物書きの苦悩
私は小説家である。
私が最初に物語を書いたのは、4歳の頃だった
それは、稚拙でくだらないが、夢や希望はだけはあふれている、ファンタジー作品だった。
まぁ、正直小説としては成り立っていなかった。
それでも、それを楽しんでくれた両親や、友達の反応が私の小説家としての道を決定付けたと思う。
だが今、私は危機に直面している。
ひどく単純な危機である。ネタが出ないのだ。
それは単純であるが、小説家である私にとっては何よりも耐えがたい苦痛である。
もうしばらく新作を書いていない。
何も思い浮かばないのだ。
空を舞う竜。魔王を倒す勇者。お姫様を呪う魔女さえ。
そしてそれはファンタジーだけではない。
甘い青春、人生の苦悩といった現実にもあるような話も、難解なトリックを用いた推理モノも。
文学作品なんて話にもならない。
しかも私はそれだけではない。文法や言葉、起承転結
小説、それにかかわるものすべてがぐちゃぐちゃになってしまっている。
紙に向かっていると、筆が、腕が、指先が止まってしまうのだ。
『あ・い・う・え・お』・・・なんてことはない、ただの『ひらがな』程度なら書ける。
だが、言葉を、文を、漢字を書こうとすると、やはり筆が動かない。脳が思考停止である。
困った。どうすればいいのだろう。
私は仲の良い友人に相談もしてみた。
すると返事はこうだ。
「おまえ、いつまでそんなマンガみたいなことをいってるんだ?いい加減そんなの卒業しなよ」
ふざけるな。そんな現実主義はいらない。
魔王はいやだが、空を飛ぶ馬や魔法の実在を夢見て何が悪い。
なんならサンタクロースだって信じてやるさ。
それに、私が小説を書けないことは私だけの問題ではない。
私のことを気遣ってくれ、差し入れをくれたり、色々と面倒をみてくれるミナコさんにも申し訳が無い。
ミナコさんは私のファンであり、嬉しい事に私のサインを大事に飾ってくれているそうだ。
そして、その、とてもキレイで、正直私は彼女のことが好きである。
気持ちを告げる勇気は無いのだが、彼女も気づいている。とても恥ずかしい。
まぁ、それは今いい。私は今日も机に向かい、小説を書こうと必死だ。
他にすることもあるのだが、気づくと机で小説のことであせるばかりだ。
どうすればいいのだろう・・・だめだ、今日も浮かばない!!私には時間が無いのに!
ピンポーン
「はいはーい、あ、ミナ?いらっしゃい。今日は忙しいのにごめんねー」
「いやいや、いいのいいの、あ、これお土産ね。さーて、たー君はどこかなー」
「今日も宿題しないくせに机にかじりついてるわ。悪いねー息子の勉強頼んじゃって」
「なに言ってるの義姉さん。小学校の問題ぐらいいくらでも任せてよ。それにたー君の『小説』も楽しみだから。夏休みの宿題出てから手付かずらしいじゃない。ファンとしては協力しないとね!」
・・・終わった。
今日からはもう勉強で、話を作る時間は無いだろう・・・。
追い打ちのように母が私を呼ぶ声が聞こえる
「たかひろー!大好きなミナコおばちゃんきたわよー。シュークリームもあるから来なさーい!」
「・・・はーい!いまいくー!」
「おばちゃんじゃない、まだおねーさん!」
そう、私・・・いや、ボクは、7歳の小説家である。
早く宿題を終わらせてスランプを脱しないと。
小学生もなかなか大変だ。シュークリームおいしい。
じつは、お話書いたことなんて無い。
よくわからないものが出来ました。
読んでくれたかたに感謝。