第5話「出陣」
決戦前夜。
学院は、静かだった。
「明日、出発だな」
「ええ」
「準備は、整った」
「あとは、戦うだけだ」
ルークは、部屋で最後の確認をしていた。
「武器、よし」
「防具、よし」
「薬、よし」
「全て、揃った」
扉が、ノックされた。
「入れ」
カイ、サラ、リオンが入ってきた。
「みんな、どうした」
「最後の夜だから」
「一緒に、過ごしたいと思って」
「......そうか」
四人は、テーブルを囲んだ。
「酒でも、飲むか」
「いいわね」
ルークが、酒を注いだ。
「乾杯」
「「「乾杯」」」
「明日から、戦いだな」
「ああ」
「勝てるわよね」
「勝つ」
「俺たちが、負けるはずがない」
「そうですね」
「俺たちは、強い」
「一人一人も強いが」
「四人揃えば、無敵だ」
「大げさですよ」
「大げさじゃない」
「本心だ」
「カイ、お前は成長した」
「今のお前は、俺が初めて会った時とは別人だ」
「ルーク......」
「サラ、お前も」
「外交の力で、連合を作ってくれた」
「お前がいなければ、今の戦力はなかった」
「ルーク......」
「リオン、お前も」
「訓練生たちを、立派に育ててくれた」
「お前の教え子が、明日戦う」
「ルーク様......」
「俺は、お前たちを誇りに思う」
「最高の仲間だ」
「「「......」」」
「泣くなよ」
「泣いてません」
「泣いてないわ」
「泣いて......いない」
みんな、目を潤ませていた。
「嘘つきばかりだな」
「ルークも、目が赤いですよ」
「......そうか」
しばらく、沈黙が続いた。
「明日、頑張ろう」
「ああ」
「俺たちなら、できる」
「深淵の本体だろうと」
「倒して、帰ってくる」
「そして、また酒を飲もう」
「約束だ」
「「「約束」」」
夜が、更けていった。
翌朝。
出陣の時が、来た。
「全軍、整列!」
「「「はい!」」」
五千人の兵士が、学院の前に並んでいた。
ルークが、壇上に立った。
「皆、聞いてくれ」
「今日、俺たちは戦場へ向かう」
「相手は、深淵の本体」
「史上最強の敵だ」
「だが、恐れることはない」
「俺たちは、一人じゃない」
「見ろ、これだけの仲間がいる」
「人間、エルフ、獣人」
「種族を超えて、集まってくれた」
「同じ目的のために」
「この世界を、守るために」
「俺たちは、負けない」
「絶対に」
「行くぞ!」
「「「おおおおお!」」」
大歓声が、響き渡った。
「出発!」
軍勢が、動き出した。
「いよいよだな」
「ええ」
「緊張しているか」
「少しね」
「俺も、だ」
「だが、やるしかない」
軍勢は、深淵の門へ向かって進んでいった。
三日後。
深淵の門に、到着した。
「ここが......」
「深淵の門か」
巨大な裂け目が、大地に開いていた。
黒い靄が、漂っている。
「気味が悪いな」
「ああ」
「あの中から、本体が出てくるのか」
「そうだ」
「陣を張れ!」
「「「はい!」」」
軍勢が、布陣した。
「第一部隊、正面」
「第二部隊、左翼」
「第三部隊、後方」
「カイは、俺の近くにいろ」
「分かりました」
「サラ、指揮所は」
「あそこよ」
高台に、指揮所が設けられた。
「全員、配置完了しました」
「よし」
「あとは、待つだけだ」
夜が、来た。
「今夜、来るのか」
「分からない」
「明日かもしれないし」
「今夜かもしれない」
「常に、警戒を怠るな」
「分かっています」
その夜は、何も起きなかった。
翌朝。
「動きがないな」
「ああ」
「焦らしているのか」
「かもしれない」
「だが、俺たちは待つ」
「準備は、できている」
その日の夕方。
空が、暗くなり始めた。
「来るぞ......」
深淵の門から、黒い気配が溢れ出した。
「全軍、戦闘準備!」
「「「はい!」」」
地面が、震え始めた。
「これは......」
深淵の門から──
巨大な影が、現れた。
「あれが......」
「深淵の本体......」
アザルの何十倍もの大きさ。
禍々しいオーラを、纏っている。
「でかい......」
「勝てるのか、あんなものに」
「勝つ」
ルークが、前に出た。
「俺たちは、勝つ」
「必ず」
「行くぞ!!」
「「「おおおおおお!!」」」
最後の戦いが──始まった。
次回予告
深淵の本体との戦いが始まる。
圧倒的な力の前に、苦戦を強いられる。
だが、諦めない──
第6話「絶望」
「強すぎる......」
「だが、俺たちは諦めない」
最強の敵──




