第6話「深淵王の目覚め(前編)」
王都の地下。
旧教会の施設では、大司教派の残党が集まっていた。
「準備は、整ったか」
「はい。封印を破壊する儀式の準備は、完了しました」
「よし。始めろ」
「大司教様の意志を、継ぐのだ」
「深淵王を目覚めさせ、世界を変える」
「だが、本当にいいのですか」
「何がだ」
「深淵王を目覚めさせれば、我々も......」
「構わない」
「大司教様の計画を、実現する」
「それが、我々の使命だ」
儀式が、始まった。
暗い詠唱が、地下に響く。
「深淵の王よ......目覚めよ......」
「封印の鎖を、断ち切れ......」
一方。
サラとマーカスは、残党の潜伏先に急いでいた。
「間に合うか......」
「間に合わせる」
「ここだ」
「旧教会の施設......」
「地下への入り口は、どこだ」
「こっちだ」
マーカスが、案内した。
「この先に、階段がある」
地下への階段を降りた。
「嫌な気配がするわ」
「ああ。儀式が、始まっている」
「急げ」
地下を進むと、残党たちの声が聞こえてきた。
「深淵の王よ......」
「封印を......破れ......」
「止めないと......」
「今だ!」
サラとマーカスが、突入した。
「儀式を、中止しろ!」
「何者だ......!」
「サラ・ヴァレンシュタインよ」
「お前たちの計画は、ここで終わりだ」
「終わらせるものか!」
「儀式は、もう止められない!」
「深淵王は、目覚める!」
「くっ......」
サラが、残党と戦い始めた。
「マーカス、儀式を止めて!」
「分かった!」
マーカスが、祭壇に向かった。
「術式を、破壊する......」
だが、儀式の力は強大だった。
「無駄だ......!」
「もう、誰にも止められない......!」
「深淵王は......目覚める......!」
「くそっ......」
マーカスが、祭壇を攻撃した。
だが、効果がない。
「サラ......間に合わない......」
「諦めないで!」
「まだ、何か方法が......」
その時。
地響きが、起きた。
「何......」
『ようやく......目覚める時が来た......』
空間に、深淵王の声が響いた。
「アザル......」
『長い眠りだった......』
『だが、ようやく......解放される......』
「まずい......」
「封印が......崩壊する......」
地下全体が、揺れ始めた。
「ここにいては、危険だ!」
「撤退する!」
サラとマーカスは、地上に逃げた。
残党たちは、歓喜の声を上げていた。
「深淵王様......!」
「ついに......!」
地上に出ると、空が異様な色に染まっていた。
「何あれ......」
「空に......裂け目が......」
巨大な裂け目が、空に開いていた。
そこから、深淵の気配が溢れ出している。
「深淵王が......本当に目覚めようとしている......」
「ルークに、知らせないと......」
「急いで、連絡を......」
サラは、ルークに連絡を取った。
「ルーク! 大変よ!」
「どうした」
「深淵王が......目覚めようとしている......」
「何だと......」
「残党が、封印を破壊した......」
「止められなかった......」
「......」
「すまない、ルーク......」
「謝るな。お前のせいじゃない」
「今、どうなっている」
「空に、巨大な裂け目が開いている」
「そこから、深淵の気配が......」
「カイ」
「はい」
「俺たちも、急がないと」
「はい......」
「サラ、今どこにいる」
「王都よ」
「そこで待機しろ。俺たちも、すぐに向かう」
「でも、大陸連合との交渉は......」
「今は、それどころじゃない」
「深淵王の覚醒を、食い止める方が先だ」
「分かったわ」
「待っているわね」
ルークとカイは、進路を変えた。
「王都へ向かうぞ」
「はい」
「カイ、準備はいいか」
「正直......怖いです」
「でも、逃げません」
「怖いのは、当然だ」
「深淵王は、俺たちの想像を超える存在だ」
「だが、立ち向かうしかない」
「はい......」
「僕の力が、役に立つなら......」
「全力で、戦います」
「頼むぞ」
「俺も、お前を支える」
「一緒に、戦おう」
数日後。
ルークとカイは、王都に到着した。
「サラ!」
「ルーク! カイ!」
「状況は」
「悪化しているわ」
「裂け目が、どんどん大きくなっている」
空を見上げた。
裂け目は、以前より遥かに大きくなっていた。
「これは......」
『待っていたぞ......』
深淵王の声が、響いた。
『カイ・レイナー......』
「僕を、知っているんですか......」
『知っている......』
『お前の加護は......私に対抗できる唯一の力......』
「......」
『だが、お前では私を止められない......』
『私は、間もなく完全に目覚める......』
「止めてみせる」
ルークが、叫んだ。
「俺たちが、お前を止める」
『面白い......』
『だが、無駄だ......』
『お前たちに、私を止める力はない......』
「今はな」
「だが、俺たちは諦めない」
「必ず、お前を倒す方法を見つける」
『楽しみにしている......』
『私が完全に目覚めた時......』
『お前たちの絶望を、見届けよう......』
声が、消えた。
「......行ったか」
「まだ、完全には目覚めていないみたいね」
「時間がある」
「その間に、対策を練る」
「カイの力を、最大限に引き出す方法を」
「僕の力......」
「お前の加護は、深淵に対抗できる」
「それを、もっと強くする」
「どうやって」
「分からない」
「だが、考える」
「教会の反対派に、協力を求めましょう」
サラが言った。
「彼らなら、何か知っているかもしれない」
「そうだな。アルベルトに、連絡を取ろう」
「私が、連絡するわ」
アルベルトとの連絡が取れた。
「カイ・レイナー殿の力を、強化する方法......」
「一つ、心当たりがあります」
「何だ」
「古代の儀式です」
「加護を覚醒させる、秘密の儀式が存在します」
「覚醒させる?」
「はい。加護には、段階があります」
「カイ殿の加護は、まだ最終段階ではない」
「最終段階に、覚醒させれば......」
「深淵王に、対抗できる可能性があります」
「その儀式は、どこで行える」
「聖地です」
「封印された聖地に、儀式の祭壇があります」
「封印された聖地?」
「この王国の、北の山岳地帯にあります」
「古代から、封印されていた場所です」
「そこへ、行かなければならない」
「はい。だが、危険です」
「深淵の影響が、強い場所です」
「構わない」
「カイの力を覚醒させるためなら、どんな危険も冒す」
「カイ、お前はどうだ」
「行きます」
「僕の力で、深淵王を止められるなら」
「どんな危険も、怖くありません」
「よし」
「では、聖地へ向かおう」
「......」
深淵王の目覚めは、もう止められない。
だが、まだ希望はある。
カイの力を覚醒させれば──
「勝てる」
「俺たちは、必ず勝つ」
決戦への準備が、始まった。
次回予告
封印された聖地へ向かう一行。
だが、深淵王は完全に目覚めようとしていた。
そして、世界は──変わり始める。
第7話「深淵王の目覚め(後編)」
「アザルが......姿を現す......」
「世界が......闇に染まる......」
絶望の中の、希望──




