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オフ  作者: だんぞう
17/21

#17

 

 後藤さんの顔を見ると、『二枚目の手紙.txt』を開いてくれる。

 

 

 

『ぼくが最初に手をかけたのは大好きなお姉ちゃん。

本当は最後の一つ前、僕の死ぬ直前に殺す予定だった。

でも、お姉ちゃんは子どもができてしまった。

だめだ。呪われた血を絶たないといけない。

殺し方はいくつか知っていた。

父のパソコンでいろいろ調べて……思えばこれも呪われた血のせいなのかな。

ぼくの甥か姪になるはずだったお姉ちゃんのお腹の子も一緒に殺した。

この子が生まれたら、また怖い夢をたくさん見て

そして誰かを傷つけちゃうんだ。

そんなことさせないために。

 

引っ越した。

父は保身ばかり。

でもなんで父は人を殺さないのか……僕は仮説をたてた。

虫とかを踏み潰せばイライラがおさまる。

野良猫を殺せば、怖い夢はちょっとだけおさまる。

父が無事なのは、産婦人科をやっているから。

こっそり堕胎を引き受けているから。

呪われていない親の呪われていない赤ちゃんを

しょっちゅう殺しているから。

でもそのおかげで、僕もお姉ちゃんも殺されずに大きくなれたのかも。

 

身内は全員疑ったほうがいい。

父の父の父の血を継ぐ者を全員断つには

遠いところからやっていかないとダメだ。

事故に見せかける方法も。

探そう。たくさん学ぼう。殺す方法も。』

 

 

 

 また、後藤さんの顔を見て、『三枚目の手紙.txt』を開いてもらう。

 

 

 

『とうとう父も片付けた。

事故に見せかけたが不安だ。

他の親戚もなんとか全部断てたはず。

とはいっても呪われた血のせいか、

ほとんどは勝手に死んでいた。

ぼくはつかまるかもしれない。

つかまるのは構わない。

死刑になりたい。

でも

ぼくのやっていることは異常に見える。

そうすると死刑にならないかもしれない。

 

やはり自分で死ぬしかないか。

でも怖い。

死ぬのが怖いんじゃない。

呪われた血を残してしまっていないかどうかを……

 

母さんはとっくの昔に出て行った。

理由は暴力。

よかった、浮気じゃなくて。

父さんは隠し子なんて作ってないよね?』

 

 

 

 ……そこで終わっていた。

 読み終わりはしたが、しばらく呆然とした。

 

 【CRY】が……これ、物語じゃなくて、本当の?

 そんなこと確かめる術なんてないけれど……【CRY】がアッツに話した内容……の、裏側?

 混乱の中にいくつもの言葉と感情がうごめく。

 死、自殺、呪い、殺人……こんなコミュに参加しているくらいだから、この手のテーマはいくつも目にしたり、自分で扱ったことだってある。

 でも、なんだろう。この淡々としている現実離れしている物語が、事実だと言われている、この……納得できない感じ。

 急に鳥肌が立った。

 【CRY】の家の前で嗅いだあの気持ち悪い血の臭いを思い出す……あれが呪いの血の……?

 臭いも、寒気も、渇いた口の中の干からびた味、走って居なくなる直前の【CRY】の顔……そしてアッツが二階の通路から飛び降りた時のあの顔。

 残っている記憶。残っている物語。自分の五感の中に、思考の中に、死がまとわりついている。

 

 ああでも自殺か。アッツの無実は確定なのかな。必死に「救い」を探そうとする……けれど、虚しい気持ちしかつかめない。

 

「筆跡は、藤堂英都本人のものだ。間違いない」

 その言葉にほっとした俺の心臓は、勢いよく開け放たれたドアを開く音に押し出されそうになった。

 

「た、大変です! 高田篤春が!」

 スーツ姿の若い男が突然飛び込んできた。そして俺を見て口をつぐむ。

 

「何があった?」

 山下さんが切り返す。若い男の耳打ちを受け……表情が厳しさを増した。

「半分は一緒に来い」

 部屋に残ったのは後藤さんともう一人だけだった。

 

「……あの、俺は……」

 後藤さんの顔を見る。後藤さんも耳打ちをされていた。

「……ちょ、ちょっと待っていてくれ」

 なにか動揺している様子。

 すごく嫌な予感がする。

 

 また、後藤さんが口を開く。

 だけど。

 

「悪いが、指示があるまでは伝えることはできない」

 そう言った後藤さんの表情は、さっきの山下さん以上に厳しく、何かに耐えるように歪んでいた。

 

 

 

 アッツが、監視の一瞬の隙をついて自殺に成功したということを、俺たちは一時間後に知らされた。トイレに行った時に毒を飲んだのだとか。

 あいつがどうしてそんな毒なんてものを入手出来たのかはわからない。というか、無実なのに、なぜ?

 何が起きているのかもわからない。

 え?

 死んだ?

 アッツが?

 いったい、なんなんだってんだよ。

 

 

 


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