第7話「深淵王の目覚め(後編)」
三人は、北の山岳地帯を目指していた。
「あと少しで、聖地に着くわ」
「だが、空の裂け目が......」
空を見上げると、裂け目はさらに大きくなっていた。
「まずいな」
「深淵王の覚醒が、進んでいる」
「急ぎましょう」
「ああ」
山岳地帯に入った。
「ここから先は、徒歩で行くしかないわね」
「険しい道だ」
「気をつけろ」
山を登っていく。
「カイ、大丈夫か」
「はい......なんとか」
「もう少しだ」
数時間後。
「見えた......」
「あれが、封印された聖地......」
古代の遺跡が、山の頂上にあった。
「ここで、儀式を行う」
「アルベルトから、手順は聞いているわ」
「始めよう」
「カイ、準備はいいか」
「はい」
聖地の祭壇に、カイが立った。
「アルベルトの説明通りにやるわ」
「私が、儀式を執り行う」
サラが、古代の詠唱を始めた。
「光の源よ......」
「この者に、真の力を......」
「覚醒の時を、与えたまえ......」
カイの体が、光り始めた。
「......!」
「何か、感じるか」
「はい......体の中が、熱い......」
光は、どんどん強くなっていった。
「カイ、耐えられるか」
「はい......なんとか......」
「続けるわ」
「加護の本質よ......」
「この者の内に眠る力を......」
「今こそ、解き放て......」
「......!」
カイの目が、黄金色に輝いた。
「これは......」
「覚醒が、始まっている......」
「カイの加護が、次の段階に......」
だが、その時。
空の裂け目が、急激に広がった。
「まずい......」
「深淵王が......」
『遅かったな......』
深淵王アザルの声が、世界に響き渡った。
『私は......完全に目覚めた......』
「......!」
空から、巨大な影が現れた。
深淵王アザル。
その姿が、ついに世界に現れた。
「あれが......」
「深淵王......」
「馬鹿な......あんな巨大な......」
アザルの姿は、山ほどもあった。
闇と影で構成された、異形の存在。
「......」
『久しいな......この世界......』
『かつて、私を封印した世界......』
『今、私は帰ってきた......』
「カイ......儀式は......」
「まだ......終わっていない......」
「でも......」
『お前か......カイ・レイナー......』
アザルの視線が、カイに向けられた。
『私に対抗しようとしている者......』
「......!」
「カイ、続けろ!」
「俺が、時間を稼ぐ!」
「ルーク......」
「お前の覚醒が、終わるまで」
「俺が、あいつの相手をする」
「馬鹿な......あんな相手に......」
「勝てなくてもいい」
「時間を稼げればいい」
「でも......」
「カイ、俺を信じろ」
「俺は、必ず戻ってくる」
「......はい」
「信じています」
「必ず、戻ってきてください」
「ああ。約束だ」
ルークは、深淵王に向かって走り出した。
「サラ、儀式を続けてくれ」
「分かったわ......気をつけて」
「ああ」
ルークは、深淵王の前に立った。
「深淵王アザル」
「お前の相手は、俺だ」
『人間か......愚かな......』
『お前に、私を止める力はない......』
「かもしれない」
「だが、時間は稼げる」
「カイが覚醒するまで、お前の相手をする」
『面白い......』
『では、見せてもらおう......』
『お前の、愚かな抵抗を......』
アザルが、闇の波動を放った。
「くっ......!」
ルークは、剣で受け止めた。
「重い......」
「だが、耐えられる......」
「はあっ!」
ルークが、反撃した。
剣から、光の斬撃が放たれる。
『その程度か......』
斬撃は、アザルには届かなかった。
『失望した......』
「まだだ......」
ルークは、何度も攻撃を繰り返した。
だが、どれもアザルには効果がない。
『もういい......飽きた......』
アザルが、巨大な手を振り下ろした。
「くっ......!」
ルークは、吹き飛ばされた。
「がはっ......」
「くそ......」
『終わりだ......人間......』
アザルが、止めを刺そうとした。
だが、その時。
「待て!」
光が、アザルを阻んだ。
「これは......」
「カイ......!」
カイが、覚醒を終えていた。
その体から、眩い黄金の光が溢れている。
「深淵王」
「僕が、相手だ」
『カイ・レイナー......』
『ようやく、本気か......』
「ルーク、大丈夫ですか」
「ああ......なんとか......」
「お前、覚醒したのか」
「はい」
「やっと......本当の力に、目覚めました」
カイの加護は、完全に覚醒していた。
黄金の光が、深淵の闇を照らしている。
「これなら......戦える」
『面白い......』
『だが、まだ私には勝てない......』
「今は、そうかもしれない」
「でも、僕は諦めない」
「僕たちは、必ずあなたを倒す」
『楽しみにしている......』
『次に会った時......』
『お前の全力を、見せてもらおう......』
アザルの姿が、消えていった。
「......去った」
「今は、完全に現れることはできないみたい」
「覚醒が、済んだばかりだからか」
「おそらく」
「だが、次は本気で来る」
「はい」
「僕も、それまでに......」
「もっと、強くなります」
「カイ......」
ルークは、カイの顔を見た。
以前とは、違う目をしていた。
「強くなったな」
「ルークのおかげです」
「違う。お前自身の力だ」
「俺は、きっかけを与えただけだ」
「......ありがとうございます」
「礼は、アザルを倒してからだ」
「はい」
サラが、駆け寄ってきた。
「二人とも、無事?」
「ああ。なんとか」
「カイ、覚醒したのね」
「はい。サラさんのおかげです」
「儀式を、完成させてくれて」
「私は、詠唱しただけよ」
「覚醒したのは、カイ自身の力」
「さあ、戻りましょう」
「アザルが完全に現れる前に」
「対策を練らないと」
「ああ」
「世界中に、警報を出さないとな」
「深淵王が、目覚めた」
「王国は、どうなっているでしょうか」
「分からない」
「だが、混乱しているはずだ」
「行こう」
「俺たちに、できることをする」
「はい」
三人は、山を降りた。
空には、まだ巨大な裂け目が残っていた。
深淵王アザルは、完全に目覚めた。
世界は──変わり始めていた。
次回予告
深淵王の目覚めにより、世界は混乱に陥る。
そして、学院が──深淵魔の大群に襲われる。
カイたちは、仲間を救えるのか。
第8話「学院の崩壊」
「学院が......!」
「みんなを、救わないと......」
崩壊と希望──




