第3話「脱獄計画」
教会の施設から脱出した三人。
だが、まだ安全ではなかった。
「追手が来る」
「どこへ逃げる」
「まず、学院に戻る」
「学院? 危険じゃないの」
「危険だ。だが、仲間がいる」
「訓練生たちが、待っている」
「でも、教会が......」
「分かっている」
「だから、急ぐ」
「彼らを、置いていくわけにはいかない」
エレナが言った。
「私も、協力します」
「本当にいいのか」
「もう、教会には戻れません」
「私は、あなた方を助けると決めました」
「すまない」
「謝らないでください」
「私が、選んだことです」
「......ありがとう」
四人は、学院を目指して走った。
「学院まで、どれくらいだ」
「徒歩では、半日」
「馬を手に入れよう」
「どこで」
「近くの村に、馬を借りられる知り合いがいるわ」
「サラ、頼む」
「任せて」
サラの知り合いの家へ向かった。
「サラ様! どうされたのですか」
「事情は後で話すわ。馬を、四頭貸してほしいの」
「分かりました。すぐに用意します」
馬を手に入れた。
「これで、移動が速くなる」
「学院まで、急ごう」
「はい」
馬を走らせながら、ルークは考えた。
(学院に戻っても、長くは留まれない)
(教会は、必ず追ってくる)
(俺たちは......どこへ行けばいいんだ)
「ルーク」
「どうした、サラ」
「考え事?」
「ああ。この先のことを」
「私も、考えていたわ」
「王国に、もういられないかもしれない」
「ああ」
「教会と対立した以上、王国も敵に回る可能性がある」
「亡命を、考えているのか」
「可能性として」
「隣国なら、受け入れてくれるかもしれない」
「隣国......」
「東の大陸連合か」
「彼らは、教会の支配下にない」
「深淵王の脅威も、認識している」
「協力を得られるかもしれない」
「だが、まずは学院だ」
「仲間を、見捨てるわけにはいかない」
「ええ」
数時間後。
学院が見えてきた。
「あれが......」
「教会の兵が、まだいるわね」
「包囲は、続いているようだ」
「どうやって入る」
「正面からは、無理だ」
「裏口があるわ」
「案内してくれ」
サラの案内で、裏口から潜入した。
「静かに」
「分かっている」
学院の中に入った。
「リオンたちは、どこだ」
「訓練場にいるはずよ」
「行こう」
訓練場に着いた。
「ルーク様!」
「リオン!」
「無事だったんですね!」
「カイも、サラさんも!」
「よかった......」
「心配していたんです」
「すまない。心配をかけた」
「いえ、ご無事で何よりです」
「状況は、どうなっている」
「教会の包囲は、続いています」
「でも、学院内への侵入は、今のところありません」
「学院長が、交渉を続けているようです」
「学院長は、どこだ」
「学院長室にいるはずです」
「分かった。話をしてくる」
学院長室へ向かった。
「学院長」
「ギルバート君! 無事だったか」
「はい。なんとか、脱出できました」
「カイ君も......」
「はい。彼も、無事です」
「よかった......」
「だが、状況は厳しい」
「教会は、カイの引き渡しを求めています」
「分かっています」
「応じるつもりは、ありません」
「......」
「学院長、お願いがあります」
「何だ」
「訓練生たちを、逃がしてください」
「逃がす?」
「俺たちは、教会に追われています」
「学院にいれば、彼らも巻き込まれる」
「だから、先に逃がしてほしい」
「どこへ」
「王国の外。東の大陸連合へ」
「亡命、ということか」
「はい」
「......」
学院長は、しばらく考えた。
「分かった。手配しよう」
「ありがとうございます」
「だが、君たちはどうするんだ」
「俺たちも、亡命します」
「教会と戦い続けるために」
「深淵王と戦うために」
「そうか......」
「君たちには、感謝している」
「この学院を、何度も救ってくれた」
「......」
「だが、これ以上は守れない」
「分かっています」
「俺たちは、自分たちの道を行きます」
「最後に、一つだけ」
「何ですか」
「地下通路を使いなさい」
「地下通路?」
「学院には、秘密の地下通路がある」
「国境まで、繋がっている」
「それを使えば、追手をかわせる」
「そんなものが......」
「古くからある、脱出路だ」
「非常時のために、用意されていた」
「......ありがとうございます」
「入り口は、図書館の奥だ」
「本棚の後ろに、隠し扉がある」
「分かりました」
ルークは、仲間たちのもとに戻った。
「みんな、集まってくれ」
「重要な話がある」
訓練生たちが、集まった。
「ルーク様、何でしょうか」
「俺たちは、王国を出る」
「......!」
「亡命、ということですか」
「そうだ」
「教会と対立した以上、ここにはいられない」
「俺たちを、追ってくる者がいる」
「お前たちまで、巻き込みたくない」
「だから、別々に逃げる」
「嫌です」
リオンが言った。
「俺たちも、一緒に行きます」
「リオン......」
「ルーク様に、ここまで鍛えてもらった」
「恩を返さずに、逃げるわけにはいきません」
「「俺たちも、同意見です!」」
「お前たち......」
「俺たちは、ルーク様の部下です」
「一緒に、戦わせてください」
「......」
ルークは、彼らの顔を見た。
皆、真剣な目をしていた。
「......分かった」
「だが、これは命令じゃない」
「自分で選べ」
「俺についてくるか、ここに残るか」
「ついていきます」
「「「ついていきます!」」」
全員が、同じ答えだった。
「......ありがとう」
「礼は、無事に逃げ切ってからです」
「そうだな」
「では、作戦を説明する」
「地下通路を使って、国境を目指す」
「そこから、東の大陸連合へ向かう」
「地下通路?」
「学院長が、教えてくれた」
「図書館の奥に、隠し扉がある」
「そこから、国境まで行ける」
「準備を急ごう」
「必要な物資を、集めてくれ」
「「「はい!」」」
準備が整った。
「全員、揃ったか」
「はい」
「では、行くぞ」
図書館へ向かった。
「ここだ」
「本棚の後ろに、隠し扉がある」
「探すぞ」
「ここです!」
「隠し扉、見つけました!」
「よし、開けろ」
扉が開いた。
「暗いな......」
「灯りを」
「はい」
「この先に、地下通路が続いている」
「国境まで、どれくらいだ」
「分からない。だが、急ごう」
一行は、地下通路に入った。
「進め」
「足元に、気をつけろ」
「はい」
長い通路が、続いていた。
「どこまで、続いているんだ......」
「分からない。でも、進むしかない」
数時間後。
「光が見える......」
「出口か」
「行ってみよう」
出口に着いた。
「ここは......」
「森の中だ」
「国境は、近いはずだ」
「外に出よう」
「だが、警戒しろ」
「追手が、いるかもしれない」
外に出た。
「今のところ、追手はいないようだ」
「よし、国境を目指そう」
森を進んでいく。
「ルーク様」
「どうした、リオン」
「向こうに、何かいます」
「......追手か」
「いえ、違うようです」
「......」
前方に、人影があった。
「誰だ」
「......」
「俺だ」
「その声......」
「マーカスか......!」
マーカス・ヴァレンティンが、そこにいた。
「マーカス......なぜ、ここに」
「お前たちを、助けに来た」
「助けに? お前が?」
「信じられないだろうが、本当だ」
「俺は、教会のやり方に反対だ」
「お前は、俺たちと敵対していたはずだ」
「ああ。だが、状況が変わった」
「教会は、行き過ぎた」
「カイ・レイナーを道具にするなど、許せない」
「......」
「俺も、馬鹿じゃない」
「教会が暴走すれば、王国も滅ぶ」
「それを、止めなければならない」
「だから、お前たちを助けることにした」
「国境の警備を、手薄にしておいた」
「今なら、通過できる」
「......信用していいのか」
「信用しなくてもいい」
「だが、今は協力するしかないだろう」
「......分かった」
「案内してくれ」
「ついてこい」
マーカスの案内で、国境へ向かった。
「あそこが、国境だ」
「警備は、最小限にしてある」
「今のうちに、渡れ」
「マーカス、お前はどうするんだ」
「俺は、残る」
「王国の内部から、教会を牽制する」
「......すまない」
「礼は、いらない」
「俺は、俺の信念に従っているだけだ」
「......」
「行け。時間がない」
「......ああ」
一行は、国境を渡った。
「渡れた......」
「ここからは、大陸連合の領土だ」
「追手は、簡単には来られない」
「やった......」
「「「脱出、成功だ......!」」」
だが、ルークの表情は晴れなかった。
「まだ、終わりじゃない」
「俺たちは、亡命者だ」
「新しい戦いが、始まる」
「分かっています」
「でも、まずは一息つきましょう」
「ああ......」
国境を越えた先で、一行は休息を取った。
「ここまでは、来れた......」
「次は、どこへ向かうんですか」
「大陸連合の首都だ」
「そこで、何を」
「同盟を結ぶ」
「深淵王と戦うために」
「大陸連合は、協力してくれるでしょうか」
「分からない」
「だが、交渉するしかない」
「俺たちには、カイがいる」
「深淵王に対抗できる唯一の力だ」
「それを、武器にする」
「武器......」
「カイを、また道具にするんですか」
リオンが、不安そうに言った。
「違う」
「カイを、対等な交渉相手として扱う」
「彼の力を、彼自身の意志で使ってもらう」
「それが、俺たちのやり方だ」
「......」
「カイ、お前はどう思う」
「僕は......」
「僕は、戦いたいです」
「自分の意志で」
「ルークと、サラさんと、みんなと一緒に」
「なら、決まりだ」
「俺たちは、対等な仲間だ」
「誰も、道具じゃない」
「ルーク様......」
「さあ、休んだら出発だ」
「大陸連合の首都を、目指そう」
「「「はい!」」」
亡命の旅が、始まった。
行き先には、未知の世界が待っていた。
だが、彼らは──諦めなかった。
次回予告
国境を越えた一行。
だが、教会内部では分裂が始まっていた。
そして、意外な協力者が現れる──
第4話「教会の分裂」
「教会の中にも、反対派がいる」
「俺たちは、一人じゃない」
希望の光が、見え始める──




