#15
逮捕したいのは……アッツを?
俺の表情を読んだのか、山下さんは真顔になった。
「むしろ逆だ。君らの友人、【カレンダーZ】こと高田篤春が藤堂英都の死に関わっていないことを証明したい」
ほ、ほんとに?
っつーか、俺、バレバレ?
「藤堂英都に刺さっている包丁は司法解剖の結果、自分で刺した可能性が高いとのことなんだ」
……司法解剖すげー。
「だがね。どうして、高田君があんな偽装をしたのかが分からない」
偽装……アッツが【CRY】の「作品」を手伝った理由……俺が言うべきじゃないよな。きっとアッツは自分で言う。それに、細かいニュアンスも違っちゃいそうだし。
「彼は藤堂英都が使っていた携帯電話を……藤堂英都の指紋しかついていないものを所持していた」
「昨晩、藤堂英都の遺体が発見された部屋のドアの前にビニール袋に入った携帯電話が落ちていた。それは、君も見ていましたか?」
「はい。アッツ……篤春は……鍵を開けようとしていました」
でも鍵はなかなか開かなかった。あれはわざとではなく……焦っていた? 何に?
しかも飛び降りたのも。何から逃げようとしたのか……
「あ、鍵を開けようとしたときは両手でした。片手ではうまく鍵穴に入らなかったのか、自分の右手を左手で押さえつけるようにして両手でこう……」
「両手? それが……」
「篤春が【CRY】の携帯で俺にメールしてたのだとしたら、あいつが両手で鍵を開けようとしていたときは……じゃあ、誰が?」
アッツに共犯者が? だいたい俺のとこに届いていたメールが【CRY】の携帯から出されたものだっていう確証はまだないんだ。
「ふむ。なるほど。それは共犯者が居るかもしれないという可能性につながる……悪いが君の携帯、見せてもらってもよいかね?」
「あ、はい……」
俺はポケットから携帯を取り出す。昨日の夜、背中をさすられてちょっと落ち着いた後、【チョコ☆ラヴ】さんと【ポポン】さんと一緒に見た連続メールは、同じ内容だった。「くらい」とだけ書かれたメールが何通も。
昨日見たメールを探す。
「え?」
「どうしたのかね?」
「あれ……? ないです。アッツが鍵を開けている時に何度も受信してたメールが……消してないのに……」
「ない? なんのメールがないのかね?」
「え、あ……あの」
山下さんの目つきが途端に厳しくなる。
……これヤバイのかな。証拠隠滅しようとしたわけじゃないんだよ。だけどさ……
「あの……篤春が鍵を開けようと両手を使っていたときに受信したはずの何通ものメールが……削除した覚えはないのに消えているんです」
後藤さんが慌てて横から俺の携帯画面を覗き込む。最後に受信したメールを開く。
『その右側のアパートの二階、一番奥の部屋です。洗濯機の下に鍵を隠してあるのでそれで開けて入って下さい。CRY』
そのあとに受信したはずの「くらい」としか書かれていないメール、そしてその後何度も連続で着信していたメールが全部ない。
「本当です。あったんです。昨晩【ポポン】さんと【チョコ☆ラヴ】さんと一緒に確認したんですよ!」
山下さんの目が怖い。
「山さん、僕も妹から昨日のうちに聞きました」
横から後藤さんがフォローしてくれる。
「本当に君は削除していないんですね?」
「はい。気持ち悪かったから消そうとも思ったんですけれど、一緒に確認した【チョコ☆ラヴ】さんに、何かで確認するかもしれないから消去はまだしないほうがいいって言われて……」
今思えば、身内に警察が居るからこその助言だったのかな。
「その時受信したメールアドレスは同じだったのですね?」
「はい。3人で確認しました。それまでのメールと違って【CRY】って署名がなかったから、余計にしっかり確認したんです」
「ありがとう。君が嘘をついているとは思っていない。機械は壊れることも故障することもあるだろう。ただ、証拠として採用はできないというだけのことだ」
山下さんは眉間にシワを寄せながらクリアファイルを取り出した。
何が書いてあるんだ?




