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オフ  作者: だんぞう
6/21

#6

 

 

 ♪チャラッチャッチャラーチャッチャー チャチャチャ チャラーラ チャラーラ チャラーラ

 

 携帯に次々と着信するメールを、俺は開けないでいた。アッツの様子がおかしいのに目を奪われていたから。

 アッツは首を横に何度も振っている。涙を流しながら。

 サイレンがだんだん近づいてくる。

 

 次の瞬間だった。

 アッツは絶叫のような雄叫びを上げ、手すりから飛び降……ちょ!

 

「アッツ!」

 俺は慌てて手すりから身を乗り出して一階を見る。アッツは足を引きずりながら道のほうへ戻ろうとしている……逃げ出そうと?

 もう一度振り返って203号室の扉を見つめる。さっきまでと変わらない……「血の匂い」っつう臭いも。

 あ、違う。変わっているところがあった。

 

 扉の前に何か落ちている。ビニール袋に入った……何か。そんなに大きなものじゃないけれど。それと、鍵も。

 

 ついフラフラと近づこうとした俺を、両側の二人が止めた。

「ダメ、近づいちゃダメ。いったん離れましょ。警察呼んだから」

 【チョコ☆ラヴ】さんにうながされるまま俺たちはアパートの前まで戻り、警察の到着を待った。アッツの姿はもう見えなかった。

 

 警官やアパートの大屋さんに二人がいろいろ説明している。

 俺は情けないことにパトカーの陰でうずくまっていた。

 気分の悪さを地面に説明しちゃわないようこらえていると、二人が戻ってきた。

 

「男ってほんと血に弱いよね」

「流しなれてないからね」

 うす怖コミュの雑談のように下ネタを明るく話し出す二人。でもその手はずっと俺の背中をさすってくれていて。

 そうやって俺の気持ちを落ち着けようとしてくれていたのかも。

 

 でも、二人の気遣いを越えて、俺の耳には【CRY】の部屋に今あるものが情報として入ってきた。

 警察の人って声デカいよな。

 

 俺の下らないアイディアから始まった事件は、いつの間にか俺を置き去りにして俺の周りだけで進んでいる。

 情けないし悔しいし……それにアッツ……まさか。そんな。

 

 

 

 

 

「悪かったな」

 

 それが再会後のアッツの第一声だった。警察から電話がかかってきたってことで職場は午後から休むことが出来た。

 まあ、もとより一睡もできなかったんだ。仕事にはならなかったけれどね。

 

 アッツを見つめる。

 だが、視線は合わせようとしない。

 

 留置場の面会室なんて初めて来たけれど、本当にドラマのセットかってくらいTVの中とそのまんま。

「いや、俺こそ……ごめん」

 俺も、この言葉を言いたかった。もとはと言えば俺があんなイベントを……それを言おうとする俺を遮ってアッツはまた口を開いた。

「いや、お前は悪くないんだ。遅かれ早かれこうなっていたんだよ」

 ……どういうことだ?

 悪くないと言われたからって自分の責任が軽くなったなんてすぐに喜べるような俺でもないし、アッツは責任をなすりつけて放っておけるような相手でもない。一緒にどれだけバカやってきたと思ってるんだ。

 それよりも何が起きたのか、何がアッツを変えたのか知りたかった。

 

 昨日、遅くまで警察署で事情聴取があって帰宅して。昨晩からアッツには何度も連絡取ろうとしたがつながらなかった。そして行方不明だったアッツが出頭してきたのは今日の昼前。

「……聞いて、いいのか? 何があったのか」

「もちろんだ。というより、誰よりもお前に話したかったんだ。知ってもらいたかったんだ。自分のせいで事件が起きたと思っているお前に」

 

 俺のせいじゃない?

 そう言われてハイそうですかラッキーもう安心なんて考える俺じゃないのは知っているだろ? アッツ。

「話してくれよ」

 

 相変わらず視線は合わせないまま、だがその瞳に涙をにじませながら、アッツは語りはじめた。

「まずその前にオレのハンドルの由来、もう一度話しとかないといけない」

「カレンダーZか……昔のオンナの名前がこよみで、Zはアッツの愛車のZ2だろ?」

 アッツは静かにうなずいた。

 

 俺とアッツが出会ったのは高校二年になってから。クラス替えで前後の席になって話をするようになって、それから。

 その時にはアッツはもう「女嫌い」で通っていた。

 高校時代は全然教えてくれなかったその理由を、高校卒業してから俺は教えてもらった。それが「こよみっていう昔のオンナに操を立てている」って一言だ。誰にも言わないでくれっていう注釈付きだったからそれ以上は聞いていない。

 

「中学の頃さ、オレはけっこうヤンチャしてたグループに居てさ。けっこうモテたし調子にのってたし女遊びも派手だった。ヤンキー限定だけどな……んで、あるとき仲間内で一つのゲームがはじまったんだ」

 

 

 


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