表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神速の癒し手  作者: 一狼
第2章 再会
6/8

第6話

 気が付くと広い部屋にあたし1人で居た。

 部屋と言っても少し小さめの体育館位の広さがある部屋だけど。

 部屋には出入り口と思われる扉が1つのみ。


「・・・転移トラップね。即死系トラップじゃなかったのを喜ぶべきかしら。

 そう言えばAI-On(アイオン)に即死系トラップってあるのかな? そんな情報聞いたことないよね・・・?」


 そう呟きながらマップを確認するとPTメンバーは表示されず、この部屋も別空間にあるのか城のマップは表示されなかった。

 とりあえず目の前にある扉の取っ手に手を掛けるけど、びくともしない。


「はぁ~い、いらっしゃい。ここは色欲の間。7騎士の1人、色欲の騎士ラエロストが相手して・あ・げ・る♪」


 思わず振り返ると、部屋の奥には1人の女性騎士が立っていた。

 騎士と言うより、ドラ○エの女戦士のようなビキニアーマーを着た騎士だったけど。


「・・・寒くない?」


 思わず場違いな発言をしてしまう。


「あぁん、寒さなんかよりこの体の内側から溢れ出る欲情が体を空溜めてくれてるわ」


 ・・・なにこの頭おかしい人。何かものすごく相手したくないんですけど!

 エリザと言いこの騎士と言い、最近は頭がおかしいの流行ってるのかな?


「残念だけど、その扉はあたしを倒さなきゃ開かないわよ。

 もっとも倒すと言っても、物理的じゃなくてもアッチの方で倒しても扉は開くわよ」


 アッチの方ってドッチの方よ!

 思わず心の中で突っ込んでしまう。


「あなたを物理的に倒せば開くのよね?」


「アッチの方で倒しても開くわよ」


「・・・物理的に倒せば開くのよね?」


「あらん、頭の固い人ね。そんなんじゃ気持ちよくなれないわよ」


 ・・・駄目。まともに会話しようとすればこっちまで頭がおかしくなりそう。

 巫女職であるあたしがどこまでやれるかは分からないけど、ここは例え無茶でも強引に彼女を倒さなければならない。


「エネルギージャベリン!」


 あたしは問答無用に無属性魔法の力の槍を放つ。

 ラエロストは持っていた盾で簡単に弾く。


「んもう、せっかちさんね。お姉さん哀しくなっちゃう。

 そんな貴女に素直になる魔法を掛けてあげる。

 ――ピュア・マインド」


 ラエロストが指をこちらに向けて呪文を唱えるが、何も攻撃魔法が飛んでくる様子が無い。

 少しばかり警戒していると、突然頭の中に声が響き渡る。


『ねぇ、彼女の言う通りもっと気持ちいいことしましょ』


 その声はあたしの声だった。


『気持ちいい事、いっぱい・・・ね?』


「ちょっと! これどういう事!?」


「うふふ、エッチなことに素直になれるようなおまじないを掛けてあげたの。

 今聞こえてる声は貴方の本当の気持ち。

 ね、だからあたしと気持ちいいことしよう♪」


 ラエロストの言葉にあたしはぞっとする。それと同時に体が悦んでしまう。

 理性を取り外して色欲に身を任せて己の欲望を撒き散らす。

 自分が自分でなくなるのを想像して興奮している自分がいる。


 ――やばい、自分が制御できなくなっている。

 ケインズたちに強姦(レイプ)されかかった時に見せた気丈さを思い出そうにも頭の中が空回りしてしまっている。

 むしろ強姦(レイプ)されたことを想像してさらに興奮してしまう。


『自分の淫らな姿を想像して感じているのでしょ?

 いいのよ、その感覚に身を任せても』


「うるさい、黙って!」


 思わず自分の頭の声に怒鳴り返す。

 無理にでも自分を奮い立たせなければ、快楽に身を任せてしまいそうになる。


「うふふ、最初はおっぱいからね。いっぱい感じさせてあげるね」


 気が付けばラエロストがあたしの傍に来ていて抱き着き、胸を触り始める。

 ちょ! 今はやばいって!


『女の子同士でも恥ずかしがることは無いよ。むしろ女の子同士の方が女の体を知ってるからものすごく気持ちよくなれるよ。

 ああ、そう言えば大神君も今は女の子だから、あたしが大神君に女の子の気持ちいい事教えてあげるのもいいかもね』


 大神君の名前を出されてあたしの理性が揺れる。


『大神君は女の子なんだから、周りの目を気にしないで好きなだけイチャイチャできるわよ。我慢する必要なんてどこにもないわ。

 ねぇ、だからあたしの欲望(気持ち)、大神君にも見せてあげよう、ね?』


 ああ、そっか。大神君は今は女の子なんだから遠慮する必要は無いんだよね。

 お互いが気持ちよくなれるんだから、いいことだらけなんだよね。


「そうよね、自分の欲望(気持ち)をぶつければいいのに何を遠慮してるんだろう」


「そうよ~、気持ち良ければ何でもいいのよ」


 そう言いながらラエロストはあたしの胸を揉み続けている。

 絶え間ない快楽があたしを襲う。


「ええ、悪いけど遠慮なく欲望(気持ち)をぶちまけてあげる」




 そこからはあたしの記憶は曖昧だ。

 ラエロスト相手に1戦どころか10戦、下手をすれば20戦以上してたのかもしれない。

 ふと我に返ってものすごく恥ずかしくなり顔が真っ赤になる。


「ぁぁん、うそぉ~、このあたしがここまでイッちゃうなんて~。もう・・・だめ・・・・・・」


 ラエロストは気も絶え絶えになり、その場に崩れ落ちてしまった。

 冷静になれたのは彼女が倒れたからだろう。

 あたしは慌てて身を繕いその場から去る。


 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい!

 あたしにあんな一面があったなんて!

 こんなこと誰にも言えない。というか今の大神君をあんな目で見ていたなんて。

 この後どんな顔をして会えばいいのか分からないよ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 暫く誰もいない廊下を永遠と走っていると景色が歪んだ。

 気が付くとさっき転移した扉の前に居た。

 どうやらみんなが7騎士を倒すことで元の位置に戻るようになってたみたいだ。


「よかったー。みんな無事に戻ってこれたんだね。フェルも無事でよかった。」


「ベルも無事でよかったよ。7騎士は手ごわかったでしょ?」


「う、うん。まぁね」


 大神君があたしに話しかけてくる。

 まともに大神君の顔が見れなかった。

 大神君はあたしの態度に少し不思議がっていたが、すぐに目の前の扉に集中した。


「ったく、やたらむやみに触るんじゃない。盗賊(シーフ)職の罠調査が終わるまでじっとしてろ。

 今回は何とかなったものの、次はどうなるか分からないんだぞ」


「え~、だって~」


 紺碧さんの方を見ると、エリザが怒られていた。

 紺碧さんは文句を言いながらも、一応二十二罠が無いかを調べる。

 あたし達はその間、突入の準備にHPの回復やBuffを掛けたりする。


「よし、みんな準備できたな。中に入るぞ」


 紺碧さんが取っ手に手を掛け、手前に引き扉を開ける。

 謁見の間には赤い絨毯が敷かれており、その絨毯の先には玉座があり、渋めの中年男性――セントラル王が座っていた。

 そしてセントラル王を挟む形で左右に2名ずつ騎士が佇んでいる。


「ほう、7騎士のトラップが発動したからどこぞの侵入者かと思えば、我が愚息とはな。

 今は作戦中だ。いくら王子とは言え勝手な行動は許さんぞ」


「・・・父上、申し訳ないのですが今すぐ王位を退いてもらえないでしょうか。

 たった今から僕がセントラル王国の王となりこの国を治めさせてもらいます。

 もし王位を退いてもらえないのであれば力ずくで退いてもらいます」


「がっはっはっはっ。言うようになったではないか、我が愚息よ。

 残念だがそれは出来ん。我には世界征服と言う野望があるのでな。我が野望を叶えるまで王位を退くわけにはいかないのでな。

 このプレミアム王国の王の証もその野望の第一歩よ」


 そう言って、セントラル王は王の証であるペンダントを掲げる。


「・・・父上、僕も男です。世界征服と言うのは魅力的ですが、父上は世界征服をしたらそれで満足しますか? 父上が本当に欲しているのは世界なんかじゃない、己の力を試せる戦場を欲しているにすぎません。

 父上の野望は己の身を滅ぼすだけではなく、この国すらも滅ぼしかねません。

 なので、僕はそれを止めて見せます!」


「ふん、小童が生意気言いおって。ならばその身を以て我を止めてみせよ!

 近衛四元騎士よ! 侵入者どもを始末しろ!」


 セントラル王の合図の下、脇に控えていた4人の騎士が襲い掛かってくる。


「って7騎士の次は四元騎士か。まさか三羽騎士とか五星騎士とかいたりするんじゃないでしょうね」


 迫りくる4人の騎士は大神君、舞子、天夜、紺碧さんの前衛組で相手をする。

 あたし、クリス、エリザは後衛で大神君達の援護だ。

 カイ王子はあたし達の後ろで待機。巻き込まれないようにね。


 最初は大神君が斧を持った茶色い騎士と、紺碧さんはハルバードを持った青色の騎士と、天夜が両手にサーベルを持った緑色の騎士と、舞子がバスターソードを持った赤色の騎士と対峙していたけど、どうやらお互いが相性の悪い相手をあてがわれたみたい。

 あたし達後衛の援護を受けてはいるが、押され気味だ。


 そのことに気が付いた大神君は戦闘中にもかかわらず、戦闘をしながら対戦相手を交代していた。

 水色の騎士は大神君が、赤色の騎士が天夜、緑色の騎士が紺碧さん、茶色の騎士が舞子と、スピードにはスピード、火力には火力と言った具合に同じタイプを対戦相手を選んだ形になる。


「ベル! クリス! エリザ! まず先に天夜の相手に集中して!

 舞子! 紺碧さん! 抑えをお願い!」


 天夜の相手は火力特化の騎士とみられるので、先にそちらを倒してしまおうという大神君の計算なのだろう。

 なので、あたしは天夜の回復を優先させることにする。

 だけどその時後ろに控えていたセントラル王が動いた。


「ふん、つまらん小細工をしおって。ならばその小細工を打ち破ってやろう。

 我が軍勢よ、翼包囲をもって迎え撃て。――鶴翼の守陣!」


 セントラル王より放たれた光により四元騎士に防御力増加のBuffが付く。

 仮にも26の王が放つ支援スキルだ。あたし達プレイヤーが使う付与魔法とはわけが違った。


 「くっ!」


 先ほどより通りが悪くなった攻撃に天夜は苦い表情をする。


「天夜、気にするな! 君はキッチリ攻撃を当てていけばいい! 防御力が上がったと言っても物理部分だけだ。僕たちが援護するから自分の役割を果たせ!」


 クリスは天夜に指示を飛ばしながら魔法矢を放つ。

 『イメージ効果理論』を用いた、大神君と同じ魔法剣の応用の魔法を纏わせた物理攻撃だけではなく、魔法攻撃効果がある矢だ。

 風属性の魔法を纏った矢が赤い騎士に突き刺さり、風の爆発を撒き散らしながら赤い騎士のHPを削っていく。


「ははっ! やるじゃねぇか! いいぜいいぜ! もっと来い! 俺様をもっと熱くさせろ!」


「言われなくてももっと熱くさせてやるよ!」


 天夜は攻撃をしながら呪文を唱え魔法剣を放つ。

 天夜達は『リザードの王』の討伐準備期間に、大神君から手ほどきを受けて簡単な魔法剣なら使えるようになっている。

 ちなみにあたしは詠唱破棄スキルの影響で魔法剣は使えず、クリスはもともと使えていたので前よりも練度が増している。


「ファイヤーアロー!」


 炎の矢の魔法を刀に纏わせ、赤い騎士に向かって振り下す。

 って、赤い騎士はどう見ても火属性の騎士でしょ! 火属性の魔法剣を使ってどうするのよ!?


「はははっ! 面白れぇ技を持ってるじゃねぇか! それだよ! そう言うのを待っていたんだよ!」


 火属性を持っているからなのか元々なのかは分からないけど、赤い騎士は受けたダメージを気にせずにがむしゃらに剣を奮う。

 気分が高揚してきたのか、お互い防御無視で攻撃一辺倒で斬り合いに発展していった。

 あたしは天夜のHPが削れるたびにすぐ回復をしていたけど、回復すら無視でただ目の前の敵を斬りつけていた赤い騎士はHPが1割を切っていた。


「うー! もうめんどくさーい!!」


ちまちました攻撃に嫌気を刺したのか、唐突にエリザが範囲魔法を放つ。


「サンダーストーム!」


 放たれた雷の嵐は、セントラル王を巻き込んで辺り一面に降り注ぐ。

 PTメンバーにはダメージを受けないけど、攻撃の衝撃はあるので普通なら回避するはずが、天夜は構わずにそのまま赤い騎士に突撃する。


「桜花一閃!」


 エリザの雷の範囲魔法と天夜の刀スキル戦技を受けて、赤い騎士はついにHPが0になり光の粒子となって消えていった。


「はははっ、いいぜ、最高だったぜ・・・」


「よし! このままセントラル王を倒すぜ!」


 天夜はそのままセントラル王に向かうと、大神君の方でも青色の騎士を倒したみたいで同じくセントラル王に向かう。


「クリスとエリザは紺碧さんを援護して! ベルは舞子のHPも注意して見てて!

 あとエリザ! さっきのようなのはもうやらないでよ!」


 舞子はお互い(タンク)同士の戦いの為か、それほど思ったよりHPは削れていなかった。

 紺碧さんはお互いがスピードタイプの為、攻撃が当たらないのでさほどダメージが無い。

 だけど念のため舞子と紺碧さんのHPを回復しておく。


「ふむ、よもや近衛騎士を倒すとはな。貴様らの攻撃の要は魔法か? ならばそれを奪ってやろう。

 敵の軍勢よ、魔の理を縛られ咎人となれ。――魔封の縛陣!

 ついでだ、我が軍勢よ、進撃の力を持って突き進め。――怒涛の攻陣!」


 セントラル王を見ると再び支援スキルを放つ。

 支援スキルの光が収まると、あたしたちには魔法封じのBuffが、セントラル王と騎士には攻撃力増加のBuffが付いていた。

 セントラル王たちをよく見れば防御力増加のBuffはそのままだ。


 基本的に味方へのBuffはステータス系が1つ、属性魔法系が1つとなっている。

 だけど、セントラル王はステータス系である攻撃力と防御力のBuffを同時にかけている。

 そして何よりも一番拙いのは魔法を封じられたということだ。

 あたしはもとより、大神君やエリザは大幅に戦力ダウンだ。

 紺碧さん達も専門職ではないとは言え、サブスキルにいくつか魔法スキルを持っているのでそれすら使えない状況になってしまった。


「フェンリル! こっちは俺達で何とかする! だから構わずセントラル王を頼む!」


「はい! お姉様、ここはあたし達が押さえておきます! だから早く王を倒してください!」


 そんなあたしの動揺を余所に、紺碧さんも舞子も物理スキルのみで騎士達を相手にする。

 その間にセントラル王を倒してしまえ、と。

 大神君は紺碧さん達の気持ちを組み、天夜と一緒にセントラル王に対峙する。


「攻撃の中心は天夜お願い。わたしは得意の剣舞(ソードダンス)でセントラル王の動きを攪乱するわ。」


「了解!」


 天夜が刀スキルで戦技を放ち、大神君がその隙を埋める形で左右の剣を奮う。

 セントラル王の攻撃を片方が受けてる間、もう片方がその隙をついて攻撃する。そのやり取りが数分続いている。

 大神君たちは受けるダメージをポーションで回復しており、魔法を封じられているあたしには出番が無い。

 ううん、チャンスは必ず来る。魔法封じもBuffである以上何らかの制限があるはずだ。

 あたし達の使うスキルとは違うだけで、その制限の隙を突けばいい。


 丁度その時、紺碧さんが風の騎士を倒して俺達に加勢する。

 紺碧さんは隠密スキルでセントラル王の背後を取り、二刀流スキル戦技・四連撃を叩き込む。

 これで紺碧さんが加わって3対1となる。状況はこちら側に有利になった。


「ふん、また小蠅が1匹増えたか。これ以上うろちょろされるのも目障りだな。どれ、少しは大人しくしてもらおうか。

 敵の軍勢よ、己に枷を付け地に伏せよ。――速縛の呪陣!」


 三度セントラル王から支援スキルが放たれる。

 今度はステータスダウン系の呪1AのBuffが掛かっていた。

 Aはアジリティ(敏捷)の頭文字、つまり速度を封じられたことになる。

 26の王のスキルの為か、普通の呪1の効果よりも大きい。

 そして呪いのBuffは魔法でしか解除できない。


「これで貴様らの動きは半分になった。大人しく我が剣の錆となれ」


「・・・下々の者相手にちょーとやり過ぎなんじゃないのかなぁ?」


「ほほう、余の命を狙う者に手を抜けと? 面白いことを言う」


「・・・ごもっとも。命を狙われたら手加減なんてできませんよねー」


 大神君がセントラル王に軽口を叩く。

 あたしはその間、セントラル王の支援スキルについて考察する。

 セントラル王が放ったのは、

 味方の守備力を上げる――鶴翼の守陣。

 敵の魔法を封じる――――魔封の縛陣。

 味方の攻撃力を上げる――怒涛の攻陣。

 敵の速度を封じる――――速縛の呪陣。


 味方への支援は、攻陣と守陣。敵への妨害は、縛陣と呪陣。

 これ以上の陣があるのかは分からないけど、多分これが攻撃力増加と防御力増加のBuffが重ならない秘密なのだろう。

 つまり同じ陣を重ね掛けすれば、あたし達のスキルと同様上書きされるはず。

 あたしはそのチャンスをひたすら待つ。


 その間に対峙していた大神君はとんでもないことをやってのけていた。

 速度を封じられていたためか、今までの剣舞(ソードダンス)と違い動きがものすごく鮮麗されていた。

 王の動きの先を読んで、最小限の動きでかつ最大限の攻撃を放つ。


 ――ありえない、さっきまでの大神君の動きじゃない。


 ただでさえ大神君は前衛で攻撃を躱しながら呪文を唱え、複雑なイメージをしながら魔法剣を放つような離れ業をしているのに、それに加え相手の動きを読んで最小限の動きで攻撃をするって・・・

 ううん、今は魔法を封じられているからその思考を今の動きに使ってるのかもしれない。


 それにしても大神君の動きは凄すぎた。

 あたしは思わず身震いをする。彼はどこまで凄くなるのだろうか。

 ピンチをチャンスにすら変えてセントラル王に向かっている。


「馬鹿なっ、魔法も素早さも封じているのだぞ!? 何故余の攻撃が当たらぬ!

 貴様っ、本当に人の子か!?」


 流石のセントラル王も焦りが見え始めた。


「くそっ! ならば今度は攻撃力を封じてやろう!

 敵の軍勢よ、力の源を封じられ咎人となれ。――撃封の縛陣!」


 来た!

 縛陣系のBuffを掛けられたことにより、攻撃力を減衰させられるけど同時に魔法封じのBuffが解除される。


「ベル!」


 大神君も気が付いたみたいであたしに合図を送る。

 あたしは待っていたとばかりに詠唱破棄で連続解呪を行う。


「リムーブカース! リムーブカース! リムーブカース! リムーブカース! リムーブカース!」


 あたしが呪陣を解除したとたんに、エリザが爆発する。


「ライトニング!!」


 直径1m程の太さの雷の閃光がセントラル王を襲う。


「紺碧さん! 天夜! 連続魔法で押し切るから援護お願い!」


「「了解!」」


 大神君は先ほどまでの剣舞(ソードダンス)を使わずに魔法で押し切るつもりみたいだ。

 エリザもよほど鬱憤が溜まっていたのか容赦なしに魔法を放ちまくる。

 セントラル王は必死に抵抗し支援スキルを放とうとするが、2人の放つ魔法は容赦なくセントラル王のHPを削りまくった。


「バーニングフレア・トリプルブースト!」


 大神君の放った輪唱呪文で増幅された炎の砲弾がセントラル王に降り注ぎ、遂にセントラル王が仰向けになって大の字で倒れる。


「・・・ふん、まさか余が小童どもに敗れるとはな。

 カイ・キングダム・セントラル、お前がたった今から新たなセントラル王だ。

 お前の思うがままに国を治めて見せよ」


「・・・はい、父上」


 セントラル王はそのまま光の粒子となって消えてしまう。




――エンジェルクエスト・Kingdomがクリアされました――



◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「すごいすごいすごーい! フェンリルちゃん凄すぎ! もう最高ー! んー」


 エリザの声のする方を見れば、大神君にエリザが抱きつきキスをしていた。


 ちょっ!! エリザ何やってんのよ! 大神君もちょっとは抵抗してよ!


 だけど女同士でも遠慮せずにいるそんなエリザを羨ましく思う自分も居た。

 明らかに色欲の騎士ラエロストの影響が残っている。


 エリザは大神君から離れたと思うと、紺碧さんに叩かれ説教をされる。

 大神君はちょっと複雑そうな顔をしながらエリザから離れルージュさんに連絡を取っていた。





 Kの王の証

 『王の中の王』を倒した、または認めてもらった証。

 ※QUEST ITEM

 ※譲渡不可/売却不可/破棄不可

 ※王の証を所有した状態で死亡した場合、王は復活します。

 ※特殊スキル「Kingdom」を使用することが出来る。

 効果:24分間、各功陣、各守陣、各縛陣、各呪陣が使用できる。

    特殊スキル効果終了後、24時間「Kingdom」のスキルが使用不可能になる。

               24時間、戦技魔法が使用不可能になる。


「ねぇ、Kの王の証はどうしよう?」


 連絡を取り終えた大神君は、セントラル王を倒したことによって手に入れたKの王の証の扱いを聞いてきた。


「あー、エリザちゃんはパース。もともと助っ人できたからね~」


「俺も同じくパスだな」


 ギルドからの派遣された2人は受け取りを断った。


「あ、あたしも要らないです。もともと臨時で入っているんだし」


「だったら、俺も受け取れないな」


 舞子と天夜の2人も受け取りを拒否する。

 って、あれ? そうすると残るのはあたし達3人になるわけだけど・・・


「僕も遠慮しておこう」


「必然的にベルが持つことになるね」


「え!? あたし!? あたしには荷が重いわよ! クリスが持てばいいじゃない。」


「いや、特殊スキルの効果から見てもベルザの方が相性がいいと思うよ。」


 あたしは王の証の所持を拒否したものの、受け取る人がいないと言う事で渋々了承した。

 うう、こんなの持っててもプレッシャーなのに・・・


「さて、皆さん。僕はここで別れて戦後の事後処理をします」


 王子様、ううん新しい王様はそのまま王城に残ることとなった。

 あたし達は王様と別れ、サンオウの森を目指して騎獣を走らせる。


 現場に到着すると、奇襲部隊とギルド連合との睨み合いが続いていた。

 大神君がルージュさんとやり取りをし、女王軍の方から出てきた女王様にPの王の証を返却する。


「確かに受け取りました。

 ・・・これでプレミアム王国を再興することが出来ます」


 王の証を受け取った女王様は軍を纏め、撤退を始める。

 北の大手軍には狼煙で退却の合図をする。

 プレミアム王国の女王軍の退却を見届けたあたし達はやっとの思いで一息を付く。


「ふぅー、Pandoraのクエストはクリアできなかったけど、何とか戦争イベントは片付いたね」


「フェンリルさん、大変お疲れ様でした。お蔭で戦争イベントが無事終わらせることが出来ました」


 ルージュさんがあたし達に近づいてきて労いの言葉をかけてくる。


「いえ、ルージュさんもお疲れ様でした。わたし達の力がお役にたてたみたいでよかったです」


「今後何か困ったことがあったら『9人の女魔術師(ソーサレスナイン)』を訪ねてきてください。きっとお力になれると思います」


「丁度いいから俺達はここでPTを抜けるぜ。マスターの言う通り何か困ったことがあったら頼ってこいよ。いつでも力になるぜ」


 紺碧さんがルージュさんと並んで大神君に声を掛ける。

 するとエリザが再び大神君に抱きつき胸を揉み始める。


 ちょっと! エリザ! 何、大神君の胸を揉んでいるのよ!


「ねぇねぇ、フェンリルちゃん。あたしと一緒にうちのギルドに来ようよ。この世とは思えない快感を教えてあ・げ・る♪」


 そう言いながらエリザの手は止まらない。

 大神君の胸を揉むのに夢中で、エリザはそばにいた紺碧さんのことをすっかり忘れていた。


 ゴンッ!!


「きゅう!」


「バカやってないで行くぞ!」


「フェンリルちゃん~、エリザはいつでも待ってるからね~」


 殴られたエリザは紺碧さんに襟首を掴まれて引きずられていく。


「あー、随分過激なアプローチだったな」


「・・・まぁ、衣装からして過激だったからね」


「さて、お姉様。あたしもここらでPTを抜けますね。

 今回の事で力不足を感じました。お姉様のお役にたつためにももっと修行して力を付けて来たいと思います」


「そんじゃ、俺もPTを抜けますか。

 なんせ俺は舞子(こいつ)のお守り役なんでね」


 天夜と舞子もPTを抜けるようだった。

 もともと『リザードの王』を倒すための臨時PTだったわけだから、戦争イベントにまで付き合ってもらったのはありがたかった。

 だけどこの戦争イベントで舞子は己の力不足を感じたみたいだ。


 ・・・うん、あたしもそうだ。色欲の騎士ラエロストに簡単に惑わされたり、魔法を封じられて何もすることが出来なかったり。

 そして何よりも大神君の急激な成長を目のあたりにして、あたしは彼の傍にいるのが相応しいだけの実力があるのか。


 天夜と舞子の2人がPTを抜けた後、あたしもPTの離脱を宣言する。


「あたしもPT抜けるね」


「は!? え? 何? どういこと?」


「あたしとなんかより、エリザとPTを組んだら?

 ――何よ、鼻の下伸ばしてデレデレしちゃって! そんなにえっちぃのが好きなんだったら彼女と一緒に居ればいいじゃない!」


 表向きは大神君とエリザへのやきもち。

 本当は大神君に相応しい実力を身に着けるため。

 と言っても、大神君とエリザがイチャイチャしてたのが面白くなかったのもあるけど。

 色欲の騎士ラエロストによって目覚めさせられた欲望(気持ち)は、あたしに新しい一面を見いだしていた。

 ・・・これとの折り合いも付けないといけないね。


 あたしは呆然とする大神君を余所にPTを抜けて王都と目指す。

 ごめんね、大神君。あなたに相応しい実力を身に着けて戻ってくるから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ