鳥籠と空
「まずは何が聞きたい?」
レグルスは金色の瞳をきらきらと輝かせて尋ねてきた。私としては何にでも興味があるのだから、どんな話題でもよかったのだが、一番気になっていることから尋ねてみることにした。
「この鳥籠の周辺について知りたいな」
「うーん、この鳥籠は崖の上に立っているみたいなんだ。なんかこの建物の部分だけが盛り上がっている感じ。それに中に入ってみると鳥籠だけど、外見は普通のログハウスだったんだよね」
「え⁉ ここって普通の建物だったんだの⁉」
新しい情報だ。私はここから出られない理由かもしれない事項だ。
おそらく私がここから出てしまったら魔法が解けてしまうのだろう。私に危険が及んでしまうから、父はここに閉じ込めたのだ。きっと、そう。
だって私は、闇に生きる徒なのに闇を恐れているから。
闇を恐れる闇に生きる徒は、狙われやすいらしい。
私を守るために父は、ここに閉じ込めたのだろう。
そうなら、いいのに。
……所詮は幻想かもしれないけれど。
「中に入ってみてびっくりしたんだ」
「私も今聞いてみて初めて知りました。なるほど。じゃあねえ、次の質問! 空はどんな顔を見せるの?」
「顔?」
「雨が降ったりすると表情が変わるんでしょ⁉」
私の拙い言葉にもレグルスは笑って答えてくれた。
「ああ、確かに。雨の日は色が灰色になるんだよ」
「灰色って⁉ どんな色なの⁉」
「うーん。あ、この天井の白と黒が重なった部分みたいな色だよ」
「そうなんだー」
私は飽きるまで彼を質問攻めにした。彼は快くそれに答えてくれて、他にもそれらに関連する話をしてくれたのだ。
その間も、夜が更けていく。
「眠くなってきちゃった」
レグルスは大きな欠伸をこぼした。
「ここは暗いからね。きっと体が夜だって錯覚したのね」
「まあ実際、外は夜だしね」
くすくすと笑う私を見て彼は苦笑した。
「外についてはまた後で教えて頂戴! ……今はゆっくり眠るべきだもの。子守唄、歌ってあげる」
私は遠い昔に父が歌ってくれた子守唄を、脳の片隅から引っ張り出して口を開いた。
「扉を開けて外を見に行こう
静かな草原を駆け抜ける風は君を待っているから
恐れないで 夢は生きている
君が思うと通りに形を変えて
静かに寄り添うから
怖がらないで 夢の中でなら
君の願いすら叶うのだから
永遠の闇に輝ける光よ
影を連れて迎えておくれ」
この歌の意味を私は知らない。
それでもこの夢を終わらせたくないから、言葉を止めないように紡いで、紡いで……。
もう一人は嫌だから、繋がっていたいから、私は彼を繋ぎ止めた。
そして私は、彼と寄り添って眠りについた。
一人にしないでと泣きながら。