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神速の癒し手  作者: 一狼
第2章 再会
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第4話

 魔法都市の別名があるウエストシティは、魔法関連のアイテム・素材などを販売していて、魔法を中心に発展した都市となっている。

 魔法都市の名に相応しく、都市の作りは上空から見ると六芒星の形になっていて、都市の入り口の門は北、北東、南東、南、南西、北西の6つからなり、それぞれの門から道が伸びてその形が六芒星をかたどっている。


 あたし達はウエストシティの冒険者ギルドで今後の予定を立てた。

 まずはリベンジとして『リザードの王』に再挑戦すること。

 さっきのは突発的な出来事だったので、PTメンバーや準備が整ってなかった。

 なので、それらを踏まえてもう1度挑戦をしようと。

 そう考えると、さっきの突発的な出来事も下調べとしては役に立っていたのかも。


 一番厄介そうな『リザードの王』の透明化。

 大神君はその対策を既に考えていた。

 ペンキを掛けるという当たり前の発想と、気配探知・魔力探知のスキルを使った対策だ。


 ただスキルを入手するために当面は資金調達に追われることとなった。

 その傍らで『リザードの王』への臨時PTの募集も行う。

 流石に2人だけで挑むのは無謀だ。

 ・・・なんか剣の舞姫(ソードダンサー)の二つ名を持つ大神君なら2人だけでも行けそうな気がするのは気のせいかな・・・?




 次の日、経験値稼ぎと資金集めを行うためにウエストシティの南にある魔の荒野へ向かった。

 その道中、大神君から色々な話を聞いた。

 エンジェルクエストや26の王を倒して手に入れる王の証、『イメージによる戦技・魔法に変化をもたらす効果理論』による魔法剣や輪唱呪文、大神君の持っている極大魔力スキルと言ったチートスキルなど表に出てきてる情報、大神君だけの独自の情報を教えてもらった。


「ふーん、なるほどね。だから固定PTじゃなく、臨時PTにしようって言ったんだ」


「そ、王の証所有者が死んだら王が復活するから、1人で複数の王の証を持っていたら死亡した時大量の王が復活するからね。

 なるべく複数の所有者が居た方が保険になるとおもって」


 昨日の夜の話の中で、大神君は『リザードの王』を討伐するのに臨時PTの方がいいと言ってきたのだ。

 臨時PTならその都度のPTメンバーに王の証を渡すことが出来る。

 確かにこれなら1人の負担が軽くなるだろう。

 まぁ、大神君の場合はちょっと特殊だから一概にも負担が軽くなるとは言えないけど。


 王の証の情報は今現在では隠匿されている。

 それと言うのも大神君の持つSの王の証はデスゲームとなったきっかけの『始まりの王・Start』を倒して手に入れたものだ。

 つまり大神君が死亡すると『始まりの王』が蘇る――デスゲームじゃなくなるのではないかと予想されるのだ。


 いずれは王の証の情報を公開しなければならないけど、今はまだ出来ない。

 この情報を流せば大神君がPKに狙われる確率が大幅に上がるからだ。


 そう言えば魔の荒野に来る前にPK集団ではないかと噂されているPTに会った。

 何でも剣の舞姫『(ソードダンサー)の極度のファンだとかで舞姫親衛隊と言っていた。

 彼女らは最近流行ってきた魔法少女の格好をする人たちに文句を付けてきて、結う事を聞かなければPKをするという。

 まぁ、大神君が剣の舞姫(ソードダンサー)本人と分かって親衛隊を解散したんだけどね。

 ただ、親衛隊隊長を名乗っていた舞子って子はPKをするような子には見えなかった。

 あの親衛隊にはまだ裏がありそうなんだよねぇ。




 お互いの情報交換をしながら、魔の荒野でモンスターを相手に戦っているわけだけど、一番の驚きは大神君の戦闘能力だった。

 これまで何度か大神君の戦闘を見ていたけど、こうして改めてみて見ると彼の実力は異常だった。


 二刀流スキルとステップスキルを駆使した接近戦、極大魔力スキルと言うチートスキルを使った魔法攻撃。

 これだけならまだ他の人とそう変わらない実力だったのだろう。

だけどそれらを組み合わせた彼独自のスキルである魔法剣、これが彼の実力を異常なまでに引き上げている。


 『接近戦』をしながら『呪文』を唱え、『イメージ』しながら『魔法剣』を作り上げる。

 それに加えて『複数の呪文』を『イメージ』しながら放たれる『輪唱呪文』なんてものある。

 それらを『戦闘中』に『一度』に『全部』『同時』に行っているのだ。

 普通なら頭がパンクするようなことを、大神君は平気でやってのけている。

 大神君は自分の異常性を自覚していない。


 大神君は極大魔力スキルなんてチートがあるからだと言っているけど、あたしに言わせれば大神君自体がチートだ。

 まぁ、だからこそソロでありながら『始まりの王』を倒せたりしたのかもしれないけど。

 それにデスゲームとなった今では、そのチートも希望の一つだったりするのでこの場合は喜ぶべきだろう。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 大神君の戦闘力も相まって、魔の荒野での経験値稼ぎと資金集めは順調に進んでいた。

 けど、その途中で思わぬ横やりが入る。いや、予想して然るべき乱入だったのかもしれない。


「ウインドランス!」


 休憩も終わりさぁ続きをと思ったところに魔法攻撃が襲い掛かる。

 大神君が剣で魔法攻撃を払落し、周りを警戒する。


「ほぉ~、不意打ちの魔法攻撃を防ぐのか。なかなかやるじゃねぇか」


 出てきたのはウエストシティで解散させたはずの舞姫親衛隊だった。

 ただし3人だけ。玲奈と呼ばれていた騎士(ナイト)魔導師(ウィザード)司祭(クレリック)


「ふぅん、やっぱりね。親衛隊事件の裏に貴方達の存在があった訳ね」


「え? 何? どういうこと?」


 あたしの発言に大神君が戸惑いながら質問してくる。


「PKの噂まで流れてる親衛隊事件なのに、あの舞子が隊長にしちゃ話が違いすぎると思ったのよ。

 そう考えるとこの事件には裏があると思ってね。親衛隊を解散させられてそのままで済むと思ってなかったのよ」


「ちょっとー! そういう事は言ってよーー!」


「しょうがないでしょ。あたしもそこまで確信があった訳じゃないんだし」


 大神君が黙っていたのに文句を言って来るけど、あたしだってホントに襲撃されると思ってなかったんだもん。


「はは、そうお前の言うとおり親衛隊を裏で操ってたのは俺様よ。

 あの頭の悪いくせに熱狂的な信者の舞子をそそのかしてな。

 悪い噂は全部あいつに被せて、俺達は裏で従わないやつをPKしてたって訳さ。

 PKはいいぜ~。全ドロップしたアイテムを売りさばけばかなりの儲けになる。

ああ、PKの事は舞子は知らないよ。あいつは未だにPKされていなくなったプレイヤーが実力不足を知って恥ずかしがって自分の前に出てこれなくなったって信じてるよ」


 あらら、この人自分からいろいろ暴露しちゃってる。

 駄目だね。更生する余地はなさそうだ。

 カイドウの死を知ってるだけに、平気でPKをするこの人たちの事は許せそうにもない。


「あのさ、デスゲームでPKってどういう事か分かってるの?」


 それでも大神君は一応彼女たちの説得を試みる。


「はは! デスゲームでPKは人殺しってか!? 本当に死んでるかなんて分からないじゃねぇか。ここはゲームだぜ。俺達はゲームのルールに従ってプレイヤーの身体(アバター)を倒してるにすぎねぇよ」


 彼女の身勝手なセリフに、あたしの頭の中が怒りで埋まる。

 自分が同じ目に遭ってもそんなことが言えるのだろうか。


「お前ら随分と余裕に見えるが、言っとくけど俺様には剣の舞姫(ソードダンサー)のハッタリは効かねぇぜ」


「ハッタリ?」


「ふん、本物の名前を出せば俺達がビビるとでも思ったのかよ。

ああ、舞子には効果がてきめんだったが、あいつは馬鹿だからな。ま、お前らをPKした後にはお前らが嘘を付いてたって言いくるめてまた親衛隊の復活だ」


 ああ、駄目だ。あたしはこの人たちを許せそうにもない。

 PKされた人たちはおろか、舞子までも見下している。

 彼女はただ純粋に大神君――剣の舞姫(ソードダンサー)を慕ってただけだって言うのに。


「ねぇ、ベル。こいつらぶちのめしたいけど、いい?」


「構わないわよ。あたしも聞いてて不愉快だし。

 ただし、貴女はあれ(・・)があるから死なないようにしなきゃだめよ。MOB戦とPvPは違うから」


「おいおいおい! 2対3だぜ? 勝てるつもりでいるのかよ。今なら大人しく有り金とアイテムと装備を全部差し出せば命だけは助けてやるぜ?

 ああ、もちろんこの事は他言無用も追加条件だけどな」


 玲奈はこれから自分が叩きのめされるのが分かっていないのか、いまだに大口をたたいている。


「ご忠告どうも。生憎勝つつもりでいるのでね。こちとら本物の剣の舞姫(ソードダンサー)なので負けるつもりも更々無いし」


「はっ! まだ言うか。いいぜ、そこまで言うんならぶっ殺してやるよ!」


 両手剣を構えた玲奈が、大神君に向かって剣スキルの戦技・スラッシュを放ってくる。

 それと同時に、後ろに控えていた2人が呪文を唱えてくる。

 2人同時相手だけど何の問題もない。魔法職はその特性上どうしても呪文の詠唱が必要になってくる。

 だけどあたしにはその枷がない。

 大神君と並んでのチートスキル、詠唱破棄スキルがあるからだ。


 彼女たちの唱える呪文を聞いて、飛んでくる魔法を予測する。

 飛んでくるのは氷の槍と聖光の散弾。

 これなら目の前に石の壁を盾にして、その向こうに風の空間一点発動型の魔法を放つことが出来る。


「アイシクルランス!」


「ホーリーブラスト!」


「ストーンウォール! サイクロンバースト!」


 2人は目の前に放たれた空間一点発動型魔法に慌てて距離を取る。

 後衛職の為か、十分な距離を取れずあたしの放った魔法に巻き込まれHPを削られる。


 ああ、強力な魔法は使えない。下手をすれば逆にあたし達がPKすることになってしまう。


「くっ! ホーミングボルト!」


 司祭(クレリック)が無属性魔法の自動追尾弾を放つが、あたしはすぐさま同じ魔法を放ち迎撃する。


「ホーミングボルト!」


「ちょっと! なんなのあいつ! 呪文詠唱無しで魔法を使ってるよ!?」


「呪文詠唱無しってありえないでしょ! 多分チャージアイテムを使っているのよ!」


 チャージアイテムとは1つだけ魔法を封じておき、好きな時に合言葉で放つことが出来るアイテムだ。

 ただしその便利すぎるためか、生産には莫大なアイテムやらレアアイテムやらが必要になるため、生産数が少ない。

 なので、購入金額もめちゃくちゃ高い。そう簡単に手に入れらるアイテムではない。


 1回ならともかく、何度も魔法使ってるのに何でその考えになんだろうなぁ。

 普通はスキルを疑うものなんだけど。

 そう思っていると彼女たちはボールのようなアイテムを取り出す。


「だったらこっちもお返しして上げるよ!」


「このアイテムの分、キッチリ分捕ってあげる!」


 キーワードを言いながら持っているボールをあたしに向ける。

 ああ、あれがそのチャージアイテムなのね。

 自分たちが持ってるからその思考に陥るのか。


 ボールから雷の空間一点発動型魔法と風の空間一点発動型魔法が、あたしの目の前に現れる。

 それと同時に彼女たちからも魔法が放たれる。


「ファイヤージャベリン!」


「ファイヤーブラスト!」


 炎の槍と炎の散弾があたしに向かって来る。

 複数の魔法の同時攻撃か。普通なら魔法で迎撃するのは難しいだろうね。

 向こうでは彼女たちのドヤ顔が見える。


 空間一点発動型魔法は開放型にしろ圧縮型にしろその特性上、空間に発動点を決めた後完全に効力を発揮するには1・2秒のタイムラグがある。

 その効力発揮前に、発動点に別の魔法に被せられるとかき消されてしまうという弱点がある。

 普通ならお互いに呪文を詠唱し合ってるのでタイミングを合わせるのが難しいので不可能だけど、あたしには何の問題もない。


「ウォーターボール! ストーンブリット!」


 まずは目の前の雷と風の空間一点発動型魔法を、水と石の弾でかき消しそのまま彼女たちに向かって放つ。

 次に迫りくる炎の槍と散弾は、1回の戦闘でしか使えないからちょっと惜しいけど、無属性魔法の完全魔法防御盾で防ぐ。


「マジックシールド!」


 そして追撃の聖属性魔法を放つ。


「ホーリーライト!」


 これで彼女たちの邪悪な心を消し去ってくれればいいんだけど、残念ながらこの魔法にはそこまでの力は無い。

 ただ単純にアンデットや悪魔族以外には普通のダメージが当たるくらいだ。


「うそでしょ!? まだチャージアイテムを持ってるって言うの!?」


 手加減された攻撃を受けて、彼女たちはあたしの連続魔法に驚愕していた。


 バキィィィン!


 音のする方を見ると、向こうでは大神君が玲奈の両手剣を砕いていた。


「なっ!? 魔法剣!? こ、こいつ本物なのか!? ルミア! こいつらを痺れさせろ!」


 今さら気が付いたのか、玲奈は大神君を驚愕の表情で見ていた。が、すぐに気を取り直し司祭(クレリック)に指示を出す。


「パラライズミスト!」


 司祭(クレリック)のルミアが水属性魔法の麻痺毒の霧の魔法を放つ。

 この霧は低確率ではあるが毒2状態――麻痺毒――に掛かる恐れがあるけど、霧である以上簡単に吹き飛ばすことも可能だ。


「サイクロンバースト!」


 あたしは再び風の空間一点発動型魔法を、霧の発生している空間に発動させ吹き飛ばす。

 それと同時に起きた暴風で玲奈たちが吹き飛ばされると、大神君はその隙をついて彼女たちに近づき麻痺効果がある雷属性の魔法を放つ。


「スタンボルト・トリプルブースト!」


 効果を上げるためか、輪唱呪文でブーストを掛けていた。



「ぐぅ!」


 玲奈は上手い具合に麻痺状態にかかり、大神君は残りの2人もすぐさま麻痺状態にして動きを封じた。


「ふぅ、とりあえずムカついたからぶちのめしたけど、こいつらどうしよ?」


 確かにこの状態のままだとすぐ麻痺効果が切れてしまう。

 なので、あたしはアイテムストレージからロープを取出し彼女たちを縛り上げる。


「随分と準備がいいのね・・・」


「冒険者ギルドではモンスターの捕獲もあったりするから常備してるのよ。ほらそっちも縛り上げてね。口も塞ぐのも忘れないでよ」


 大神君が何かあたしを変な目で見てくる。

 やだ、言っとくけどそんな趣味は無いよ?


「さて・・・、改めてどうしよ?」


「うーん、あまり気が進まないけどギルド『軍』に引き取ってもらいましょう」


 あたしは知り合いの『軍』のプレイヤーにメールを送る。

 大神君も『軍』の評判を聞いてるみたいで、あまりいい顔をしなかった。


「全部が全部あんなのじゃないわよ。少なくともあたしの知り合いはまともだよ。でなければギルドとしても立ち回っていかれないわ」


 あたしの連絡したメールはすぐ返事が返ってきた。

 何でも今丁度ウエストシティにいるらしく、すぐさま魔の荒野まで来るとの事だ。


 暫くすると馬車を引き連れた3人組のPTが現れる。


「ベル、久しぶり。突然のメールが来たと思ったら、まさか噂の舞姫親衛隊を捕まえただなんてね。びっくりしたわよ」


 PTリーダーの騎士(ナイト)があたしに話しかけてくる。


「リリア、久しぶり。まぁ、ちょっとした成り行きでね。なにせこっちには本物の舞姫様が居たからそれでからまれちゃってね」


 あたしがそう言って目線で大神君を差すとリリアは驚愕の表情をする。


「へぇ、彼女が噂の剣の舞姫(ソードダンサー)ね。当初の予定通り、いろんなところに人脈を作ってるみたいだね」


 彼女にギルド『軍』に誘われたこともあったけど、その時は色んな人と縁を結びたいということで誘いを断っていたのだ。


「じゃあ、この人たちはあたし達が責任を持って連れて行くね。それと掲示板にも親衛隊の事を載せておくね」


「うん、お願いね。ああ、それと舞姫親衛隊で悪い噂の元は彼女たちだけだから、元隊長の舞子って子ともう1人のメンバーは何の関係もないからそこのところは注意してね。

 まぁ、いろんな人に迷惑をかけたことは事実で自業自得なんだけど」


 リリアは「わかったわ」と言って、玲奈たち3人を馬車に乗せウエストシティに戻っていった。

 あたし達はそのまま経験値&資金稼ぎに精を出し、キリのいいところでウエストシティに帰還した。

 実は親衛隊のPK事件は解決したけど、舞姫様Loveはまだ解決していなかったりするんだよね。

 そのことを知るのは、次の人ある人の突撃訪問だったりする。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 あたし達は再び『リザードの王』に挑戦する為、サンオウの森に居る。

 舞姫親衛隊のPK事件などがあったけど、その後は順調に経験値稼ぎと資金集めをした。

 問題となっていた臨時PTは3人が加入しあっさりと解決した。


 1人目はPK事件のあったその日の夜、大神君が地雷職と罵声を浴びせられている弓道士(アーチャー)のクリストファーを助けてスカウトしてきたのだ。


 弓はWeb小説とかであるように命中率が低いことで、弓道士(アーチャー)は地雷職扱いされている。

 静止状態での射的ならまだいいけど、戦闘状態での命中率は限りなく低いのだ。

 オープンβの時には実際に弓道をやっていた人が弓を扱ってみたが、ゲーム補正により命中率が上がっているものの、それでも当たらないという情報が流れている。


 今では弓道士(アーチャー)と言うだけで馬鹿にされる始末だ。

 だけど大神君は「地雷は職が決めるんじゃなく、人で決まるんだ」って言って、馬鹿にしてる人たちを黙らせた。

 何せ剣の舞姫(ソードダンサー)の大神君が、同じ地雷職と言われている魔術剣士(マジックソード)だったりするから説得力がある。


 そんな経緯で弓道士(アーチャー)を大神君は仲間に入れたのだけど、実は思いのほかクリス(クリストファー)は実力があった。

 命中率がないと言われているにも拘らず、クリストファーの弓は当たりまくるのだ。

 それも動き回っているモンスターの目とか、振り回している武器とかをほぼ100%の命中率で。

 クリス曰く、「狩人(ハンター)の職になった時に弓を馬鹿にされたので、むきになって死ぬほど練習した」との事だ。

 その甲斐あってか、彼の弓は今では超一流と呼ばれるほどの腕前になっている。

 その彼のPTへの加入は十分なほどの戦力になっていた。


 2人目のPT加入者は、元舞姫親衛隊の隊長の舞子だった。

 PK事件のあった翌日に、わざわざ謝罪に来たのだ。

 隊長をやっていたにも拘らず、隊員の管理が出来ていなかったからだと。

 そして謝罪ついでに、PTの募集があったからお詫びも兼ねてあたし達に協力したいと申し出たのだ。

 あたし達のPTには前衛がいなかったから、騎士(ナイト)である舞子が加入してくれるのはありがたかった。


 あとそれと、大神君の大ファンである舞子は大神君こと剣の舞姫(ソードダンサー)をお姉様と呼んでいる。

 大神君も流石にそれは恥ずかしかったのか、舞子に呼び方を買えるように言ったのだけど・・・


「お姉様って、わたし?」


「はい! お姉様の事です!」


「・・・お姉様って呼ぶのやめない?」


「いえ! お姉様はお姉様です!」


「・・・わたしが命令しても?」


「はい! お姉様はお姉様です!」


 と、頑として聞き入れなかった。

 そう言えば、PKを起こした時に玲奈が「舞子は馬鹿だから」と言っていたけど、このやり取りを見ると何となく分かるような気がする。


 3人目のPT加入者は、昨日の今日で舞子と一緒にPTを組んでいた侍職の天夜と言うプレイヤーだった。

 天夜曰く、「こいつ馬鹿だからな。なんつーか、見てないと危なっかしくて」と。

 親衛隊を解散した後、同じ舞姫信者と言う事で知り合ったみたいだけど、舞子の相手をしているうちに馬鹿さ加減に呆れながらもほっとけなかったらしい。

 本人は気が付いていないみたいだけど、天夜は舞子に恋心を抱いているとあたしは見る。

 まぁ、そのことを指摘しようものなら全力で否定すると思うから今はまだ言わないけど。


 そんなわけで『リザードの王』に挑む臨時PTが揃った。

 目標だった気配探知と魔力探知スキルは、クリスと舞子がスキルブックを持っていたのであっさり解決した。


 なので、せっかく集めた資金を『リザードの王』に挑戦するための装備を揃えることにした。

 装備を揃えるためにあたし達は王都のプレイヤー経営のお店に向かったのだけど、大神君が連れてきてくれたお店は、なんと王都でも有名な朝霧さんのお店だった。

 彼女は基本的には防具を中心に販売しているのだけど、気に入った人にはオーダーメイドで何でも(・・・)作ってくれるのだ。

 そう、武器・防具・服・装飾品・薬・食事など生産関係はどんなものでも作れてしまうという、スーパー生産者だったりする。

 何で朝霧さんと仲がいいのか大神君に聞いたところ、初日に知り合ったからじゃない?とは言っていた。

 けど、朝霧さんの態度を見るからに大神君は余ほど気に入られてたからだと思う。


 そんなわけで朝霧さんのお店で装備を一新したんだけど、流石スーパー生産者。装備のレベルが格段に上がった。

 防具のほとんどがミスリル素材とドラゴンレザーだったり。

 武器に関してはまだ市場には流通していないウーツ鋼を使った刀だったり、ミスリルウッドを使った弓だったりととんでもない物ばかりだった。





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