第15話「旧友との再会」
王都での停戦交渉が、始まっていた。
「教会派と、反教会派」
「両者を、同じテーブルに着かせる」
「簡単じゃないわね」
「ああ。だが、やるしかない」
「アルベルトが、仲介してくれる」
「彼は、両方に顔が利くの?」
「教会の改革派だ」
「教会派の中にも、彼を支持する者がいる」
「なるほど」
「うまくいくといいわね」
交渉の場。
「我々は、停戦を提案する」
アルベルトが、口火を切った。
「停戦? 今更か」
「お前たち反教会派は、我々に逆らった」
「許されることではない」
「逆らったのではない」
「大司教の暴走を、止めようとしただけだ」
「暴走? 大司教様は、正しいことをしていた」
「深淵王を制御し、世界を救おうとしていた」
「制御などできない」
「深淵王は、神に等しい存在だ」
「制御しようとすれば、我々が滅ぶだけだ」
「......」
「証拠が、ある」
ルークが、口を開いた。
「誰だ、お前は」
「ルーク・ギルバート」
「元学院の教官で、カイ・レイナーの師匠だ」
「ギルバート......反逆者か」
「そうだ。だが、今は関係ない」
「俺は、大陸連合から来た」
「深淵王を倒すための、協力を求めに」
「大陸連合だと?」
「彼らは、教会の敵だ」
「敵ではない」
「深淵王という、共通の敵がいる」
「それに立ち向かうために、協力すべきだ」
「......」
「信用できるか」
「信用するかどうかは、お前たちが決めろ」
「俺は、事実を伝えているだけだ」
「事実?」
「深淵王アザルは、完全に目覚めた」
「今も、力を蓄えている」
「このまま内戦を続ければ、王国は滅ぶ」
「......」
「それでも、内戦を続けるか」
「それとも、共に深淵王に立ち向かうか」
「選べ」
沈黙が、場を支配した。
「......」
「......」
「分かった」
教会派の代表が、口を開いた。
「停戦に、応じよう」
「本気か」
「ああ。深淵王の脅威は、我々も認識している」
「これ以上、内戦を続ける余裕はない」
「だが、条件がある」
「何だ」
「カイ・レイナーは、教会の管理下に置く」
「それは──」
「待て」
カイが、前に出た。
「カイ......」
「僕から、話させてください」
「僕は、誰の道具にもならない」
「でも、協力はします」
「協力?」
「深淵王を倒すために、僕の力を使います」
「でも、それは僕の意志で」
「誰かに管理されるのは、嫌です」
「僕は、自分で決めたい」
「......」
「生意気な......」
「だが、彼の力は必要だ」
「彼がいなければ、深淵王には勝てない」
「......分かった」
「管理は、諦める」
「だが、共に戦うことは、約束してもらう」
「約束します」
「僕は、深淵王を倒すまで戦います」
「よし」
「では、停戦成立だ」
「「「......」」」
停戦が、成立した。
「やったわね」
「ああ。第一歩だ」
「これで、深淵王との戦いに集中できる」
「まだ、課題は多いけど」
「一つずつ、解決していこう」
その夜。
ルークたちは、マーカスの拠点で休んでいた。
「疲れたな......」
「ああ。だが、前進した」
「ルーク様!」
突然、外から声が聞こえた。
「この声......」
「リオン......?」
リオンが、駆け込んできた。
「ルーク様! ご無事でしたか!」
「リオン......なぜ、ここに」
「お前は、大陸連合に残っているはずだろう」
「すみません......」
「でも、じっとしていられなくて......」
「ルーク様を追いかけてきました」
「一人で?」
「いえ、みんなと一緒です」
「みんな?」
「訓練生たち、全員です」
外を見ると、訓練生たちが集まっていた。
「「「ルーク様!」」」
「お前たち......」
「なぜ、来た」
「ルーク様がいない間、考えました」
「俺たちは、何のために訓練してきたのか」
「ルーク様と一緒に戦うためです」
「だから、来ました」
「馬鹿者」
「危険だと、分かっていただろう」
「分かっています」
「でも、俺たちはルーク様の部下です」
「一緒に戦いたいんです」
「......」
ルークは、黙っていた。
「ルーク」
サラが、ルークの肩に手を置いた。
「彼らの気持ち、分かるでしょう」
「......ああ」
「分かっている」
「お前たち......」
「ありがとう」
「ルーク様......」
「だが、俺の言うことは聞け」
「危険な時は、逃げろ」
「......分かりました」
「でも、できれば一緒に戦わせてください」
「......ああ」
「一緒に、戦おう」
「「「はい!」」」
「ルーク様」
リオンが、近づいてきた。
「一つ、報告があります」
「何だ」
「大陸連合から、援軍が来ています」
「援軍?」
「ヴィクトル陛下が、軍を派遣してくれました」
「王都の外で、待機しています」
「本当か......」
「陛下が......」
「彼も、この戦いに加わるつもりのようです」
「深淵王を倒すために」
「......」
「味方が、増えたな」
「はい」
「俺たちは、一人じゃありません」
ルークは、窓の外を見た。
空には、深淵の裂け目がまだ残っていた。
だが、今は──
希望が、見えていた。
「みんな、聞いてくれ」
「俺たちは、ここまで来た」
「多くの困難を、乗り越えてきた」
「これから、最後の戦いが始まる」
「深淵王アザルとの、決戦だ」
「怖いか」
「「「......」」」
「俺は、怖い」
「正直に言う」
「深淵王は、俺たちの想像を超える存在だ」
「だが、俺は諦めない」
「お前たちがいるから」
「仲間がいるから」
「俺たちは、最強のチームだ」
「何があっても、乗り越えられる」
「だから、俺についてきてくれ」
「一緒に、深淵王を倒そう」
「「「はい!!」」」
第4部は、ここで終わる。
学院の崩壊。亡命。王国への帰還。
多くのことが、あった。
だが、彼らは──諦めなかった。
仲間と共に、前に進み続けた。
「さあ、行こう」
「次の戦いへ」
「「「はい!」」」
深淵王との決戦が、近づいていた。
だが、彼らの目には──
希望の光が、宿っていた。
第4部「学院崩壊篇:早期覚醒と亡命」完結
第5部予告
深淵王との戦いに向けて、同盟が動き出す。
だが、敵は深淵王だけではなかった。
国境を越えた戦争が、始まろうとしていた──
第5部「国境戦争篇:同盟と裏切り」
「俺たちは、世界を救う」
「たとえ、どんな犠牲を払っても」
運命の歯車が、回り始める──




