうことがすぐに分かる。


「到着いたしました。どうぞお降り下さい」


 馬車から降り、政府大臣に案内されて『謁見の間』に連れてこられた。

 僕達が入ると足元には絨毯があり、その長い絨毯が王の玉座までの道を作っている。

 絨毯の両脇には王族近衛騎士と思われる者と政府大臣らしい者が何人か並んでいた。


 僕とイレーナは馬車の中で政府大臣に言われた通りに王の御前まで歩き、(ひざまず)く。

 ユーク王は玉座に座り、ただじっと僕達を見つめている。歳は40から50ほどであった。


(おもて)を上げよ」

 ユーク王は低く少し篭ったような声だった。彼は僕らが彼の方を向いたのを確認して、口を開く。

此度(こたび)は土竜の討伐、大儀であった。

 貴殿らの働きにより北マーリアの大森林は安全になり、付近の者達も安心して暮らせるようになっておる。

 改めて感謝するぞ」

「はッ!」

「貴殿らには、その功績を(たた)えて『名誉勲章』を授けると共に、金貨10枚をそれぞれに進呈しよう」

「有り難う御座います」

 僕は立ち上がるように言われて、勲章を渡される。イレーナも同様だ。勲章を持ってきた人がブローチの様にそれを胸に付けてくれた。

 そして、金貨10枚の入った箱が渡される。

 金貨10枚...前世で言えば100万円だ。物価の事も踏まえて考えると1千万円相当になる。それが僕とイレーナそれぞれにだ。またもや大金が入ってきた。やはりあの土竜は金竜であったか。


 僕達が勲章を付け終えると、周囲の騎士や大臣達が拍手をしてきた。やはり少し、照れるな。


「...貴殿らと話がしたい。ピトムニク以外は下がってくれ」

 ユーク王がそう言うと、周囲の人達は一人の騎士を残して全員下がって行った。

 残った騎士はユーク王より10歳ほど年下らしい屈強な男だった身に付けている重そうな鎧がガチャリと音を鳴らしている。


 全員が僕達4人を除く全員が謁見の間から出て行ったのを確認して、王はその引き締まった雰囲気を崩して微笑んだ。

 以外にも優しそうな顔になる。

 

「では、硬い行事も終わった事だし、一緒に食事でも如何(いかが)かね?私はお腹が空いてしまったよ」



 大国の王らしからぬ言葉であった。

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