第5話
全ての準備が整いいざ『リザードの王』に挑戦したわけだけど、結果だけを述べれば惨敗だった。
『リザードの王』の透明化は、あたし達が予想していた最悪の物だったのだ。
普通の透明化ではなく精神に影響する効果のため、普通の手段では対抗できなかった。
意識の裏側に入るというか、目の前に居ても認識が出来ないステルス技能だった。
それが分かった瞬間に大神君がすぐ撤退命令を出したお蔭で、大きな犠牲が無く無事『リザードの王』から逃れることが出来たのだ。
ちなみに大神君曰く、「複数の戦闘を経験したことにより『リザードの王』は賢くなっている」とのこと。
既に『トロールの王』や『オークの女王』と同じレベルのはずの『リザードの王』は透明化だけではなく、その戦闘技能も格段に上昇しているとか。
「お・お姉様、ボス戦ってこんなに厳しい物なんですか~。」
「これが王との戦闘か~。流石にしんどいな」
分かっていたこととはいえ、流石に『リザードの王』との戦闘はきつかったみたいで舞子と天夜はその場に座り込んでいた。
「はぁ~、染料も気配探知も効かないんじゃ別の方法を探さなきゃね」
「そうだな。可能性としては他のスキルか、対王専用の特殊アイテムなのかもな」
あたしのセリフにクリスが相槌を打ってくる。
とは言え、精神に作用する透明化の対策ってあるのかな?
クリスの言う通り対王専用の特殊アイテムだったりするのかな?
とりあえずは宿に戻って対策を立てようとウエストシティに向かっていたのだけど、突然騎士の大軍に遭遇してしまった。
「待て! 貴公ら止まれ!」
あたし達は言われるままにその場に立ち止まる。
見るからに将軍と思わしき騎士が馬上から声を掛けると同時に、周りの騎士や兵士たちがあたし達を槍で囲んでしまったからだ。
「貴公らはセントラル王国の冒険者か?」
「・・・そうですけど。」
将軍の質問に大神君が憮然としながら答える。
「そうか、ならば仕方がない。我らの進軍を見られたからにはここで消えてもらおう。
今我々の存在をセントラル王国に知られてはならないのでな」
いきなりのとんでもない物言いにあたしは一瞬耳を疑う。
何かのイベントにしても強制的過ぎる!
「待ってください!」
だけどその瞬間、部隊の奥の方から聞こえた声が騎士達の動きを止める。
そして部隊の奥の方から進み出てきたのは、白馬にまたがった騎士装備に身を包み、見るからにお姫様と思われる少女だった。
「女王様! なりませぬ! このような素性も分からぬ者の前にお姿を現すなど!」
「構いません。この者の素性はわたくしが保証いたします」
王女様どころではなく女王様だったよ。
その女王様は何故かこちら――大神君を見ていた。
「久しぶりですね。フェンリル様。まさかこのような場所で再会をするとは思ってもみませんでしたわ。
これも太陽神サンフレア様と月神ルナムーン様の御導きなのでしょうか」
「パ、パティア様!?」
どうやらこの女王様は大神君の知り合いらしい。
大神君も女王様の登場に驚きを隠せないでいた。
「フェンリル様、わたくしたちはこれから王都セントラルに奇襲を仕掛けます。
なので、将軍は情報漏洩の為、貴女方を消そうとしました」
「女王様! 何故このような者たちに作戦を教えるようなことを・・・!」
女王様は何故かこの行軍の理由を大神君に教える。
それを将軍は止めようとしたけど、女王様はお構いなしに話す。
「構いません。ここで彼女に会ったのは三柱神の御導きです。
この出会いに何か意味があるのでしょう。
それに彼女には月神様の祝福があります。そのような者を亡き者にしようなどと、太陽神の巫女として許せません。
そしてこの程度で奇襲が失敗するようであれば、初めからわたくしたちの戦争は負けが決まっています。この試練を乗り越えてこそわたくしたちに勝利があるのです」
「ですが・・・!」
どうやら彼女は女王様であると同時に、太陽神の巫女でもあるみたいだ。
大神君を月神様の祝福と言っていたので、太陽神の巫女関係で知りあったのだろう。
そんな事を考えてる間にも将軍は尚も食い下がるが、女王様はあたし達の排除を認めない。
と言うか、戦争って・・・いつの間にそんなイベントが始まったのだろう?
「あの、パティア様、セントラル王国と戦争とはいったいどういう事なのですか?」
同じ疑問を持ったのか、大神君が女王様に質問する。
「貴様・・・! よくもぬけぬけと・・・!」
「お止めなさい、将軍。セントラル王国の冒険者と言うだけで彼女には何の咎もありません。そしてそのセントラル王国の冒険者がわたくしの命を救ってくださいました」
「・・・・」
そう言われて将軍は口を閉ざす。
そして女王様はあたし達の方を向いて事情を話し始める。
「フェンリル様・・・数日前プレミアム王国はセントラル王国の仕掛けられた戦争で滅亡しました。
攻撃は王都ミレニアムまで及び、王城も崩れ落ち今では瓦礫の山となっております」
「えっ!?」
あたしは思わず声を上げる。
普通町の中とかってセーフティエリアだから壊されることなんかないのに。
「そして陛下、王妃、兄上が殺害され、生き残った王族は『亡国の王女』のわたくしただ1人となりました」
「いいえ、貴女は我々の希望です。『希望の女王』なのです。」
「ありがとうございます、将軍。そうわたくしはプレミアム王国の民の為、希望でなければなりません。」
「待ってください。ならば王族の生き残りである貴女が民を率いて王国を再建すればいいのでは? 兵を率いてセントラル王国に戦争を仕掛けるよりもそちらが最優先ではないでしょうか?」
クリスの進言に女王様は首を横に振る。
「王国を再建する為には、わたくしが女王としての証が必要となります。
その王の証はセントラル王が自ら率いた軍に奪われてしまったのです。
わたくしはその王の証を取り戻さなければなりません」
ここでまさかの王の証の名前が出て来るとは。
するとこれはエンジェルクエストの一環でもあるのかな?
「・・・あの、パティア様のフルネームは? それと亡くなった陛下のお名前も」
「あら、そういえば言いそびれてましたわね。
わたくしのフルネームはパティア・パンドラ・プレミアムです。
父上・・・陛下はパトリック・パンドラ・プレミアムです」
どうやらエンジェルクエストで間違いないかと。
あれ? でも今は女王様は王の証を持っていないから・・・
クエストクリアには特別な別の条件でもあるのかな?
「フェンリル様、王の証を取り戻すためにもわたくしたちは王都セントラルに攻撃を仕掛けなければなりません。
本隊は北の白霊山の麓から進軍しております。そのまま29日の昼に攻撃を仕掛け、わたくしたちは奇襲部隊として王城に攻撃を仕掛ける手はずとなっております。
フェンリル様はこのことを報告しても構いません。もしこれで負けるようであればそれがわたくしの運命なのです」
「女王様・・・もう何も言いますまい。」
女王様の覚悟を聞いて将軍はこれ以上の意見を止める。
「フェンリル様、それでは戦場でお会いしないことを祈っております。」
女王様と将軍達は俺達を開放して森を進軍していく。
残されたあたし達は当然パニックになっていた。
「えーと、お姉様? これはどういうことなんでしょうか?」
流石に事態についていけなかったのか、舞子が訪ねてくる。
「・・・現在進行形でエンジェルクエスト『希望の女王・Pandora』の関わった戦争イベントが進行してるみたい」
「このままだとどうなるんだ?」
「・・・まずは奇襲軍の攻撃で王都の施設が破壊されれば使用が不可能になるだろう」
天夜の疑問にクリスが答える。
女王様の言っていたことが本当なら、プレミアム王国も廃墟となっているので施設等は使えないはず。
「エンジェルクエストのクリア方法も不明だわ。彼女を倒せばクリアになるのか、王の証を手に入れればクリアになるのか。
どちらにしてもプレミアム王国の再建の邪魔をする形になるわね」
あたしの口にした疑問にどうすればいいのかもわからず、みんなも黙り込んでしまう。
「ベル、わたしの方でも連絡を取るけど、ベルの方でも王都の誰かにこのことを連絡して。
対応には大勢のプレイヤーが必要になってくるはず。
みんなも他の人と連絡を付けて情報を集めて」
あたしはすぐさまメニューを立ち上げ、『軍』のリリアにメールを送る。
彼女は取り締まりをしている関係上、情報収集には力を入れている。
リリアからすぐ返信が返ってきた。
返信の内容は、王都で主要ギルドで連合を結成し今回の事態に当たるとの事。
できればあたしにも協力をお願いしたいと書かれていた。
「フェル、王都でギルド連合が結成されて事態に当たるみたい。
少なくともあたし達プレイヤーが負けない限りは王都が崩壊することは無いと思うわ」
「ええ、わたしの方でも確認できたわ。
ただ、そのギルド連合の作戦会議に参加してほしいって」
大神君の方でも同じ内容のメールを受け取ったみたいだ。
剣の舞姫の二つ名は伊達ではないらしく、ギルド連合の方でも大神君の力を必要としていた。
あたし達はすぐさま王都に向かうことにする。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
王都セントラルは、戦争イベントの所為かかなり混乱していた。
あたし達はそんな喧騒に脇目も振らずにすぐ冒険者ギルドへ向かう。
冒険者ギルドの大会議室には既に複数のギルドの人たちが集まっていた。
会議に出席するのはPTリーダーである大神君と、補佐的位置にいるということであたしの2人だ。
会議室の中に入ると、『9人の女魔術師』、『神聖十字団』、『軍』、『SilverSoul』、『GGG』、『黒猫』、『CIRCLE』、『大自然の風』のギルマスと幹部の人たちが揃っていた。
『9人の女魔術師』のギルマス・ルージュさんや、『軍』のギルマス・サイレスさん、『黒猫』のギルマス・黒猫さん、『大自然の風』のギルマス・ロックベルは臨時出張PTの時に知りあい、『神聖十字団』のギルマス・ランスロットや『SilverSoul』のギルマス・ファルクは『軍』や他のPTに居た時に知り合った人たちだ。
『GGG』と『CIRCLE』はあったことはないが、『GGG』のギルマス・GGはAI-Onの中でもトップクラスの実力者として有名だ。
「待っていたわ。これで全員が揃ったのでギルド連合による対プレミアム王国軍の作戦会議を始めたいと思います。
僭越ながら議長はこの私、ギルド『9人の女魔術師』のギルドマスター・ルージュが努めさせてもらいます」
ルージュさんの主導で会議が始まる。
『9人の女魔術師』はかなり初期のころからある老舗のギルドなので、彼女が議長を務めるのは納得だ。
「異議あり。何故あんた達のような少数ギルドが議長を務めるのだ?
ここは大手ギルドである我々『軍』のギルドマスターが議長を務めるべきであろう」
発言したのは『軍』の幹部に居る軍曹だ。
臨時出張PTに居た時も彼の主張は激しかった。
『軍』の評判が悪い勢力が存在するが、彼はその中の1人だ。
「黙れ、軍曹。ここは『軍』とは違う」
「しかし、サイレス殿。我々こそが一般市民の為に・・・」
「黙れと言っている、軍曹」
「・・・は、申し訳ありませんでした」
「すまなかった、ルージュ殿。続けてくれ」
場違いな発言にサイレスさんは強めの口調で軍曹を諌める。
どうやらサイレスさんは『軍』での彼らの暴挙に頭を悩ませてるみたいだ。
それで口調が強めになったのだろう。
彼は基本的に穏やかな性格なので、今の発言には少し驚いている。
「いえ、それではここに集まった8つのギルドと剣の舞姫のPTでこの戦争イベントを対処していきたいと思います」
そこで黒猫さんが手を上げる。
「あの、よろしいでしょうか。他のギルドの参加は無いのでしょうか?
例えば最近『深緑の王』を攻略した『月下美人』とか『オークの女王』を攻略した『ELYSION』とかはどうなっているのでしょうか?」
「残念ながら『月下美人』とは連絡が取れませんでした。『ELYSION』は今現在王都や都市の近くにはおらず離れた場所での活動の為、こちらに来るのが間に合わない状況になっています」
「そうですか、それは残念ですね。」
ルージュさんの説明に黒猫さんが残念そうにする。
深緑の森はかなりのLvの森らしいので、そこを攻略した『月下美人』の人たちが不在なのはかなり悔やまれる。
「それでは、今の状況を説明させていただきます」
ルージュさん主体の下会議を進めたわけだけど、あたし達が出会った女王様や、『9人の女魔術師』の協力者などを考慮して、作戦内容はPの王の証を持っていると思われるセントラル王から直接取り返すという大胆な作戦となった。
そのために部隊を3つに分けることになる。
北の展開している元プレミアム軍、奇襲として潜んでいる女王軍、そしてセントラル王の3つにそれぞれ当たることとなった。
そしてなぜか重要な役割であるセントラル王の撃破にあたし達のPTが当てられる。
「ちょっと待って!」
大神君は慌てて待ったをかける。
流石にこの割り当てには疑問を感じ得ない。
普通であれば大手ギルドが当たるものだからだ。
「王の証奪還はギルドでやった方がいいんじゃないの?
流石にわたし達だけでってのはきつすぎると思うんだけど・・・」
「いいえフェンリルさん、貴方達でなければ駄目なのです。
何故なら王城の進入方法は王の証を持つプレイヤーを含むPTのみだからなのです。
そしてこれは協力者から得た情報です。
Pの王の証を奪ったセントラル王キリング・キングダム・セントラルも26の王の1人『王の中の王・Kingdom』なのです」
衝撃の事実の連続だった。
王城セントラルの進入方法もさることながら、セントラル王までもが26の王だったとは驚きを隠せない。
「なので、今現在王都に居て王の証を所持しつつ『王の中の王』を倒すことのできる可能性があるのは剣の舞姫のPTと言うことになります」
確かに今王の証を持っているのは大神君だけなんだよね。
そう考えるとこの部隊の区分けは適材適所なわけだ。
ただ『SilverSoul』のギルマス・ファルクから王の証を他の人に渡せばいいのではないかと意見が出たが、王の証は他人への譲渡が不可だ。
大神君はこの機会に王の証の情報をみんなに公開する。
当然、デスゲームの始まりのSの王の証の事を言及されるけど、ルージュさんがデスゲームの解除は不可能だと説明する。
「いいえ、『始まりの王・Start』が復活してもデスゲームが解除されることはありません。
このデスゲームを仕掛けてたAccess社が王が復活したくらいでデスゲームを解除するとは思えません。むしろそうやって私たちが踊らされてる様を見て笑っているのかもしれないのです。
それに皆様はPKをしてまで現実世界に戻りたいと思いますか?」
ルージュさんの問いかけにギルマスのみんなはPKを否定する。
流石に人を殺してまでゲームを脱出しようとは思わない。
最終的にルージュさんの部隊編成に異議を唱える者はいなかった。
明日の昼に女王様の奇襲部隊が動くので、それに合わせてあたし達はセントラル王の王城へ突入することとなった。
ただ今のあたし達のPT編成は5名なのでルージュさんのギルドから2名派遣してもらい7名のフルPTとして『王の中の王』に挑戦することとなった。
派遣されたのは先ほどの会議にも出席していた幹部の忍者職の紺碧さんと、ちょっと正確に問題がありそうな過激な踊り子衣装を纏った魔導師のエリザベスの2人だった。
ちなみにエリザは雷帝の魔女の二つ名を持ってたりする。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
次の日の朝、あたし達は7人PTになったのでお互いの連係等を見るために魔の荒野で軽く戦闘をし、昼前頃には王城の門の前に居た。
ちなみに昨日の夜には会議にも出ていた軍曹が大神君を襲ったりしたが、あっさり返り討ちにした。
かなり英雄志望があったみたいで、Sの王の証の所有者の大神君をPKすればみんなを救えるなんて喚いていたけど、今では『軍』に拘束されて王城の地下牢に閉じ込められている。
サイレスさんはこれを機に悪い噂の基の『軍』の内部を粛清するつもりでいるらしい。
「さて、北では戦闘が開始されているので、こちらも王城に突入して『王の中の王』を倒しに行こうか」
紺碧さんの合図とともに王城の中へと進む。
王城の正面門には衛兵が2人いたが、大神君が王の証を取出し見せるとすぐさま門を開けてくれた。
王城に進入すると来客を受け入れるための玄関として大広間のようなホールになっていた。
左右には別の部屋へ通じてる扉があり、正面奥には城の深部へ続く廊下が伸びている。
正面奥の廊下へ続く道を挟むように左右に2階へ続く階段が設置されている。
その左右の階段の間、正面奥の廊下に行く道を塞ぐように何故かピエロが居けど意味不明な事を言っていたので無視し、協力者と合流することにした。
紺碧さんの案内の下、あたし達はその協力者が居るという部屋を探す。
目的の部屋を見つけドアを開けると部屋の中には豪華な衣装を纏った男性が居た。
見た目もキラキラオーラを纏ったイケメン。
「お待ちしておりました。紺碧殿」
「いや、こっちこそ待たせた。カイ王子」
協力者は王子様でした。
「こちらの皆様が父上を抑えるための協力者なのですね。
始めまして、僕はカイ・キングダム・セントラル。この王国の王位第一継承者です」
「初めまして、わたしがこの一応PTのリーダーのフェンリルよ。
王子と紺碧さんの具体的なやり取りは聞いてないけど、わたし達の目的はセントラル王を倒しプレミアム王国の王の証を取り返すことよ。王子にはわたし達がセントラル王を倒した後のフォローをお願いできると聞いたのだけど」
大神君がPTリーダーとして王子様に挨拶をする。
一応、セントラル王を倒した時の対応を確認する。
あとで約束が違うとか言われても困るし。王族ならではの暗部とかもありそうだし。
「はい、そのことなら大丈夫です。
父上には倒してでも王位を退いてもらい、その後僕が王位を継ぎますので皆様にはこの国での不自由はさせません」
うわぁ、この王子様王位簒奪とか平気で凄いことを言う。
「ああ、王子は本気だ。そのために前準備として冒険者ギルドにいろいろ依頼してきていたんだ。その依頼を受けたのが俺だってわけだ」
「はい、父上は軍事主義者です。ここ数年は大人しかったのですが、近年周辺国を狙う動きをしていました。そして僕の懸念していた通りプレミアム王国が滅ぼされてしまいました。
ですが父上はそれだけでは収まらないでしょう。周辺国だけではなく、自国さえも滅びに突き進む道を選んでしまいます。僕はこの国の王子として父上を止めなければなりません。
プレミアム王国が滅ぼされたことにより、以前より計画していた作戦を前倒しして王位を手に入れなければならなくなりました。なので、皆さん僕に力を貸してください」
こうして王子様の協力を取り付けたので、そのまま謁見の間に居ると思われるセントラル王の下へ向う。
だけどその道中、敵に一切出会わなかった。
「なぁ、何かおかしくないか? ここに来るまで誰1人として会わないなんて」
天夜の言葉にみんな黙り込む。
「これは何かの罠・・・なのかもな」
「確かにおかしいですね。いくら北の軍隊に兵が徴収されてるとは言え、城の中全てが徴収されてるわけではありません。
これは父上の張った罠の可能性があります」
紺碧さんと王子の言う通り罠の可能性も拭いきれない。
だからと言ってこのまま引き返すわけにはいかない。
「とりあえず扉に罠が無いか調べて・・・」
「罠があっても全部突破していけばいいじゃん。何難しく考えてるのー?」
紺碧さんが忍者の職スキルを使って扉に罠が無いか調べようとしたが、その前にエリザが遠慮なしに扉に手を掛ける。
その瞬間、床に魔法陣が展開して光始める。
ああ、この人残念な人だ。実力はすごくあるのに残念なことに性格がかなり天然だ。
彼女の考えなしの行動があたし達をトラブルに巻き込む。
そんなことを考えてる間に魔法陣の光は強まり、辺り一面光に包まれる。