第9話「亡命の決意」
学院を離れた一行は、王国を南下していた。
「国境まで、あとどれくらいだ」
「三日ほどです」
「急ごう」
だが、道中は平穏ではなかった。
「深淵魔だ!」
「また来たか......」
「迎え撃て!」
戦闘が、頻繁に起きた。
「カイ、頼む」
「はい」
カイが、深淵魔を撃退していく。
「カイさんがいなかったら、もう......」
「ああ。彼の力は、頼りになる」
「だが、カイに頼りすぎてもいけない」
「俺たちも、戦える力をつけないと」
「はい」
夜、野営をした。
「ルーク様」
「どうした、リオン」
「一つ、聞いてもいいですか」
「何だ」
「本当に、王国を出るんですか」
「ああ」
「俺たちは、亡命する」
「......」
「王国には、もう戻れない」
「教会とも、王国とも対立した」
「俺たちは、反逆者だ」
「でも、俺たちは......」
「王国を愛していたはずです」
「ああ」
「俺も、この国で生まれ育った」
「故郷を捨てるのは、辛い」
「でも、仕方ない」
「仕方ない......」
「リオン、お前はどうしたい」
「俺は......」
「ルーク様についていきます」
「だから、俺の気持ちは関係ありません」
「関係ある」
「お前にも、選ぶ権利がある」
「俺についてくるか、ここに残るか」
「......」
「残りたいなら、止めない」
「お前の故郷は、ここだ」
「俺の故郷は......」
リオンは、少し考えた。
「ルーク様のいる場所です」
「......」
「ルーク様が俺を拾ってくれなかったら」
「俺は、とっくに死んでいました」
「ルーク様が、俺の故郷です」
「リオン......」
「だから、俺はついていきます」
「どこまでも」
「......ありがとう」
「礼なんて、いりませんよ」
「俺たちは、仲間じゃないですか」
「ああ。仲間だ」
翌朝。
一行は、旅を続けた。
「あと二日で、国境だ」
「気を引き締めていこう」
だが、予想外の事態が起きた。
「ルーク様、前方に......」
「何だ」
「王国軍です」
「王国軍......」
「俺たちを、追ってきたのか」
王国軍の部隊が、道を塞いでいた。
「ギルバート、止まれ」
「お前たちを、拘束する」
「理由は」
「反逆罪だ」
「王国を離れようとしている」
「俺たちは、深淵王と戦うために......」
「言い訳は、いらない」
「投降しろ」
「......」
「ルーク様、どうしますか」
「戦いますか」
「待て」
マーカスが、前に出てきた。
「マーカス......」
「俺が、話をつける」
「お前たちは、先に行け」
「何を言っている」
「俺は、王国軍の中にも顔が利く」
「交渉で、時間を稼げる」
「だが、お前は......」
「俺は、大丈夫だ」
「ヴァレンティン家の力は、まだ健在だ」
「......」
「行け、ギルバート」
「お前たちがやるべきことは、深淵王を倒すことだ」
「ここで捕まっている場合じゃない」
「......すまない」
「借りは、いつか返す」
「期待しているぞ」
ルークたちは、別のルートを使って迂回した。
「マーカス......」
「彼は、大丈夫でしょうか」
「大丈夫だ。あいつは、強い」
「俺たちは、あいつの期待に応えないと」
「はい......」
迂回路を進んだ。
「ここを抜ければ、国境だ」
「あと少し」
「でも、また追手が......」
「来るかもしれない」
「急ごう」
数時間後。
国境が、見えてきた。
「あれが......」
「大陸連合との国境......」
「やっと......」
「着いた......」
だが、国境には警備兵がいた。
「止まれ。どこへ行く」
「大陸連合へ」
「許可証は」
「ない」
「では、通すわけにはいかない」
「......」
「どうしますか、ルーク様」
「強行突破しますか」
その時。
「待て」
国境の向こう側から、声がした。
「彼らは、我々が招待した客人だ」
「通せ」
「あなたは......」
「大陸連合の使者です」
「あなた方を、お迎えに参りました」
「迎え? 誰の指示だ」
「大陸連合の王、ヴィクトル陛下の命令です」
「カイ・レイナー殿と、その仲間を保護するようにと」
「ヴィクトル陛下が......」
「なぜ、俺たちのことを」
「深淵王の覚醒は、我々も把握しています」
「対抗できる力を持つカイ殿を、保護するのは当然のことです」
「......」
「行きましょう、ルーク様」
「ここにいても、仕方ありません」
「......ああ」
「お言葉に甘えます」
「案内してください」
一行は、国境を越えた。
「ようこそ、大陸連合へ」
「これより、首都までご案内します」
「首都まで、どれくらいだ」
「馬車で、三日ほどです」
「用意してあります」
「助かります」
「では、参りましょう」
馬車に乗り込んだ。
「やっと......国境を越えた......」
「俺たちは、亡命者だ」
「後悔していますか」
カイが、ルークに尋ねた。
「後悔?」
「いや」
「後悔はしていない」
「俺たちは、正しいことをしている」
「深淵王を倒し、世界を救う」
「そのためなら、国を捨てても構わない」
「......」
「俺の故郷は、もう王国じゃない」
「お前たちがいる場所が、俺の居場所だ」
「ルーク......」
「サラさん......」
「私も、同じ気持ちよ」
「王国を愛していたけど」
「今は、あなたたちと一緒にいることが大事」
「僕も......」
カイが言った。
「僕の居場所は、ルークとサラさんのそばです」
「どこにいても、変わりません」
「......ありがとう」
「俺たちは、最高の仲間だな」
「「はい」」
馬車は、大陸連合の首都を目指して走り続けた。
行き先には、新しい世界が待っていた。
俺たちは、王国を捨てた。
だが、後悔はない。
俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。
次回予告
国境を越えた一行。
大陸連合への旅は、順調に進んでいた。
だが、追手の影が──
第10話「国境越え」
「まだ、追ってくるのか......」
「諦めの悪い連中だ」
新天地への道──




