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ちくわ大明神

作者: 空牙セロリ

 私は神である。

 神と言っても全知全能だとかアマテラスさまのような有名で力のある神ではない。ごくごくそこら辺に存在するマイナーな神だ。


 私が生まれたのは今からだいたい千年前であったか。いや、もう少し前だったような。まあ、我々にとって時なんて意味がないからものすごく昔に生まれたと思ってくれればいい。


 私はとある港町に生まれた水神だった。

 その時は結構信仰されてたし、周辺にゃ名の知れた神社だった。お供えしてくれる酒も魚も美味しかったよ。のんびりしてて楽しかった日々を過ごしていた気がする。今も楽しいけど。


 その後二回も焼けたんだぜ。私、水神なのに。水の神さまなのに。


 色々あったが今は某会社の屋敷神さ。ひっそりのんびりしててここも中々に心地が良い。新鮮な魚じゃあないがお供えしてくれるしやっぱり酒が美味い。焼酎も好きだが「びぃる」なるものも好きだぞ。


 今では知ってる人は知っている程度のどマイナーな神だったんだ、つい最近までは。


 我々神の力っていうのはイコールで信仰数とか知名度だ。信仰されていればいるほど、知っている人間がいればいるほど神に力がつく。だぁれも知っている人間がいなくなれば消えちまうヤツもいるし、昔の人間が書いた文章引っ張り出されてひょっこり戻ってくるやつだっているぞ。


 神っつうのは人間がいなければ存在できないんだ。

 私なんかお供えしてくれるだけでありがてぇってもんさ。


 そんな細々とのんびりと暮らしていた私だがある日突然力が跳ね上がった。

 何を言っているのかわからねぇと思うが私も何を言っているのかわからない。だけども突然思ってもいないほど力が湧き出てきたんだ。今でもちょっとずつ力が上がっていくのがわかるんだが正直理由はよぅわからん。今も昔も神力なんて使えるほど力なんざなかったし何かした記憶もない。聞くところによると最近発達した「いんたぁねっと」なるもののせいだそうな。

 相変わらず人間がやることはすげえな。


 そんなわけで神カースト下の方にいた私は大出世したっていうわけだ。……なんか知名度が上がっただけで信仰はそんなにない気がするが、まあいいか。


 神連中にゃ最近入ってきたモノリス大明神ってやつと何かとセットにされることが多い。話が合うし私もよくつるんでるけど。


 モノリスの出生は中々に面白い。なにせ二日で祭り上げられたんだからな。付喪神ですらなかった。本神も来た当初は困惑してたしな。解せぬ解せぬってずっと言ってた。それほどあっという間に神になったそうだ。

 そんな感じで私とモノリス大明神は仲がいい。



 さて、今日もどこかで私の名前が呟かれているようだ。名前を呼ぶだけで願いも何も無くただつぶやかれるだけだ。そいでまた私の名前が広まっていく。何とも不思議な気分だなあ。


 そういえば名乗っていなかったな。

 私はとある練り物会社の屋敷神、通称「ちくわ大明神」だ。以後よろしく。



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― 新着の感想 ―
[一言] ちくわ大明神様!まさかこんな処で降誕なされるとは思ってもいませんでした! 実は自分もちくわ大明神様の小説を書かせて貰ってるのですが、自分が思う『ちくわ大明神様』が改めて偽物に過ぎないと言うこ…
[良い点] 非常に読みやすい文章。 それでいて、神々の心情を自然に表現している。 ちくわ大明神。 SF作品である2001年宇宙の旅で出てきたモノリスはインパクトありましたねー。 神様との緩い関係が伝わ…
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