No.25 新しい住人
ガルムとも大分打ち解け寮生活も随分と馴染んできた。
ガルムが「僕も一緒に練習したい」と言うので朝の魔法練習だけ一緒にやっている。剣術や武術の訓練の方は「僕には無理だよ」と言うのでやっていない。
以前に教会で『授かった力』についてだが、ウォーデンに「あまり人前で能力を使わない方がいい」と言われている。これは一重に目立つからだが、「なら見えないところなら大丈夫でしょう?」と言うことで最近はイレーナと部屋で2人きりになって『授かった力』の特訓も行っている。自分の力の事も大分わかってきた。
僕の『亜空間倉庫』(一々名前が長いので単純に「倉庫」と呼んでいる)は、初級魔法と同じ程度の魔力しか使用しない為ほぼ使い放題だ。収納出来るサイズは人よりふた周りほど大きいものまでが限界だった。発動できる距離も自分から半径1.5mが限界だ。しかし、なんと素晴らしいことに『幾つでも収納出来る』のだ。取り出す時も収納したものをイメージしながら魔力を使えば一瞬で取り出せる。
イレーナの一度使った事のある武器を顕現する能力は、前例がない力なので彼女が名付けて『武器庫』と呼ぶ事にした。一度使った事のある武器なら何でも良いらしく、顕現した武器は彼女が『消えろ』と念じない限り消滅しない。そして何個でも製造可能だ。そして、顕現させられるものの条件だが、『武器として作られたもの』でなければ取り出せない。よって盾などは無理だ。勿論工具のハンマーも。手榴弾は大丈夫だったが煙幕弾は駄目だった。この辺りの判断はどうやって行っているのだろうか?更に、顕現させるものは質量が多ければ多いほど魔力を消費する。突撃銃なんかは彼女の魔力を半分以上使った。
そんなに消費が激しいと、いざと言う時に使うのが困難になる可能性が高いので、イレーナが顕現させた武器を僕が「倉庫」に収納して蓄えておく事にした。そうすることで収納場所には困らないし、いざと言う時にすぐ使える。イレーナも必要な時に武器を渡せば魔力を消費せずに「顕現した武器」が扱える。という訳で、毎日寝る前にイレーナが武器(主に銃)を顕現してそれを僕が倉庫に取り込んでいる。
因みに、魔力はきちんと休養を取れば半日で回復する。しっかり食べて寝れば、だ。つまり体力と一緒である。しかし、あまりにも大量に使い過ぎたり、体内の魔力が無くなるまで使うと目眩がして気分が悪くなり、最悪の場合失神する(これを俗に『魔力枯渇』という)ので魔力の残量を身体で覚えるように毎日訓練している。
◇◆◇◆◇
4月の6日、朝日が顔を見せて2時間と経っていない早朝。丁度、3人で魔法練習をしていた時に、アンリがやって来た。誰か連れている。
「お早うございますわ。朝早くから熱心ですのね」
「ああ、アンリ。おはよう」「お早うございます」「お、おはよう、ございます...!」
アンリの挨拶に返事をする。が、ガルムだけはぎこちない感じだ。いや、そう言えば彼とアンリは初対面か。
「今日から私もここに住むことになります。それともう一人、彼女も一緒ですわ」
そう言って、アンリは後ろに立っている少女を紹介する。彼女にも見覚えがあった、確か受験の時にアンリと同じく魔力量が赤だった獣人族の少女だ。彼女が前に出て来る。かなり背が高い、僕がまだ165cmだがそれよりある。
「リーフェ・フリードマンだよ!リーフェで良いからね!」
苗字があるという事は貴族であるという事だし、身なりも相当良いものだから高位な家の令嬢なのだろうが、彼女はそれに見合わぬ口調であった。
「こんな風に、貴族らしからぬ振る舞いですがこれでも上級貴族の息女ですのよ」
「アンリが堅物なだけよ〜」
アンリが「はあ、全く...」と愛想をつかしたようなため息を吐く。それでも彼女のリーフェに対する反応は親しみのあるものだったので仲は良いのだろう。
「2人がイレーナちゃんとアルバート君だね?アンリから話は聞いたよ!イレーナちゃんの方は見てたから知ってたけどアルバート君も白だなんて凄いね!」
「はは、これも努力の成果です。口調は普段通りでも構いませんか?」
「もっちろん!そうじゃないと息苦しいでしょ?イレーナちゃんも気軽に話してくれて良いからね!」
「私はこれが素ですので、名前は努力します」
「アンリみたいだね!でもアンリより可愛いよ!」
「どう言う意味ですの!?」
「あー、怒らない怒らない...あれ?君は?」
「あ...と、ガルム、です!」
「子犬みたいね!可愛い!」
「ひぃあ、あわ。撫でないで下さい...!?」
リーフェは、あっという間に場に馴染んだ。彼女は気さくで自由な少女の様だ。
だが逆に、ガルムはその気さくさに動揺していた。面識のない人と話すのが苦手なのだから仕方がない。
「それにしても、こんなに朝早くから訓練なんて凄いね!毎日やってるの?」
「はい、日課です」
イレーナがそう答えると、彼女は何故だか嬉しそうに言った。
「強くになるにはまずは朝からって訳ね私もやるわ!着替えてくる!」
そして、エルゲイ荘の中へ入っていった。すぐに、中から声が聞こえてくる。
「ねぇ!私の部屋ってどこ!?」
「2階の右端かその隣だ!」
「ありがとー!...あホントだ!」
扉が勢いよく閉まる音がする。着替えると言っていたが、そう言えば彼女らは既に荷物を部屋に運び込んでいたんだったな。
「...はぁ、何時もあんな感じなのですわ。付き合うにもすぐに疲れてしまいます」
「そういう割に、何時も付き合ってあげてそうだけどな」
アンリは「うっ...」と呻く。図星なようだ。
「...私も、着替えて来ますわ。あの子には遅れを取りたくありませんの」
そう言って彼女もエルゲイ荘の中に入っていった。
直後、リーフェの何故か楽しそうな悲鳴とアンリの謝る声が聞こえてきた。どうやら入る部屋を間違えたみたいだ。
今度部屋の扉に名札でも付けられるようにしておこう。
ついに25話です。一時期は更新を停止しておりましたが、ソコから一気にここまで来れました。もうすぐ戦闘シーンも多くなってくる予定なので書きたいことが書けそうです!




