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No.00 その二人、危険につき

以前投稿していた作品のリメイク書き直しなります。

拙い文章ですが宜しくお願いします。

 和継元年、新たな時代がその歩みを歴史に刻み始めたその年に私、『神代(かみしろ)一紀(いっき)』は生まれた。極々一般的な家庭に生まれ、なんの変哲もない生活を送ってきた私の転機は6歳の頃に開催された東京オリンピックであった。

 日本中が歓喜と興奮の熱に包まれるハズだったそれは一瞬にして恐怖と憎悪の渦に呑まれる。

 或るテロリスト達の魔の手によって。


 気付けば私は一人で、孤児として施設に保護されていた。

 其所で、私はある男に出逢うことになる。彼は私に親の(かたき)をとりたいかと訊き、「はい」と答えると私を引き取って育てると言った。


 それが、私と()()の馴れ初めだ。

 私は師匠に鍛え上げられ、言葉を学び、技術を学び、思想を学んだ。時には世界を渡り各地の専門家から修行や授業を受けたりした。私は特に言語関係に強いらしく優に10カ国語は話せ、読み書きも出来た。才能と言うヤツらしい。


 そうやっていくうちに私は成人し、ある部隊に配属されることになる。

 某国陸上自衛隊特殊作戦群第零小隊__通称『零部隊(ゼロ)

 某国の持つ切り札であり、非公式の、40人にも満たない小隊。だが彼らは所謂特殊部隊と言われるものの中でも最強の部類に在り、その影響力は軍団規模と同等以上だ。

 私は其の部隊での任務にてある女性と出逢う。

 其の名をБережная(ベレージュナヤ)·Екатерина(エカチェリーナ)·Иосифовна(ヨシフォヴナ)

 東欧の大国ロシア出身の端麗な女性であった。

 私と彼女は相棒(バディ)として組み、行動の殆どを共にした。彼女は私の二年後に入隊した後輩で、三つ年下であったがこれから長い間の付き合いになるだろうからと私の事は「イッキ」と呼ばせ、私も平時では彼女を「カチューシャ」と呼んでいた。


 そんな私とカチューシャの二人が相棒(バディ)になってから数年経った頃、私達に特務が下される。

 内容は、或る過激派宗教組織の拠点を特殊偵察すること。


※特殊偵察とは一般部隊が行かないもしくは行けない(危険であったり国際法に違反したりする)場所を偵察する事である。


 特殊偵察自体は以前に幾度か行ったことがあったが、今回は特段奥地へと潜り込まなければならなかった。私たちは数日に渡って組織の拠点(一つの町のような広さであった)に潜伏し目標(ターゲット)の監視を行った。だが13日目の昼、潜伏している部屋の周囲に設置していた隠しカメラに大勢の武装兵が写る。どうやら私達の部屋を包囲しようとしているらしい。私とカチューシャは急いで武器を手に取り応戦準備を調(ととの)える。

 私が伏せて構えている場所からちらと隠しカメラのモニターを見るともう扉の前まで敵が来ている。先手必勝とばかりに私は木の扉ごと敵を撃ち抜く。それが、私とカチューシャ二人による孤独な戦いの開戦の狼煙であり、地獄の始まりだった。


 もう何人撃ち殺したかは覚えていない。

 もうどれ程の時が経ったのかは判らない。

 (ただ)、確かなのは私とカチューシャが健在であることと、敵の数が減るどころか増えていることだった。

「カチューシャ!聞こえるか!?」

 私は恐らく隣に居るであろう彼女に話しかける。

「はい、何でしょう!」

 いつも通りのカチューシャの声が帰ってくる。相棒(バディ)なのだから敬語でなくとも良いと言っているのに相も変わらず、こんな時でも丁寧に敬語だ。

「集めた情報は司令部(うえ)に送った!救援なんて元から来ない!奴等に殺されるのも拷問されるのも私は真っ平御免だ!」

 小銃を撃ちながらでも聴こえる程の声で私は言う。

「ワタシもそんなのはお断りです!!」

 彼女も負けじと、発砲しながら叫ぶ。

「ここには此の建物ごと粉微塵に出来る爆薬が仕掛けられてる!お前ならどうする!?」

 それは、覚悟の確認だった。私と共に死ぬ覚悟はあるか、と問うているようなものだ。

「爆破します!!」

 彼女は一切の躊躇なく返事をする。ちらと彼女の方を見やると眼が合った。彼女は、カチューシャは覚悟を決めた者の眼をしていた。

 私は頷き、彼女に言う。

「なら此方(こっち)に来い!私の側だ!」

 私は銃を捨て、爆弾の起爆装置を取りだす。丁度カチューシャが私の隣に来た。

「今から爆破する!最後に言いたいことは!?」

 私の問いかけに彼女は威勢良く答えた。

「また会いましょう!」

 少々予想外の答えだったが、何故か笑みが(こぼ)れた。彼女も同じように笑っている。死ぬ間際だと言うのに可笑しな事だが、不思議と悲しみや憎しみ、絶望感はない。彼女もそうなのだろう。だから私は最後にこう言った。

「ああ!また別の場所で、絶対にだ!!」

 私は彼女を引き寄せ、抱き締めながら装置のスイッチを入れる。

 そうして気付いた。

 私は彼女の事が好きだったのだと。

 もっと一緒に居たかったのだと。


 瞬間、轟音と爆風を伴った爆発が巻き起こる。

 私の命の途絶える瞬間だった。

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