少年の夢
僕の夢はいつも途切れない。流れ続けるのだ。
そしてそれは僕の夢じゃない。他の誰かの夢なのだ。
夢を初めて見たのは、きっと五歳のころ。物心つく前のことはわからないから何とも言えないけれど、五歳のころ、僕は初めて夢を見た。
最初の夢は騎士の夢だった。
トーナメントに参加するために、装備を手に入れようと道具屋に行こうとしている夢だったのだ。何故その夢だったのかはわからない。
ただわかるのは、その騎士がとてもおっちょこちょいだったということだ。彼は道具を揃えたあと、その揃えた道具で自らを死へ導いた。何もないところで転げて、持っていた槍が彼の心臓を貫いてしまったのだ。
その様子だけはとてもリアルだった。
夢は死の感覚が僕の体を貫いたところで終わった。
その夢を見た次の日、僕は死の感覚を身に着けてしまったように感じた。
兄は心配してくれていたけれど、これはきっと誰にも伝わらない。
この感覚の影響を受けて、僕は感情を失った。
次の夢は錬金術師の夢だった。
彼は修道院で毎日の日課をこなしながら、神の意志を証明するために錬金術を学んでいた。そして彼は、その生涯の中で偉大な発明をしたのだ。
しかし彼の発明は、彼ではない人の手によって世界に発信された。
……彼は、死んでしまったのだ。
彼は、報われなかった。
そして僕はこの夢を見た次の日に、将来に思いを馳せることを、やめたのだ。
いつも、同じだ。
夢の中の主人公が死んで初めて、僕の夢は終わりを告げる。今見ている夢だって、きっとそう。
主人公が亡くなって初めて、僕は夢から解放され、次の物語に向かうのだから。 この夢は、いつもとはちょっと違うけれど。
一番長くて、一番終わりのこない夢。
孤独な少女の物語。彼女の人生は何故こんなにも波乱に満ちているのだろう。
それでも、夢はいつか覚めるものだから。
だから、今日も僕は彼女の夢の行く末を見守るのだ。だって僕には……。僕には、それしか出来ないから。