第6話「決闘の舞台装置」
決闘まで、あと一週間。
ルークは、学院の図書館で古い書物を調べていた。
「決闘規定集......」
王立アストラ戦技学院には、決闘に関する細かい規定がある。
勝敗条件、禁止事項、審判の役割──全てが明文化されている。
「引き分けに持ち込むには、規定を熟知する必要がある」
ルークは、夜遅くまで書物を読み込んだ。
* * *
翌日。
秘密の稽古場所で、三人は会合を開いた。
「決闘の規定について、分かったことがある」
ルークは説明を始めた。
「通常の決闘では、勝敗条件は単純だ。相手を戦闘不能にするか、降参させれば勝ち」
「はい」
カイは頷いた。
「だが、それだと引き分けは発生しにくい」
「どういうことですか?」
「どちらかが勝つまで戦い続けることになる。引き分けになるのは、両者が同時に戦闘不能になった場合だけだ」
「それは難しいですね......」
「ああ。だから、勝敗条件を変える必要がある」
* * *
「変える?」
サラが尋ねた。
「どうやって?」
「決闘には、いくつかの形式がある」
ルークは指を立てた。
「一つ目は『殲滅戦』。相手を完全に倒すまで戦う」
「はい」
「二つ目は『得点戦』。制限時間内に多くのポイントを取った方が勝ち」
「なるほど」
「三つ目は『先取戦』。先に一定のポイントを取った方が勝ち」
「......」
「そして四つ目──」
ルークは微笑んだ。
「『証明戦』だ」
* * *
「証明戦?」
「ああ。これは特殊な形式だ」
ルークは説明した。
「証明戦では、勝敗を決めるのではなく、『どちらが優れているか』を判定する」
「それって、同じじゃ......」
「違う。証明戦の判定は、審判の主観に委ねられる」
「主観?」
「そうだ。審判が『互角である』と判断すれば、引き分けになる」
カイの目が輝いた。
「じゃあ、この形式なら......!」
「ああ。引き分けの可能性が、大幅に上がる」
* * *
「でも」
サラが言った。
「決闘の形式は、挑戦者が選べるの?」
「通常はそうだ。だが──」
ルークは眉をひそめた。
「相手が同意しなければ、使えない」
「......」
「つまり、カイが証明戦を提案しても、俺が拒否すれば普通の決闘になる」
「じゃあ、ルークが提案すれば......」
「それは不自然だろう。自分から不利な条件を提案するなど、あり得ない」
「確かに......」
「だから、別の方法を考える」
* * *
「別の方法?」
「ああ。相手から証明戦を提案させる」
「どうやって?」
ルークは考え込んだ。
「まず、決闘の前に状況を作る」
「状況?」
「俺とカイの実力が、拮抗していると思わせる」
「......」
「そうすれば、普通の決闘では勝てないと判断して、証明戦を選ぶ可能性が上がる」
「でも、ルークの方が強いですよね」
「今はな。だが、決闘前に俺が『弱く見せる』演技をすればいい」
カイは目を丸くした。
「弱く見せる......?」
* * *
「そうだ」
ルークは頷いた。
「決闘前に、俺が調子を崩しているように振る舞う」
「具体的には?」
「授業での成績を、わざと落とす。実技で凡ミスをする。周囲に『ギルバートは最近おかしい』と思わせる」
「そうすれば......」
「カイとの実力差が縮まったように見える」
「なるほど......」
サラが感心した。
「それなら、証明戦を選ぶ動機が生まれるわね」
「ああ。『拮抗した相手と、審判の判定で決着をつける』──これは、合理的な選択だ」
* * *
「でも、待ってください」
カイが言った。
「ルークが弱く見せる演技をしたら、周りから馬鹿にされませんか?」
「されるだろうな」
「それでいいんですか?」
「構わない」
ルークは肩をすくめた。
「目的のためなら、一時的な評判など気にしない」
「......」
「それに、決闘で引き分ければ、評判は回復する。『調子が悪くても平民と互角に戦えた』と評価される」
「そこまで計算してるんですか......」
「当然だ。何事も、先を見据えて動く」
カイは、改めてルークの頭の良さに感嘆した。
* * *
「さて、問題がもう一つある」
ルークは真剣な顔になった。
「審判だ」
「審判?」
「証明戦では、勝敗を決めるのは審判の判断だ」
「はい」
「つまり、審判が公正でなければ、引き分けにはならない」
サラが眉をひそめた。
「審判が買収される可能性がある、ということ?」
「ああ。マルクスたちは、あらゆる手を使ってくる」
「......」
「審判を抱き込んで、一方的な判定を下させる──十分あり得る」
* * *
「じゃあ、どうすれば......」
「審判を、こちらで選ぶ」
「選ぶ?」
「決闘の審判は、通常は教官が務める。だが、申請すれば変更できる」
「誰を審判にするつもり?」
ルークはサラを見た。
「お前だ、サラ」
「私!?」
「ああ。お前なら、公正な判定ができる」
「でも、私はあなたたちの仲間よ。それこそ不公正じゃ......」
「お前は、剣術科の首席だ。その実力は、学院中が認めている」
「......」
「お前が審判なら、誰も文句は言えない」
* * *
「でも......」
サラは困惑していた。
「私が審判をして、引き分けの判定を下したら......」
「お前の判断が正しければ、問題ない」
「でも、マルクスたちは納得しないわ」
「させる必要はない」
ルークは言った。
「重要なのは、判定が公式に認められることだ。納得するかどうかは、関係ない」
「......」
「お前は、自分の目で見て判断しろ。俺とカイが本当に互角なら、引き分けと言え」
「本当に互角じゃなかったら?」
「その時は、正直に勝敗をつけろ」
「......」
「俺たちは、不正をしたいわけじゃない。正当な手段で、引き分けを実現したいんだ」
* * *
サラは、しばらく考えていた。
そして──
「分かったわ」
「引き受けてくれるか」
「ええ。でも、約束して」
「何を」
「あなたたちが本当に互角の戦いを見せること」
「......」
「私は、嘘の判定はしない。あなたたちが互角でなければ、引き分けとは言わないわ」
ルークは頷いた。
「分かった。約束する」
「私も、約束します」
カイも頷いた。
「互角の戦いを見せます。絶対に」
* * *
「よし」
ルークは立ち上がった。
「計画が決まった。これから一週間、全力で準備する」
「はい」
「カイ、お前は最後の仕上げに集中しろ」
「分かりました」
「サラ、お前は派閥と教会の動きを監視してくれ」
「任せて」
「俺は、決闘の申請と、審判の変更手続きを進める」
三人は、それぞれの役割を確認した。
「一週間後──全てが決まる」
ルークは、窓の外を見た。
月明かりが、学院を照らしている。
「必ず、引き分けに持ち込む」
* * *
翌日。
ルークは、教務課を訪れた。
「決闘の申請をしたい」
「決闘ですか。相手は?」
「カイ・レイナー」
職員は眉をひそめた。
「平民の新入生ですね。何か問題でも?」
「個人的な決着をつけたい」
「......分かりました。申請書にご記入を」
ルークは申請書に必要事項を書き込んだ。
日時、場所、形式──
「形式は......」
ルークは一瞬迷った。
ここで証明戦と書けば、自分から提案したことになる。
「......殲滅戦で」
あえて、通常の形式を選んだ。
これで、カイの側から証明戦を提案する余地が生まれる。
* * *
「審判の変更を申請します」
「変更? 何か問題でも」
「いえ。特定の人物を審判に指名したい」
「誰ですか」
「サラ・ヴァレンシュタイン」
「ヴァレンシュタイン嬢? 剣術科の首席ですね」
「はい」
「彼女を審判に......少し異例ですが、問題はないでしょう」
「ありがとうございます」
「相手方の同意が必要ですが、よろしいですか」
「問題ありません」
ルークは、手続きを終えた。
* * *
その後、カイにも通知が届いた。
「決闘の申請が......」
「ルークからだ」
カイは書類を確認した。
「形式は殲滅戦......」
「予定通りだな」
ルークからの通信があった。
『お前の方から、形式変更を申請しろ』
「形式変更?」
『証明戦への変更だ。理由は『公正な評価を受けたいから』とでも言え』
「分かりました」
カイは教務課へ向かった。
* * *
「形式変更の申請をしたいのですが」
「形式変更? どの形式に?」
「証明戦です」
職員は少し驚いた。
「証明戦ですか......珍しいですね」
「公正な評価を受けたいんです」
「なるほど。相手方の同意が必要ですが......」
「ギルバート様に確認していただけますか」
「分かりました。連絡しておきます」
後日、ルークの元に確認が来た。
「ギルバート様、相手方から形式変更の申請が来ています」
「証明戦か。構わない」
「よろしいのですか?」
「ああ。平民相手に形式にこだわる理由もない」
「分かりました。変更を承認します」
* * *
こうして、決闘の形式は証明戦に決まった。
「うまくいったわね」
サラが言った。
「ああ。あとは、決闘本番だ」
「一週間、長いようで短いわね」
「最後の仕上げをする」
ルークはカイを見た。
「カイ、明日から特訓だ。覚悟しろ」
「はい!」
「今までの訓練は、基礎固めだった。これからは、実戦を想定した訓練をする」
「実戦......」
「俺の動きを完全に読めるようになれ。そうすれば、引き分けは可能だ」
「分かりました」
* * *
翌日から、特訓が始まった。
「来い、カイ」
ルークが剣を構える。
カイが突進した。
「はあっ!」
ルークは軽々と躱した。
「遅い」
「くっ......!」
「もっと速く。俺の動きを読め」
「はい......!」
何度も何度も、繰り返した。
カイは必死についていった。
* * *
「肩が動いた......!」
「正解」
カイの剣が、ルークの剣を弾いた。
「よし、一本」
「やった......!」
「だが、まだまだだ」
ルークは再び構えた。
「今のは、俺が手を抜いた。本気の動きを読むには、もっと訓練が必要だ」
「はい」
「集中しろ。一瞬の隙も見逃すな」
「分かりました」
* * *
三日目。
「カイ、動きが変わってきたわ」
サラが言った。
「本当ですか?」
「ええ。最初の頃とは別人みたい」
「ルークのおかげです」
「いいえ、あなたの努力の成果よ」
サラは微笑んだ。
「この調子なら、引き分けは可能ね」
「頑張ります」
* * *
五日目。
「今日は、本番を想定した模擬戦をする」
ルークは言った。
「俺は本気で来る。お前も本気で応じろ」
「はい」
「サラ、審判を頼む」
「分かったわ」
三人は、訓練場の中央に立った。
「では、始め」
* * *
ルークが動いた。
「っ!」
本気の速度。今までとは、比べ物にならない。
カイは必死に対応した。
「肩......!」
読んだ。だが、反応が間に合わない。
「くっ......!」
ルークの剣が、カイの肩を掠めた。
「一本」
サラが告げた。
「まだだ。続けるぞ」
「はい......!」
* * *
再開。
カイは、より集中した。
「目を離すな。相手の全てを見ろ」
ルークから教わった言葉を思い出す。
肩だけじゃない。足、腰、目線──全てがサインだ。
「......来る!」
ルークが動く。
カイは、その動きを読んだ。
「はあっ!」
カウンターを狙う。
だが──
「甘い」
ルークはフェイントだった。
本当の攻撃は、別の角度から。
「くっ......!」
二本目を取られた。
* * *
「......駄目か」
カイは膝をついた。
「まだ、ルークには届かない......」
「そう落ち込むな」
ルークが近づいてきた。
「お前は、確実に成長している」
「でも......」
「今の模擬戦、本番では俺は本気を出さない」
「え?」
「本番は、引き分けが目的だ。俺が本気を出したら、意味がない」
「......」
「俺は、お前と互角に戦えるレベルまで手を抜く。それが、引き分けの条件だ」
カイは顔を上げた。
「......分かりました」
「安心しろ。お前の実力は、十分だ」
* * *
決闘前日。
「明日だな」
ルークは夜空を見上げていた。
「ああ」
サラが隣に立っていた。
「緊張してる?」
「していない」
「嘘ね」
「......少しだけだ」
「素直じゃないわね」
「うるさい」
サラはくすくす笑った。
「でも、大丈夫よ。あなたたちなら、やれる」
「......そうか」
「私は、公正に審判する。それだけは約束するわ」
「分かっている」
「じゃあ、明日。頑張って」
「ああ」
* * *
一方、カイは──
「明日か......」
寮の自室で、天井を見つめていた。
「引き分け......できるかな」
不安がないと言えば嘘になる。
ルークとの実力差は、まだある。
「でも」
カイは拳を握りしめた。
「やるしかない」
ルークが、ここまで自分を鍛えてくれた。
その期待に応えなければ。
「絶対に、引き分けに持ち込む」
決意を胸に、カイは目を閉じた。
* * *
その頃、マルクスたちは──
「明日の決闘、どうする」
「見ているしかないだろう」
「審判がヴァレンシュタインだ。手が出せない」
「くそっ......」
マルクスは苛立っていた。
「ギルバートめ、先手を打ちやがった」
「審判を変えたのは、やはり計算か」
「ああ。奴は、最初から引き分けを狙っている」
「どうして分かる?」
「証明戦を選んだ時点で、明らかだ」
「......」
「普通の決闘なら、ギルバートが圧勝する。それを避けるための証明戦だ」
* * *
「何か手はないのか」
「......一つだけ」
マルクスは目を細めた。
「決闘中に、何かが起これば......」
「何かって?」
「事故だ。どちらかが怪我をすれば、決闘は中止になる」
「......」
「そして、怪我をした方が、治療のために教会に送られる」
「......なるほど」
「平民が怪我をすれば、教会は『保護』の名目で彼を引き取れる」
「巧妙だな」
「問題は、どうやって事故を起こすか......」
* * *
翌朝。
決闘の日が来た。
学院の闘技場には、多くの観客が集まっていた。
「ギルバート侯爵家の嫡男と、平民の新入生の決闘......」
「面白そうだな」
「結果は見えてるだろ。ギルバートの圧勝だ」
「でも、あの平民、最近強くなってるらしいぞ」
「へえ......」
噂が飛び交う中、ルークとカイは闘技場に入った。
* * *
「緊張してるか」
「......少しだけ」
「大丈夫だ。いつも通りやれ」
「はい」
「俺を信じろ。そして、自分を信じろ」
「......分かりました」
カイは深呼吸した。
呼吸を整える。姿勢を正す。魔力を循環させる。
ルークから教わったこと、全てを思い出す。
「やれる」
カイは自分に言い聞かせた。
「俺は、やれる」
* * *
サラが、審判席に立った。
「これより、決闘を開始します」
彼女の声が、闘技場に響いた。
「形式は証明戦。勝敗は、私の判断によって決定されます」
観客がざわめいた。
「証明戦?」
「珍しいな......」
「両者、準備はいいですか」
「ああ」
ルークが剣を構えた。
「はい」
カイも剣を構えた。
「では──」
サラが手を上げた。
「始め!」
* * *
カイが動いた。
「はあっ!」
先制攻撃。
ルークは軽々と受け止めた。
「来たか」
「まだまだ!」
カイは連続攻撃を繰り出した。
上段、中段、下段──流れるような連撃。
「ほう......」
ルークは、内心で感心していた。
「成長したな」
二ヶ月前のカイなら、こんな動きはできなかった。
「だが──」
ルークが反撃に転じた。
* * *
「っ!」
カイは咄嗟に防いだ。
「速い......!」
ルークの動きは、訓練の時より速い。
だが──
「読める......!」
肩の動き。足の位置。目線の変化。
全てが、次の動きを示している。
「ここだ!」
カイはカウンターを放った。
「!」
ルークは、ギリギリで躱した。
観客がどよめいた。
「今の......!」
「平民が、ギルバートに一太刀......!」
* * *
「やるじゃないか」
ルークは微笑んだ。
「ありがとうございます」
「だが、まだまだだ」
ルークの動きが、さらに加速した。
「っ!」
カイは必死についていった。
攻撃を受け、反撃し、また防ぐ。
一進一退の攻防が続いた。
「すげえ......」
「互角だ......」
「あの平民、いつの間にあんなに......」
観客の声が、熱を帯びていく。
* * *
サラは、二人の戦いを見つめていた。
「......本当に、互角ね」
ルークは、本気を出していない。
それは分かる。
だが、カイもまた、全力で戦っている。
「二人とも、約束を守ってる」
互角の戦いを見せる──その約束を。
「私も、約束を守らないと」
公正な判定を下す。
それが、自分の役割だ。
* * *
戦いは、さらに激化した。
「はあっ!」
カイの剣が、ルークの腕を掠めた。
「っ」
観客が息を呑んだ。
「一本......!」
「カイが一本取った......!」
だが、ルークも黙っていなかった。
「やるな」
鋭い反撃。
「くっ......!」
カイは防いだが、体勢を崩した。
ルークの追撃。
「っ!」
カイの肩に、剣が当たった。
「一本返し」
* * *
「同点......」
サラは呟いた。
「このまま行けば、引き分け......」
だが、その時──
異変が起きた。
「......!」
闘技場の床が、突然揺れた。
「何だ!?」
「地震か!?」
観客が騒然となる。
* * *
「これは......」
ルークは異変を感じた。
魔力の流れが、乱れている。
「まさか......」
その時──
闘技場の床の一部が、突然崩壊した。
「カイ!」
カイの足元が、崩れていく。
「うわあっ!」
カイは、穴に落ちかけた。
* * *
「くっ......!」
ルークは咄嗟に動いた。
カイの腕を掴み、引き上げる。
「大丈夫か!」
「は、はい......」
「何が起きた......」
ルークは、崩れた床を見下ろした。
そこには──暗い穴が口を開けていた。
そして、その奥から──
「......何だ、これは」
紫色の光が、脈動していた。
* * *
「決闘は中止!」
サラが叫んだ。
「全員、闘技場から退避して!」
観客がパニックになる。
「何が起きてるんだ!?」
「分からない! 逃げろ!」
混乱の中、ルークはカイを連れて退避した。
「カイ、怪我はないか」
「大丈夫です......でも、あれは......」
「分からない。だが、嫌な予感がする」
ルークは、闘技場を振り返った。
紫色の光が、さらに強くなっていた。
「学院の地下に、何かがある......」
* * *
決闘は、中断された。
「一体、何が起きたの......」
サラは困惑していた。
「分からない。だが、明らかに異常だ」
「あの光......魔力の反応ね」
「ああ。しかも、見たことのない種類の魔力だ」
「......」
「学院の地下に、何が封印されているのか......」
ルークは、嫌な予感を覚えていた。
「原作の知識......」
思い出そうとしても、記憶が曖昧だ。
「確か、学院の地下には......」
何かが封印されていたはずだ。
何か、とても危険なものが。
* * *
その夜。
学院は騒然としていた。
「闘技場で異常事態が発生」
「学院地下から、謎の魔力反応を検知」
「調査チームが派遣された」
噂が飛び交う。
ルークは自室で、考え込んでいた。
「封印......」
原作で読んだ記憶。
学院の地下には、古代の封印がある。
それが──
「深淵の封印だ」
思い出した。
「深淵王アザルを封じた、古代の封印......」
* * *
「まさか......」
ルークは青ざめた。
「俺たちの行動が、封印に影響を......?」
カイを鍛えたこと。
決闘を行ったこと。
それが、世界の均衡を乱し始めている──?
「いや、まだ確証はない......」
だが、嫌な予感は消えない。
「原作では、深淵王は終盤まで目覚めなかったはずだ」
それが、もし前倒しになっているとしたら──
「世界の難易度が、跳ね上がる」
ルークは、窓の外を見た。
月が、不気味な色に染まっていた。
* * *
次回予告
* * *
決闘は中断されたが、計画は続く。
ルークはカイに「負けない剣」を教え始める。
そしてカイは、初めてルークを信じ始める──
第7話「引き分けの剣筋」
「勝つための剣じゃない。負けないための剣だ」
「それが、俺たちの武器になる」
師弟の絆が、深まっていく──




