表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/95

No.20 入学試験

 試験当日、これまで数人の関係者や在学生(この時期は殆どの生徒が実家に帰っているらしい)、教師を見た程度であった学園敷地内が人で賑わっていた。

 500人近くの入学希望者が毎年訪れ、そのうち合格するのは100名程度。それで20人の5クラスを作るらしい。


 最初は筆記試験で、申し込みを完了した者から番号を貰い、会場(という名の教室)に入ってゆく。僕達は朝早くから行ったのにも関わらず39番と40番だった。席が埋まれば頃合をみて開始となる。僕は最初の教室の最後だった。

 周りを見れば、様々な種族の人がいた。犬や猫のような耳が生えた獣人族がいれば、角のある魔人族も見える。しかしやはり、大半は人間族であった。それに、同族の長耳族(エルフ)は見えなかった。

 殆どの人が裕福そうな服を身に纏っている。大半が貴族か裕福な家庭なのだろう。

 周りを観察していると、一人の女性が入ってきた。20代であろう人間族の女性だ。凛とした雰囲気で他を寄せ付けない威圧感があった。この人は学園内で何度か見かけたことがある、教師だ。

「この教室は全員揃ったようですので試験を開始します。

 全員席につき、姿勢を正して。不正が見つかれば直ちに失格とさせていただきます。

 ...では、始め」


 筆記試験は数学、国語、史学、魔術に関しての問題をそれぞれ()(つま)んで出題していた。2時間ほどで制限時間となり、筆記試験は終了する。それほど難しくは無かったので点数は良い方だろう。


「では、次に保有魔力量の測定を行います。1番の者から前に来なさい」

 肝心の魔力測定が始まった。教師が30cmほどの(いびつ)な球体状の水晶らしきものを取り出す。これが保有魔力量を測定する魔石だ。希少価値が高いために高価で、学園(ここ)でもなければ置いていない代物だ。


「この魔石に手を当てて魔力を流しなさい。保有魔力によって色が変わるので、その色で階級を付けていきます。

 色は少ないものから順番に紫、青、緑、赤、黄、白の6種類、更にそれぞれの色ごとで上中下の三段階の評価があります。宜しいですね?

 では1番、ガルム。前へ」

「は、はい...!」

 番犬(ガルム)か...前世では北欧神話に登場する冥界の番犬だが、名前の割にひ弱そうな人間族の少年が出てきた。まあ、前世の話を現世(ザカート)に持ち込んでも仕方が無いのだが。やはり先入観というモノが働いてしまう。

「...緑の下です。

 次、2番アンリ・エリオット」

「はい」

 次に名前を呼ばれた人間族の少女が前に出てくる。自信に満ち溢れた様子で、身なりはザご令嬢と言った感じ。

「...赤の上です。流石ですね...

 次、3番....」

 と言ったようにどんどんと測定が進んでゆく。一人1分もかからない感じだ。


 大体の試験者の測定が終わった。殆どの者が青か緑で、赤は最初のアンリ・エリオットという少女ともう一人、獣人族のリーフェ・フリードマンという少女の2人しかいなかった。

 それもその筈、保有魔力量というのは「赤の壁」というモノがあるらしい、保有魔力は訓練すればする程増えるが、大半の者は赤の手前の緑で止まってしまうのだ。それを越えるには相当の鍛錬か才能、あるいはその両方が必要になってくる。

 緑と赤の間にはそういう、才能の差がある。

 例えば、前世での日本の警察には9段階の階級があるが、警察全体のうち95%は真ん中の階級よりも下なのだ。魔力の差もこれと似たようなモノで、赤以上など滅多にいない。だから、赤が出た時は皆感心し、尊敬の念を送っていた。


「...次、イレーナ・ルセイド」

「はい」

 イレーナが呼ばれた。いよいよ彼女の番だ。前の教卓に行って、魔石に手を当てる。光が集まって(当然、僕とイレーナにしか見えていない筈だ)魔石の色が変わり出した。


 結果は...白。濁りの無い綺麗な真っ白だ。

「なんと...これは...」

 教室中がざわめき出す。当然だ、白なんて昔話や絵本で位しか聞いたことが無いような階級だ。周囲からも「嘘だろ...」や「信じられませんわ...」などと言った声が聞こえる。

 実際、僕も驚愕している。しかし、当の本人は「当然」と言わんばかりのすまし顔だった。

「も...もう一度、測定しても宜しいですか.....?」と教師の女性が絞り出すように言った。イレーナは鷹揚(おうよう)に頷いて、もう一度魔石に触れる。

 結果はもちろん白だった。眩いまでに綺麗な白。教師が愕然としている。

「まさか、これ程までに素晴らしい逸材がその名も知られていないなんて...」

「誰でも、最初は無名です」

 イレーナはそう言って席に戻る。恋人の贔屓目(ひいきめ)なしに見ても格好良い。

 最早、この教室に居る者の全てが彼女を畏敬しているのが分かる。


「...つ、次...40番...アルバート・シュティーア......」

 教師は何とか気を取り直して言った。周囲の意識がイレーナに向いた中での測定だ。誰も、僕のことなど気にしていなかった。

アルバートの測定は次回になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ