No.34 授業II
さて、今日からは本格的に授業が始まる。僕はどんなものかと期待していた。
教室の前に立つミズーリ先生が言う。
「では、授業の説明をします。
この学園では2種類の授業があります。
一つは、全員が受ける総合授業。
もう一つは、それぞれが自分で選ぶ選択授業です。
総合授業の方は基礎的なモノから中級レベル以上までを幅広く学習しますが専門性が少し欠けます。
選択授業は自分の興味がある教科...つまり興味のある魔法についてを詳しく研究します。もしかしたら自分で新たな魔法を生み出すことになるかも知れませんし『上級以上の魔法』を手に習得することになるかもしれません。
選択授業については来月からになりますが、それ迄の総合授業で自分の興味がある教科を決めておくこと。宜しいですね?」
最初の授業は四属性魔法についてだった。これは全て上級まで使えたので僕にとっては基礎や中級のお復習いの様なものだ。
次に国語の授業。魔法の詠唱をする上で語彙力というモノは必要不可欠だ。言葉の意味を理解し、詠唱することで魔法は発動する。よって、魔法を作るにしても使うにしても国語力は必要な要素だという。
その次は光と闇属性の魔法授業。これもお復習い同然だ。アンリが苦戦しているのは少し以外だった。彼女曰く「光や闇ができる理由がいまいち納得出来ない」のだとか。それでも中級まではなんとか使えているのだから魔法のセンスが素晴らしいのだと思う。
ここで昼休みを挟む。自分で昼食を作る程の時間はないので学食になる。学食は格安だし、特待生なら特定の料理は無料だった。シチューはそれなりに美味しかった。
昼休みが終わると無属性魔法の授業になる。一言で無属性とは言っても種類が多い。なにせ『最も自由な魔法』と呼ばれるくらいだ。ほかの属性魔法との「相性」も良い。これは習得していない魔法も多いので結構楽しかった。
最後に、魔法具の授業である。これの担当教師はミズーリ先生だった。確か、前に「魔石の研究をしていた」と言っていたか...魔石も魔法具に必要な要素らしいので納得だ。僕は魔道具については殆ど知らないのでこれは勉強になった。アンリが「出来ないこともありますのね」と言ってきたが、当然だろうと言っておいた。笑いのセンスも無いみたいだしな。
そして、選択授業はこれらの授業の中から興味のある教科を2つ選んでいくのだが、僕は魔法具と無属性魔法を選ぶ事にした。無属性魔法には汎用性と多彩性があり、尚且つ回復魔法などの重要なものも多いなどこれからに必須なモノだと思ったからで、魔法具は単純に知らない事が多いのと「自分で作る」のが容易だからだ。
と言うのも、魔法具というモノは無属性魔法並に多種多様である。例えばエルゲイ荘にある照明、コンロ、水道(水を生成するので成水機か?)等も魔法具であるが、それらを作るのは魔法自体を作るより比較的に簡単であるし幅も広い。これを極めていけば自動車なども作れるかもしれないのだ。....流石に学園生活の間でそこまで行けるとは思えないが。
「では、皆さんに配った魔石をその木の穴に収まるよう調整しなさい。魔石を削っても、穴を削っても構いません。それが終わったら固定して完成です」
今日は光る魔石を用いた照明器具を作成した。木の箱に空いている穴に魔石をはめ込むだけだったので簡単だったが、これが僕にとって初めて作成した魔道具となる。なんだか大切にしたくなって、部屋に飾ることにした。明るさは申し分ないが魔素持ちが悪い上に魔石の位置が低くて実用性が低かった事は置いておこう。
これらの授業が終わると時間は大体午後の3時半頃になる。買出しに行ってから家に帰って夕食の準備をする。5時頃には夕食を食べ始めて、風呂に入ったら6時になる。その頃にはもう日が落ちてあたりは暗くなっている。街灯もロクにないし、外は本当に真っ暗だがエルゲイ荘は明るかった。
僕は資料室の本棚から適当に持ってきた本を読み、9時頃には寝る。健康的な毎日である。
今日の本は『マーリア戦記-6ヵ年戦争-』と言う、その戦争に関わった者が書いた日記とその戦争を研究している者の2視点からなる本だった。こういう本を読むのは楽しい上に勉強になる。6ヵ年戦争は今から200年ほど前に終結したという戦争だがこの本には僕の知らない事が沢山載っていた。
こういった生活がこれからは続く事になるのだが、『普段通り』ではない事も見られることがあった。
ガルムである。彼が何かしたという訳ではなく、彼は『距離を置かれていた』のだ。教室で居ても僕を含めた特待生の4人以外は彼に話しかけないし、話題に挙げない。彼が大人しく引っ込み思案な性格だからと言えばそこ迄だが、僕には「意図的に距離を置いている」ようにも見られた。
授業が始まって4日目の日、珍しくガルムが教室で話しかけられていた。彼の前には3人の男子生徒が立っている。真ん中に立っているのはサドンと言う生徒だった。
僕はそれを遠巻きにチラリと見ただけなのだが、彼らは休み時間に教室の外に出かけていったようだ。
ガルムの様子がおかしくなったのはその日からだった。




