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シャレオツ英雄伝 -レジェンド・オブ・ジ・レイク-

――核戦争により荒廃した世界。


時代を牛耳るのは超大型複合商業施設「タウン・オブ・ジ・レイク feat. 埼玉」ただひとつ。


人々は雑草を食べるかレイクタウンで寿司を食べるかの二択を迫られていた。




「俺達はいつまでこんな生活を……」

俺はタッチパネルで炙りサーモンを注文しながら、悔しさで涙を流した。

今日もブルゾンとアウターの一式を購入し、三万円以上の散財をしてしまったのだ。

「誰もレイクタウンには逆らえない。しかも巻き上げた金で施設は拡充される一方だ」

対面の席に座る男も、大量の紙袋を抱えていた。

俺達はレイクタウンに対してあまりにも無力だ。


「見ろ、キング・レイクだ」

レイクタウンの支配者、キング・レイクは俺達をじろじろと眺めて満足そうにしている。

まるで顧客かちくを見るかのような目つきだった。俺は思わず舌打ちをする。

「くそがっ……」

キング・レイクの後ろには三人の部下ヤマ、カゼ、アウトレットが控えている。

それぞれが一個師団と同等の戦力と言われ、彼らに歯向かった人間は翌日陳列棚に並べられることになる。

「おいやめろ、目を付けられたらお前もヴィレッジヴァンガード入りだぞ」

そのときだった。


「なんだあいつは」

誰かの声に釣られて振り向くと、そこには異様な風貌の男が立っていた。

G□の黒ジャケット、しま□らの黒シャツ、ユニク□の黒ジーンズ、そして両腕にはどこで買ったか分からないシルバーを巻いている。

黒い男の見据える先はキング・レイク。

噂には聞いたことがある。各地のファッションセンターから人々を救って回る英雄がいると。

「早く行け、ここは戦場になる」

男が告げる。

周りで寿司を食っていた連中も、何かを予見してあわてて逃げ出していた。

「おい、行くぞ」

声を掛けられ、はっと我に返った。

全身漆黒の中を煌めくシルバーに目を奪われていた。

気付けば俺は、その圧倒的ファッション・センスに魅了されていたのだ。


黒い男がキング・レイクに近づくと、すかさず三人の部下が前に立ちはだかる。

「腕にシルバー…………まさか貴様、ファッションモンスターか!!」

キング・レイクは驚いた口調で言うが、焦った様子は微塵も見せない。

まさかヤマ・カゼ・アウトレットがひとりの男に負けるとは思っていないのだろう。

男は三人の部下を一瞥すると誰に言うでも無く呟いた。

「ファッション・ショーの始まりだぜ」


瞬間、男は加速した。「高速入店フラッシュ・イン!」レイクタウン全体のBGMがゴキゲンなダンスミュージックに切り替わる。どこからともなく観客が現れ戦場一帯を盛り上げていく。男は逃げ場を失ったヤマに飛びかかり、シルバーを巻き付けた拳でしゃにむに殴りつける。

「ファッションモォォンスタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ファッションモォォンスタアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ヤマは死んだ。


「ばかな、ヤマが即死だと!!」

「シルバーのファッションパワーはこんなもんじゃないぜ」

男は隙を見てフードコートに逃げ出したカゼを追いかける。

「食らえッッ!!」

カゼがオールドファッションを投げつけるが、それよりも先に男の放ったシルバーがドーナツの穴を抜けカゼに突き刺さった。男は捕捉したカゼに素早く近づくと、シルバーを巻き付けた拳でしゃにむに殴りつける。

「ファッションモォォンスタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ファッションモォォンスタアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

カゼは死んだ。


「次はエンゼルクリームにするんだな」

「ばかな、カゼが即死だと!!」

瞬間、死角から棒付きアイスが飛んでくる。すんでのところでシルバーが男の前に飛び出しアイスをブロックした。シルバーは死んだ。

「AIBOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

男は長年愛用してきたアクセサリの死に慟哭し、勢いに任せて駆けだした。そのままアウトレットに飛びかかると、かつてシルバーを巻き付けていた、ただの拳でしゃにむに殴りつける。

「ファッションモォォンスタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! ファッションモォォンスタアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛A゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛H゛!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

アウトレットは死んだ。


「ばかな、アウトレットが…………うん、まぁあいつは」

「何か言い残す事はないか?」

「「BLOCK natural icecream」は安心安全なこだわり素材のナチュラルアイスクリーム。ヘルシーな寒天やフレッシュフルーツ、甘さ控えめで低カロリーの希少糖などこだわり素材を厳選しました」

それがキング・レイクの最期の言葉となった。彼はどこまでも商売に熱心な男だった。人々に圧政を強いた彼だが、その裏にはレイクタウンに店を構える者たちの生活を守ると言う彼なりの信念があったのだ。正義の反対はまた別の正義である。そう考えれば彼もまた、この荒廃した世界における犠牲者の一人だったのかもしれない。

「追悼のオシャレ執行、黙祷……!!」

男はキング・レイクの首に死んだシルバーを巻き付け、即座に意識を刈り取った。

「……この世に悪がはびこる限り、私のオシャレは止まらない」



俺は目の前で繰り広げられたファッション・ショーにただただ打ちのめされていた。

これがファッションの力。

かつてただ寿司を食べるだけだった俺も、変われるかもしれない。

何も言わず立ち去ろうとする男に、俺は勇気を振り絞って声をかけた。

「待った、俺にも……、俺にもオシャレを教えてくれ……!!!」

男は俺を一瞥して言った。

「まずはそうだな、もっと腕にシルバーを巻くとかよ」

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