#19
『お前がこれを見ている頃にはオレは多分、こよみのそばに逝っているだろう。
まだ見ぬ我が子もそこに居る気がする。
これから死ぬってのに嬉しい気持ちが大きいなんて、変だよな。
すまん。話を戻す。
こよみは小さい頃から悪夢をよく見ると言っていた。
どんな? って聞いても、キモチワルイだけの夢、としか答えなかった。
オレに何か出来ないのかって尋ねたこともあるけれど、だいじょうぶ、としか答えなかった。
唯一、こよみがオレについていた嘘だったことに、英都の話を聞いて気付いた。
こよみはある意味では悪夢から解放されたのだと、今は思うようにしている。
英都が出来る限り事件にならぬよう、事故でおさまるように気を使ったのは、捕まらないためじゃない。
呪われた血に関わった他人……つまり母親や祖母、外から入ってきた人が、呪いの一族として噂により傷つけられることのないようにというものだった。』
そのまま五枚目へ。
『だから自分の最期も、出来るだけつまらなく、矮小な人間の自殺みたいに作りあげたい、と。
それが「作品なんだ」と語ってくれた。
ただもしも、もしも何かの手違いで、英都が単なる殺人鬼のように報道されるようなことがあったら……そして、何よりも絶ち漏らしていたら……
そのために、英都の「記録」の中から手紙だけをアップしておいた。読んでもいいし、読まなくてもいい。
だがもし読む覚悟が出来たのなら、オレの手紙の次のページを読む前に、英都の手紙を読んでくれ。
二人目のCRYのフォトアルバム。パスワードは「koyomi」だ。
ひょっとしたら警察は解読するかもしれない。でも、オレはそれでもいいと思っている。だってそうじゃなきゃオレの
いや、先にしとく話がある。
とにかくオレは、英都の気持ちを無視してまで手紙をアップしておいた。必要なんだ。
オレの推測が確かなら。
見たか?
今、見るんだ。フォトアルバムの、英都の手紙。』
昼間見たやつ、だよな。
アッツの言う通り、このタイミングで改めて読んだ。警察で見せられたテキストの通りだった。
もうこの世には居ない親友の手紙。
このまま読み進めて本当にすっきりするのだろうか。
いや、次だ。とにかく次を読もう。六枚目。
『お前にこんなこと託しちまうのは本当に申し訳ないと思っている。
でもオレはもうすぐ死を選ぶ。選ぶしかないんだ。
無関係なお前にしか任せられないんだ。
なあ、オレが親父にDVを受けてたの、話したことなかったよな?
これが読まれる頃、オレは多分、親父を殺している。
多分、お前は朝はこれに気付かないだろうけど、とめないでくれよ。
オレは小さな頃からずっとDVに悩まされ続けてきた。
オレも、お袋も。
そのくせ、暴力のあとはいつも必死に謝るんだ。謝るなら最初からやるなよってんだ……それ言ったら次のDVが激しさ増したけどな。
だけどひっかかっていたこともある。
親父はよく悪夢を見ていた。寝言で「殺さないでくれ」って言ってるんだよ。
あんだけ酷い暴力を周りにふるってりゃそりゃ仕返しで殺されてもおかしくない。いや、むしろオレが殺してやる、くらいに思ってたんだ。
でもな。英都の話を聞いて、英都の最期の作品作りを手伝うよう頼まれて、その死に立ち会って……オレは気づいた。
オレにも呪いの血が流れている、って。
あの日、英都が「自殺」した時のことだよ。
英都の血の臭いを嗅いだとき、無性に人を殺したくなった……そして確信した。
オフ会の日から次のオフまでの三日間、オレは親父を殺す準備をしていたんだ。
オレはお袋にいろいろ聞いてみた。そしたらわかったことがある。』
ちょ……え?
親父さん?
えっと……え? 殺……。
俺は慌てて次の頁を読み始めた。




