#21
翌朝、警察から連絡があった。
アッツの親父さんの死体が見つかったとのこと。死亡時刻はあのオフの後、そしてアッツが警察に「話したいことがある」と出頭する前のこと。
アッツは【CRY】の事件については俺たちが無関係であることを告げるために、親父さんを殺したあとでわざわざ警察へと行ったのではないか、と、後藤さんが刑事としての見解を教えてくれた。
そんなことを聞かされてもまだ、なかなか信じることが出来ない現実。
悲嘆にくれている俺を【チョコ★ラブ】さんが慰めてくれて。
んで。
なぜか今、うちには彼女のハンカチではなく替えの下着が置いてあったり。
なんだよ。ドラマチック過ぎるだろ。
俺の人生……「作品」は出来過ぎじゃないか。
結局、アッツの話は、彼女にも、警察にも、コミュの誰にも話していない。
でも、伝えなきゃいけない。
これを読んでいる君に。
俺の彼女。【チョコ★ラブ】。そう、明日佳。君にだよ。
あの二回目のオフの夜。
一睡もできなかったんだ。
でもね、血の臭いはずっとまとわりついていた。俺のまわりに。
翌日仕事に行って、警察に呼び出されて、アッツの話を聞いて、君のお兄さんたちにも事情聴取を受けて、アッツが死んで。
眠れなかった。
翌日、君が来てくれた。
体調を悪いのにそれを押して来てくれた。
うれしかった。
あの日の夜、君が帰ったあと、疲れが出たのかな。
俺は眠れたんだ。
そしたらね。俺も「夢」を観たんだ。
殺される夢だ。
起きてすぐにわかった。気付いた。アッツや【CRY】が命がけで止めようとした呪われた血。
俺、どうして、そんな?
そういや……輸血。アッツの親父さんのパターンだ。
俺、高校時代、バイクで事故ってさ。そんとき、輸血したんだよ。
それしか考えられない。
ある意味、すげーよ。この呪い。繁殖力っていうかさ。
【CRY】やアッツが一生懸命、自分たちの命をかけてまで閉ざそうとした呪い。まんまと出回ってるのな。
自滅するか、【CRY】が殺すかする前の誰か……台所の海苔の缶の中に隠してある「記録」の誰か……そいつが献血しちゃったんだとしか考えられない。
俺も、死ななきゃなのかな、って正直思った。
でもそれは不思議と怖くなかった。「夢」の中で一度殺されたからかな。
ただ、怖いのは献血だよね。出回っているんだもん。
呪いがどこまで連鎖するかなんて分からない。
実際、薄まっている気はするんだ。だって、俺、殺意はそんなに強くなかった。異物感というか気持ち悪さのほうが大きくて。あのアパートでも、一昨日の夜も。
そうそう、一昨日の夜。
明日佳さ、生理だったろ?
そんでうちのトイレに入っただろ?
不思議とね、その「臭い」が残っていたんだ。鼻が敏感になったのかな。
【CRY】のアパートで嗅いだ臭いと同じ種類の臭い。
ムカムカと自分の中がひっくり返ってどうにかなりそうな。
俺さ、明日佳に聞いたじゃん。大きな事故とかって経験ある? って。
良かったよ。
明日佳のご両親やお兄さんを殺さないで済んで。
明日佳の中に入った輸血の血液は、俺の中に入った血と一緒なのかな。なんかこう「家族」みたいだよな。
結婚とかしたかった。でも、なんか、明日佳と家族なんだって思えたら、ちょっと救われる。
ね、明日佳。
まだ、聞こえる?
俺も一緒にいくよ。寂しくさせない。
献血された血液のことは、警察にまかせようね。
今、俺たちは、とある湖の畔に居ます。
そうです、お兄さんたちが十年前に家族旅行で訪れた青の綺麗な十和田の畔に。
睡眠薬を飲んだ明日佳は、完全に寝たみたい。
明日佳を苦しませたくないから、念のためにもうちょっとだけ経ってからアクセルを踏むことにします。
この書き溜めておいた21通のメールを、お兄さんのアドレスに送ったあとは電源を切ります。
すみません。
事後承諾……いや、認めてもらえないとは思いますが、明日佳さんを、もらいます。
俺たちの「作品」を、ここまで読んでくださってありがとうございます。
あとはよろしくお願いします。
(OFF)




