No.24 エルゲイ荘
アンリとの会食の後、彼女の馬車で送ってもらい僕達は学園に戻ってきた。
「私は6日から寮に入ることになりますので次に会うのはその日ですわね。ではご機嫌よう」
アンリはそう言って馬車で帰って行った。高級な料理も無料で楽しめたし、今日はいい日になりそうだ。
「...?何でしょうか、あれ」
エルゲイ荘の前に来たところで屋敷の入口に人が立っているのが見えた。2人いる。1人はウォーデンだ。もう1人は若い、人間族の少年だ黒い髪が特徴的だった。
「どうしましたか?」
近寄り、ウォーデンの方に話しかける。ウォーデンがゆっくりと振り返ったのに対して黒髪の少年の方はビクッとして振り返った。
「おお、二人共。丁度良い所に。
今から屋敷に入ろうとしておったのだが、彼が心の準備をしたいと言うのでな。ここで待っておった次第だ」
何やら聞いてはいけないような事を聞いてしまった気がしないでもないが、今度は黒髪の彼に話をふる。
「貴方は...?」
「はッ、はいッ!え、えっと。ガルム、ですッ!」
ぎこちない自己紹介をする彼だが、名前には聞き覚えがあった。
「ああ、試験の教室が一緒だった...」
「ご、ご存知なんですか...?」
名前の割に気弱そうなガルムは終始オドオドとしている。
「...物覚えはいい方ですから。
僕はアルバート・シュティーア。呼び捨てで構わないですよ」
「私はイレーナ・ルセイドです。私も呼び捨てで構いません」
「そんな、呼び捨てなんて出来ませんよ...!」
ガルムは滅相もない、と言わんばかりに首を振った。
「イレーナさんだけじゃなくて、アルバートさんも、二人とも白なんでしょう...!?僕がそんな方々に呼び捨てなんて...!」
どうやら、ガルムは遠慮しがちと言うか、自分を卑下しているらしい。しかし、僕達はそんなに大層な存在ではないのだから、敬われると言うのはどうにももどかしい。なんとか、もっと友好的に接して欲しい。
「僕達はそんな偉大な者ではないですし、もっと軽くて良いんですよ?それに多分、貴方の方が歳上だ」
「それでも...!やっぱり無理です!きっとお二人は偉大な人達になります!
だから、その敬語もやめてください!胃が痛くなってきます...!」
気弱なのに、変な所で固くなだな。
「ははは!まあ、こんな感じで気弱な少年だが仲良くしてやってくれ!慣れればその内に気軽に話せるようになるさ」
ウォーデンが相変わらずの楽観的で前向きな発言をする。彼は少しばかり大雑把だ。
「...じゃあ、僕は敬語をやめるから、せめて君付けで呼んでほしい。さん呼びは僕もむず痒くなってくるし」
「.....うん、わかった。断るのも失礼だよね...!」
少しズレた回答だが、まあ良いだろう。
「私は、普段から敬語なので気にしないで下さい。名前は呼び捨てにしますから」
「はい...いや、うん。わかったよ」
すぐには慣れないか。まあその内慣れるだろう。歳上にずっと敬語で話されても困るしな。
だが、イレーナは別だ。彼女はそれが普通なのだから気にすることではない。
「えっと...じゃあ、今日から。ここで一緒に住むことになるから、よろ...しく?」
「ああ、宜しく」「宜しくお願いします」
こうしてエルゲイ荘に新たな住人がやってきた。これで面識のない特待生はあと1人だけとなる。漸く学園生活も始まり、といった雰囲気になってきたな。
◇◆◇◆◇
昼食はアンリと会食だったから食料の買い出しに行けなかったので、さっと何時も利用している八百屋とパン屋で適当なものを買った。
パン屋に、パスタが売られていたので買った。パン屋でパスタを売るのか、と思ったが考えればパスタも小麦粉を使っているので不自然では無いのだろうか?
エルゲイ荘に帰るとイレーナとガルムが中央室で話をしていた。アンリの時と同じく彼女の話にガルムは興味津々な様子だった。
「じゃあ、たった二人で土竜を倒したの!?」
「いえ、冒険者の方々が支援して下さったので...」
取り敢えず気にせずに食料を保存室に持って行った。厨房に戻ったら、湯を沸かして紅茶を入れた。この茶葉も最近買ったものだ。
ウォーデン曰く、ここ3、4年はめぼしい人材が居なかったので特待生がおらず、エルゲイ荘は掃除だけしていたらしい。道理で生活品が少ない訳だ。
「紅茶を淹れたぞ」
「アル、有難うございます」「あ、ありが、とう」
僕はカップに紅茶を注いで2人に渡した。そしてイレーナの隣に座る。
「...それで、貴方の出身は?」
「えっと、南のシアルド、だよ」
「シアルドと言えば海岸沿いの大きな町ですね、ここからは大分遠いじゃないですか」
「う、うん。だからここに来るまで1ヶ月と半月かかったんだ。でも、途中で道が崩れているところがあって大回りしたから、もっと早く着くはずだったんだけどね」
「そうか、それで来るのが遅かったんだな」
「うん、試験に間に合ったのが奇跡みたいだったよ...」
「本当だな」
等と身の上話をした後、夕食を作って食べた。意外な事に、ガルムも料理が出来たので手伝って貰った。
そうやって3日過ごすうちにガルムとも打ち解けて、会話にぎこちなさはなくなっていった。
新しく登場人物がポンポン増えますが、学園生活が始まれば落ち着きます。
今後ともご愛読宜しくお願いします!




