第4話「教会の分裂」
大陸連合へ向かう旅の途中。
一行は、小さな村で情報を集めていた。
「王国では、何が起きているんでしょうか」
「分からない。だが、調べる必要がある」
「私が、情報を集めてくるわ」
「頼む、サラ」
「任せて」
サラが、村の酒場へ向かった。
「すみません、王国の情報を知りたいのですが」
「王国? 大変なことになってるらしいぜ」
「大変なこと?」
「教会が、分裂したんだとさ」
「分裂......!」
「大司教が、追放されたらしい」
「追放?」
「なんでも、教会の内部で対立があったとか」
「詳しいことは、分からないけどな」
サラは、情報を持ち帰った。
「ルーク、大変よ」
「どうした」
「教会が、分裂したみたい」
「分裂?」
「大司教が、追放されたらしいわ」
「何があったんだ......」
「教会の内部で、対立があったみたい」
「大司教のやり方に、反対する者がいたのよ」
「なるほど......」
「これは、好機かもしれない」
「好機?」
「教会が分裂しているなら、追手の動きも鈍るはずだ」
「なるほど」
「それに、反対派と協力できるかもしれない」
「エレナも、反対派だったわね」
「ああ。彼女のような者が、他にもいるはずだ」
「どうやって、連絡を取るの」
「......考えがある」
その夜。
エレナが、ルークのもとへ来た。
「ルークさん、お話があります」
「何だ」
「教会の反対派から、連絡が来ました」
「連絡? どうやって」
「私には、まだ教会内部に繋がりがあります」
「密かに、連絡を取り合っていました」
「何と言っている」
「協力したいと」
「私たちと、手を組みたいそうです」
「信用できるのか」
「分かりません。でも、話を聞く価値はあると思います」
「......」
「どこで、会える」
「明後日、国境近くの廃教会で」
「反対派の代表が、来るそうです」
「罠の可能性は」
「否定はできません」
「でも、このまま孤立していても......」
「......分かった」
「会ってみよう」
「ただし、警戒は怠らない」
二日後。
指定された廃教会に着いた。
「ここか......」
「人の気配は、少ないわね」
「罠にしては、手薄だ」
「行くぞ」
「警戒しながら」
「はい」
廃教会の中に入った。
「誰かいるか」
「......」
「ギルバート殿ですね」
奥から、一人の司祭が現れた。
「私は、アルベルト。教会の反対派の代表です」
「反対派、というのは」
「大司教のやり方に、反対する者たちです」
「私たちは、カイ・レイナーを道具にすることに反対しました」
「なぜ、反対した」
「人の尊厳を、踏みにじる行為だからです」
「教会は、人を救うために存在する」
「人を道具にするためではない」
「......」
「大司教は、それを忘れていた」
「だから、私たちは反対した」
「追放したのか」
「はい。多数派工作を行い、追放しました」
「今、教会は私たちの手にあります」
「では、俺たちへの追跡は」
「中止しました」
「カイ・レイナー殿を、道具にする計画も破棄しました」
「それは......本当か」
「本当です」
「私たちは、あなた方と協力したい」
「協力? どういう意味だ」
「深淵王との戦いに、共に臨みたいのです」
「教会も、深淵王を止めたいと考えています」
「だが、やり方が違う」
「はい。私たちは、カイ・レイナー殿の意志を尊重します」
「彼自身が、戦うことを選ぶなら」
「私たちは、それを支援します」
「......」
「カイ、どう思う」
「僕は......」
カイが、前に出た。
「信じたいです」
「信じたい?」
「教会の中にも、良い人がいる」
「エレナさんが、それを証明してくれました」
「アルベルトさんも、そうだと思います」
「だが、また裏切られるかもしれない」
「かもしれません」
「でも、信じなければ、何も始まらない」
「ルークが、そう教えてくれました」
「......」
ルークは、カイの顔を見た。
以前より、強い目をしていた。
「......分かった」
「協力しよう」
「ただし、条件がある」
「何でしょう」
「カイを、絶対に道具にしないこと」
「彼の意志を、常に尊重すること」
「それが、守れるなら」
「もちろんです」
「私たちは、それを誓います」
「カイ・レイナー殿は、道具ではない」
「私たちの、対等な協力者です」
「よし」
「では、情報交換をしよう」
「教会は、今どういう状況だ」
「分裂後、混乱しています」
「大司教派の残党が、まだ抵抗しています」
「完全に掌握するまで、もう少し時間がかかります」
「深淵王の覚醒は」
「進んでいます」
「封印は、ほぼ崩壊寸前です」
「あと数週間で、完全に目覚めるでしょう」
「数週間......」
「時間がない」
「急がないと」
「私たちも、対策を練っています」
「各地の教会に、警戒を呼びかけています」
「だが、教会の力だけでは足りない」
「王国は、どうだ」
「王国は......複雑な状況です」
「教会との関係が、揺らいでいます」
「俺たちを、追っているのか」
「公式には、追跡を続けています」
「だが、実際には消極的です」
「なぜだ」
「王国内部でも、対立があるようです」
「教会派と、反教会派が」
「マーカスが、動いているのかもしれない」
「ヴァレンティン家の方ですか」
「ああ。彼も、教会に反対していた」
「なるほど」
「王国内部にも、協力者がいるかもしれませんね」
「ああ。希望が、見えてきた」
「ルークさん、一つお願いがあります」
「何だ」
「王国に戻っていただけませんか」
「王国に? なぜだ」
「王国の反教会派と、連携を取ってほしいのです」
「私たちだけでは、接触が難しい」
「危険じゃないか」
「危険です」
「だから、ギルバート殿にお願いしている」
「あなたなら、切り抜けられると思います」
「......」
「ルーク、私が行くわ」
サラが言った。
「サラ?」
「私には、王家のコネがある」
「反教会派との接触なら、私の方が適任よ」
「だが、危険だ」
「あなたが行くより、私の方が目立たない」
「それに、私の家族も王国にいる」
「説得できるかもしれない」
「......」
「ルークは、カイと一緒にいて」
「彼を、守ってあげて」
「サラ......」
「大丈夫よ。私は強いわ」
「あなたが、そう育ててくれたんでしょう」
「......分かった」
「だが、無理はするな」
「危険を感じたら、すぐに逃げろ」
「分かったわ」
「アルベルト殿、サラを王国まで案内できるか」
「はい。安全なルートを、用意します」
「頼む」
サラは、王国へ向かうことになった。
「気をつけろ」
「ええ。あなたたちも」
「カイ」
「はい」
「私がいない間、ルークを支えてあげて」
「......はい」
「サラさん......」
「大丈夫。すぐに戻るわ」
「待っていてね」
サラが、出発した。
ルークは、その背中を見送った。
「......必ず、無事で戻ってこい」
数日後。
サラから、連絡が入った。
「王国に、無事到着したわ」
「反教会派との接触も、うまくいっている」
「よかった......」
「マーカスも、協力してくれている」
「彼の力は、大きいわ」
「進展は」
「王国内部で、教会への反発が強まっている」
「国王も、態度を軟化させつつあるわ」
「それは、いい報告だ」
「でも、まだ時間がかかりそう」
「もう少し、待ってほしいの」
「分かった。無理はするな」
「ええ。また連絡するわ」
一方、ルークとカイは大陸連合を目指していた。
「サラさん、大丈夫でしょうか」
「ああ。彼女は強い。信じよう」
「はい......」
「俺たちは、俺たちの役目を果たす」
「大陸連合との同盟を、成功させる」
「僕にも、何かできますか」
「もちろんだ」
「お前がいるからこそ、交渉の余地がある」
「僕が......」
「お前の加護は、深淵王に対抗できる唯一の力だ」
「大陸連合も、それを知れば協力するはずだ」
「僕の力が、役に立つなら......」
「ただし、道具としてではない」
「お前自身の意志で、力を使う」
「それを、忘れるな」
「はい」
「分かっています」
「僕は、自分で選びます」
「よし」
「大陸連合の首都まで、あと数日だ」
「気を引き締めていこう」
「はい」
教会の分裂は、思わぬ形で味方を増やした。
王国内部でも、動きが出始めている。
孤立していた彼らに、希望の光が差し込んでいた。
だが、深淵王の覚醒は、刻一刻と近づいていた。
時間との戦いは、まだ続いている。
次回予告
王国に潜入したサラ。
そこで、意外な人物と再会する。
そして、過去の真実が明らかになる──
第5話「裏切り者の証言」
「エドワードが、真実を語る」
「全ては、あの日から始まっていた」
過去と向き合う時──




