第4部「学院崩壊篇:早期覚醒と亡命」第1話「帰還と監禁」
深淵王アザルの名が現れてから、一週間が経った。
三人は、学院に戻っていた。
「状況は、どうなっている」
「深淵の裂け目は、今のところ安定しています」
「だが、いつまで持つか分からない」
その日、予想外の来訪者があった。
「教会の使者が、来ています」
「教会? 何の用だ」
「カイ・レイナー殿に、お話があると」
カイは、使者に会った。
「カイ・レイナー殿」
「何でしょうか」
「大司教様が、お会いしたいと」
「大司教......」
あの陰謀の黒幕。
「断る」
ルークが言った。
「カイを、教会には渡さない」
「これは、命令ではありません。招待です」
「招待だろうが何だろうが、断る」
「......」
「しかし、断れば──」
「断れば、どうなる」
「教会として、然るべき措置を取らざるを得ません」
「脅しか」
「事実を申し上げているだけです」
「帰れ」
「ギルバート様......」
「カイは、俺の弟子だ。教会の道具にはさせない」
「......覚えておいてください」
使者は、去っていった。
「まずいわね」
サラが言った。
「教会と、完全に対立した」
「仕方ない」
「でも、次は何を仕掛けてくるか......」
「警戒を続けよう」
翌日。
教会が、動いた。
「大変です!」
「何があった」
「教会の兵士が、学院を取り囲んでいます!」
「何だと......」
窓から見ると、教会の兵士が大勢いた。
「百人以上......」
「完全に、包囲されているわ」
「目的は、カイか」
「おそらく」
「カイ・レイナーを、引き渡せ!」
外から、声が聞こえた。
「さもなければ、実力で拘束する!」
「......」
「どうする、ルーク」
「応じない」
「でも、このままでは......」
「学院長に、協力を求める」
「学院長が、教会に逆らえるの」
「やるしかない」
学院長室へ向かった。
「学院長、状況はご存知ですか」
「ああ。教会が、包囲している」
「対処を、お願いします」
「......」
「ギルバート君、正直に言おう」
「何ですか」
「私には、教会に逆らう力がない」
「......」
「学院は、教会から多くの支援を受けている」
「逆らえば、運営が立ち行かなくなる」
「では、カイを引き渡すと」
「そうは言っていない」
「だが、対処は難しい」
「......」
「時間を稼ぐことしか、できない」
「時間......」
「交渉する。一週間の猶予を求める」
「一週間で、何ができますか」
「逃げることは、できる」
「逃げる......」
「それしか、方法がないかもしれない」
学院長は、教会と交渉した。
「一週間の猶予を、いただきたい」
「なぜ」
「カイ・レイナーの身柄について、検討が必要です」
「......」
「一週間あれば、回答できます」
「......いいだろう。一週間だ」
「一週間の猶予を、得た」
「ありがとうございます」
「だが、一週間後には──」
「分かっています」
「逃げる準備を、しなければ」
三人は、作戦会議を開いた。
「逃げるしかない」
「どこへ」
「学院の外。できれば、教会の手が届かない場所」
「そんな場所、あるの」
「探す」
「訓練生たちは、どうする」
「連れて行けない」
「全員を連れては、逃げられない」
「......」
「彼らは、ここに残す」
「大丈夫かしら」
「リオンに、任せる」
「リオンに?」
「あいつは、信頼できる」
「訓練生たちをまとめて、守ってくれるはずだ」
「分かったわ」
だが、三日後。
予定より早く、教会が動いた。
「カイ・レイナーを、拘束する!」
「何だと......!」
「約束の一週間は、まだ──」
「状況が変わった」
教会の兵士たちが、突入してきた。
「カイ!」
「ルーク......!」
「逃げろ!」
「でも......」
「俺が、時間を稼ぐ!」
ルークは、兵士たちの前に立ちはだかった。
「通さない」
「どけ、ギルバート!」
「断る」
「ならば、実力で......」
「やってみろ」
戦闘が始まった。
だが、数が多すぎた。
「くそっ......」
「ルーク様!」
「サラ、カイを連れて......!」
「でも......」
「俺は大丈夫だ! 行け!」
だが、サラとカイも、捕らえられた。
「くっ......」
「抵抗しても、無駄だ」
「カイ・レイナー、拘束する」
「離せ......!」
三人は、教会の施設に連行された。
「ここは......」
「教会の拘留施設だ」
「カイは、別の場所に......」
「連れて行かれた......」
「カイ......」
ルークは、拳を握りしめた。
「必ず、助け出す」
「どうやって」
「まだ、分からない」
「だが、必ず」
教会の監禁施設。
カイは、一人で閉じ込められていた。
「ルーク......サラさん......」
「どうなっているんだろう......」
「僕は......」
扉が開いた。
「カイ・レイナー」
「大司教......」
「ようやく、会えたな」
「僕を、どうするつもりですか」
「お前の力を、利用させてもらう」
「利用......」
「深淵王を制御するためにな」
「制御? そんなこと、できるわけが......」
「できる。お前の加護があれば」
「断ります」
「断る? 選択肢はないのだよ」
「......」
「明日、儀式を行う」
「お前の加護を、我々の道具にする」
「そんな......」
カイは、絶望した。
だが、希望は──まだ、消えていなかった。
次回予告
教会が、カイの加護を"鎖"にする儀式を行う。
カイの心が、壊れかける。
だが、ルークは諦めていなかった──
第2話「拘束の恩寵」
「加護を、道具にする......」
「俺は、必ずカイを救う」
絶望の中の、希望──




