誕生日
その日の王城は総長からいつもより賑やかだった。
「アイリス様、おはようございます。」
部屋をノックして入ってきたのはルークだ。
「おはよう。」
「もう起きていましたか。」
「さすがに、今日はね。」
いつもはルークにたたき起こされるアイリスだったが今日は違っていた。苦笑いしたアイリスはベットから降りる。
「アイリス様、18歳の誕生日おめでとうございます。」
ルークはアイリスの前で膝を折り、その手に唇を落とした。
「ありがとう。」
にこりと微笑んだあとパンッと手を打った。
「さ、堅苦しい挨拶はここまで!準備をしましょ。」
「はい。」
今日はアイルート王国の姫、アイリス・ティアリス・アイルートの18歳の誕生日である。国中をあげて盛大に行われる誕生パーティーには各国の重鎮たちが参加するだけでなく国民にもその参加資格が与えられている。何故一人の姫の誕生日にここまでのパーティーが催されるのか。その理由は主に二つある。この国は18歳で成人とみなされる。その成人の儀と誕生日のお祝い。その二つを兼ねたパーティーとなると必然的に盛大になるのだ。これが一つ目の理由である。そして二つ目の理由、それは現国王グラディオラが娘のアイリスにとことん弱いということだ。それがよくわかる例を一つ上げよう。彼女がまだ5歳だった時の話だ。アイリスがたまたま読んだ絵本にユニコーンが登場していた。そのユニコーンがかわいく幼心に見てみたいと思ったアイリスは父にユニコーンが見たい!と言ったそうだ。それを真に受けたグラディオラは次の日、大事な会議のことも忘れ単身ユニコーンを探しに旅に出てしまった。そして一週間後、見事ユニコーンがいるとされる最果ての国フェイリスからユニコーンを連れて帰ったのだ。