No.14 金竜
2017.2/17(金) 一部文章を追加。
「...嘘、だろ...?」
明細を受け取ったラルズが呻きに似た声をあげる。
「お、おい。幾らだったんだよ」
横にいたマルクがそう言って覗き込んだ。彼もまた、それを見た瞬間に動きが止まる。そして何とか、声を絞り出した。
「...に、金貨12と、金銭5枚、だ...と....?」
金貨12と金銭5。円換算すれば125万円相当になる。
つまりは、大金。しかもこの世界は銀1枚、つまり千円あれば3食シャワー付きの宿に1泊できるような物価の安い世界。感覚的に言えば急に1,250万円手に入れたようなものだ。
「金貨12だと...!?銀貨の間違いじゃあ無ェよな!?」
彼の言葉を聞いたギルが、疑うように明細書を奪い取り確認する。
「...本当だ......」
唖然騒然とする3人に対し、僕とイレーナは割りの良い報酬だなと思った程度で大して驚きしなかった。
「では1人あたり大体、金貨2と金銭1枚ですね」
イレーナがそう言った瞬間、3人がギョッとした目で彼女を見る。
「な、ならねえ...!それは出来ねぇよ、嬢ちゃん。俺たちゃ護衛するどころか命を救ってもらってんだ。むしろ俺達が金払わなきゃいけねえぐらいなんだ...!そ、それを。6等分だなんて!」
「そ、そうだぜ嬢ちゃん。これはお2人で持っていてくれや!」
「そうです、お嬢様。ね、坊ちゃんもそう思いますよね...!」
3人がそれぞれ口早に言いくるめようとするが、イレーナは納得していないようだ。
マルスが僕に話を振ってきたので返事をした。
「確かに、普通は僕ら2人のものでしょうね」
「アル...」
イレーナが不満げになるが、普通なら、そうだ。しかし...
「でも、僕達がこんな大金手に入れてもどうしましょう。ケーキやクッキーで家でも建てますか。ああ、どこかにこのお金を上手く使ってくれる人達は居ないのでしょうか」
大袈裟に、芝居がけて言ってやった。
これには3人も渋い顔をせざるを得ない。
「...分かりました。ここは坊ちゃんらの温情に甘んじておきます...」
ラルズがやっと折れた。
「けど、坊ちゃん方。この恩はいつか返しやす。この旅が終わってからも色々こき使って下さいや」
ラルズの言葉に、他2人もうんうん頷いていた。全くもってこの3人は義理堅い奴らだな。
結果、受け取ったお金をおやっさんを含めた6人で金貨2枚ずつ分けて残りを僕とイレーナの2人で分ける事にした。
これで僕とイレーナは、11歳にして200万円相当の大金を手に入れた事になる。
「これじゃまるで、土竜じゃなくて金竜ですね」
このジョークは苦笑を買ったのでもう二度と使わないだろう。
その後町の宿で1泊し、早朝に食糧を買い込んで再び王都に向けて出発した。この度もあと半分、折り返し地点だ。気を引き締めていこう。
因みにこの後、ハイドが作成した報告書が領主に提出され、領主は土竜討伐の為に要請していた『王都第一騎士団(マーリア王国最強と謳われる、王直属の騎士団だ)による土竜討伐隊の編成』を取り消してもらう為、事の収束を知らせる手紙とハイドの報告書が送られる。
その報告書には北マーリアの大森林にて出現した土竜が討伐された事を確認したという旨の文章や目撃者(つまりギルの事)による状況証言。そして、これが肝心なのだが『討伐した2人組の少年と少女の名前、そして親の名前』が記載されていた。
これらは僕達を追う形で王都、つまり王の元へと送られる事になるが、それを知るのはだいぶ後の話だ。
24日目、2つ目の町に到着した。
「そうだ、坊ちゃん方。ギールドの時は土竜に気を取られて忘れてやしたが、坊ちゃん方も冒険者連盟に加盟しておけば良いと思うんですが。どうでしょう」
とラルズが言ったので、冒険者連盟について説明してもらった。要約して簡単に紹介しよう。
冒険者連盟とは集会所を運営する団体の事で、運営する職員と労働者の2種類に別れる。
まず、運営は領主や住民からの依頼を集会所の冒険者に紹介したり重大な依頼であれば有力な冒険者に斡旋したりする。
他にも、冒険者が持ってきた魔石、鉱石、植物、魔物、魔獣を買い取ったりしている。
ラルズが加盟しないかと勧誘した要因は主に後者の方で、「安定して売れる上、どの町にもある」かららしい。
また、加盟の際に貰う会員証が身分証代わりになるらしく他国への入国の際にも便利らしい。
加盟しない手は無かった。
登録を終えると(多少手数料がかかった)1枚の鉄板を渡される。見れば集会所の刻印と僕の名前が彫ってある。認識票だ。
これでもう冒険者というのは何とも呆気ないものだが、まあ時間もさほど取らなかったし良しとしよう。
この町でする事も大してなかったので食糧だけ買ってすぐに出た。あと5日もあれば王都だ。この旅の終わりも近い。
そこからの移動は楽なものだった。道路は良く馬車が通るようで踏み固められていたし、何より道が平坦だった。
途中途中にある村々を無視して走り続けて4日。
遂に、
「王都が見えてきたぞ!」
遂に到着した。




