第11話「新天地」
謁見の間。
そこには、荘厳な雰囲気が漂っていた。
「ようこそ、大陸連合へ」
玉座に座る男が、声をかけた。
連合王ヴィクトル。
四十代ほどの、威厳ある男性。
「私が、連合王ヴィクトルだ」
「お目にかかれて、光栄です」
ルークが、頭を下げた。
「俺は、ルーク・ウィザリア・ギルバート」
「こちらは、サラ・ヴァレンシュタインと」
「カイ・レイナーです」
「知っている」
「君たちの噂は、ここまで届いている」
「噂、ですか」
「深淵王に対抗できる力を持つ者」
「そして、王国を追われた亡命者」
「......はい」
「俺たちは、王国で反逆者とされています」
「反逆者?」
ヴィクトルは、笑った。
「私には、英雄に見えるがね」
「英雄......」
「深淵王と戦おうとしている者を、反逆者と呼ぶなど」
「王国は、何を考えているのか」
「教会の影響が、強いのです」
「なるほど。教会か」
「あの連中は、昔から問題が多い」
「大陸連合は、教会と対立しているのですか」
「対立というより、距離を置いている」
「我々は、教会の支配を受け入れていない」
「だからこそ、君たちを受け入れた」
「教会に追われる者は、我々の味方だ」
「ありがとうございます」
「だが、ただで助けるわけではない」
「......」
「見返りを、求めるということですか」
「取引だ」
「君たちの力を、貸してほしい」
「俺たちの力......」
「深淵王と戦う力だ」
「特に、カイ・レイナー」
「君の加護は、深淵に対抗できる唯一の力だと聞いている」
「その力を、連合のために使ってほしい」
「道具として、ということですか」
カイが、警戒した声で言った。
「道具? 違う」
「対等な協力者として、だ」
「君の意志を無視するつもりはない」
「......」
「私は、教会とは違う」
「人を道具にするような真似は、しない」
「信用していいのですか」
「信用するかどうかは、君たちが決めることだ」
「私は、誠意を見せる」
「誠意......」
「まず、君たちに住む場所を提供する」
「学生たちも含めて、全員を受け入れる」
「それから、訓練の場も用意する」
「深淵王と戦うために、力をつけてもらう」
「資金も、物資も、必要なものは全て提供する」
「その代わり、深淵王との戦いに参加してほしい」
「参加......」
「深淵王は、世界の脅威だ」
「大陸連合も、例外ではない」
「君たちと協力して、これに立ち向かいたい」
「......」
ルークは、考えた。
(悪い条件ではない)
(むしろ、望んでいた以上だ)
「一つ、確認させてください」
「何だ」
「カイの意志は、必ず尊重されますか」
「もちろんだ」
「彼が戦いたくないと言えば、強制はしない」
「ただし、その場合は保護も限定的になる」
「なるほど......」
「カイ、お前はどう思う」
「僕は......」
カイは、少し考えた。
「戦います」
「本当にいいのか」
「はい」
「僕は、自分の意志で戦いたいと思っています」
「ルークが教えてくれました」
「自分で選ぶことの大切さを」
「だから、僕は戦うことを選びます」
「......」
ヴィクトルは、カイをじっと見た。
「いい目をしている」
「君は、本当に強い心を持っているようだ」
「ありがとうございます」
「では、取引成立だ」
「君たちを、大陸連合の客人として迎え入れる」
「深淵王との戦いに、共に臨もう」
「ありがとうございます」
「こちらこそ、よろしく頼む」
謁見は、終わった。
「案内する。君たちの住む場所へ」
宮殿を出て、街の一角へ向かった。
「ここだ」
大きな屋敷が、用意されていた。
「この屋敷を、君たちに提供する」
「学生たちも、ここで暮らせる」
「広さは、十分だろう」
「こんな立派な場所を......」
「遠慮はいらない」
「君たちは、連合の重要な戦力だ」
「ありがとうございます」
「それでは、ゆっくり休んでくれ」
「また、連絡する」
一行は、屋敷に入った。
「すごい......」
「こんな立派な屋敷、初めてです」
「学院の寮より、広いわね」
「ああ。ヴィクトル陛下は、本気で協力するつもりだ」
「ルーク様」
リオンが、近づいてきた。
「これからは、どうなるんですか」
「当面は、ここで暮らす」
「訓練を続けて、深淵王との戦いに備える」
「深淵王との戦い......」
「俺たちも、参加できるんですか」
「もちろんだ」
「お前たちは、俺の部下だ」
「一緒に戦ってもらう」
「「「はい!」」」
「だが、まずは休め」
「長旅で、疲れているだろう」
「訓練は、明日からだ」
その夜。
ルークは、一人で屋敷の庭に出た。
「......」
空を見上げる。
「ルーク」
サラが、近づいてきた。
「眠れないの」
「ああ。少し考え事を」
「何を考えていたの」
「王国のことだ」
「今頃、どうなっているか......」
「心配しているの」
「......少しな」
「俺たちは、あの国を捨てた」
「捨てたんじゃない」
「離れただけよ」
「いつか、戻れる日が来る」
「......そうだな」
「深淵王を倒せば、状況も変わる」
「王国も、教会も」
「だから、今は前を見ましょう」
「俺たちにできることを、やる」
「ああ」
「ルーク」
「何だ」
「あなたは、一人じゃないわ」
「私も、カイも、みんないる」
「一緒に、戦える」
「......ありがとう、サラ」
「お前がいてくれて、よかった」
「私こそ」
翌朝。
新しい生活が、始まった。
「今日から、訓練を再開する」
「新天地での、新しいスタートだ」
「「「はい!」」」
大陸連合の地で、彼らは再び立ち上がった。
深淵王との決戦に向けて──
新たな章が、幕を開けた。
次回予告
新生活が始まった大陸連合。
ルークたちは、連合王ヴィクトルとの本格的な会談に臨む。
そして、新たな役割が──
第12話「盟主との対面」
「我々は、同盟を結ぶ」
「深淵王を倒すために」
運命の歯車が、動き出す──




