アイルート王国 その1
アイルート王国。
ロナベルト大陸の中心に位置するその国は大陸随一の広さを誇っている。
周辺国を纏めあげ、大陸に平和と秩序をもたらしたのは数千年前。当時大陸中で戦争が勃発して崩壊寸前だった国々を纏めあげたのがアイルート王国初代国王アイベルトだ。以来この国の王が代々大陸の王の役割も果たしている。
その王国の首都、アイルーンの中心に位置する王宮、アイルート城にその少女は住んでいた。
美しい白銀の髪に薄紫色の大きな瞳。顔や体の造りどこをとっても完璧なその少女はこの国の14代国王アルベイルの一人娘アイリス姫だ。アイリスの花言葉よろしく可憐な少女はその見かけに反して少々お転婆なだった。
「アイリス様!木に登るなと何度言えば分かるのです!降りてください!!!」
「絶対やだ!ルートったらすごいたすけて顔で怒るんだもん!!」
「当たり前です!大体あと数日で成人を迎える女性が木の上になんて登るなんてありえません!!」
木に向かって怒鳴っているのはアイリスの護衛兼世話役のルートだ。彼女より5歳年上の彼はアイリスが生まれたときから彼女に仕えている。アイリスの乳母マーガレットの息子だった彼は彼女と一緒に育ったとも言えるだろう。
そんな彼はアイリスにいつも振り回されている。