第13話「境界の咆哮」
夜襲から、数日が経った。
学院は、復興作業に追われていた。
「被害は、予想より少なかったわね」
「カイが、早く裂け目を塞いでくれたおかげだ」
* * *
だが、不穏な報告が届いた。
「ルーク様、大変です」
「何があった」
「各地で、深淵の裂け目が報告されています」
「各地で......」
* * *
「北の国境に、三箇所」
「東の海岸沿いに、二箇所」
「南の山岳地帯に、四箇所」
「合計、九箇所の裂け目が確認されました」
* * *
「九箇所......」
「これは、偶然じゃないわね」
「ああ。封印が、全体的に弱まっている」
「深淵王が、目覚めようとしている」
* * *
「どうすればいいんですか」
カイが尋ねた。
「全ての裂け目を、塞ぐしかない」
「でも、僕一人では......」
「一人じゃない」
* * *
「俺たちで、手分けする」
「手分け?」
「カイだけに頼るわけにはいかない」
「他に、方法があるの?」
「封印の欠片を使う」
* * *
「封印の欠片......」
「以前、遺跡で見つけた石片だ」
「あれを、使うんですか」
「ああ。あれには、封印の力が宿っている」
「裂け目を塞ぐ補助になる」
* * *
「でも、九箇所を回るには......」
「時間がかかる」
「その間に、裂け目から深淵魔が......」
「分かっている」
「だから、優先順位をつける」
* * *
「優先順位?」
「最も危険な裂け目から、対処する」
「どうやって判断するの」
「情報を集める」
* * *
サラが、情報を整理した。
「北の国境が、最も危険そうね」
「なぜ」
「裂け目の大きさが、他より大きい」
「それに、近くに都市がある」
「放置すれば、大量の犠牲が出る」
* * *
「では、北から行く」
「はい」
「カイ、体は大丈夫か」
「はい。もう、回復しました」
「よし。出発しよう」
* * *
三人は、北の国境へ向かった。
「見えた......あれが、裂け目か」
巨大な裂け目が、空間を引き裂いていた。
「でかい......」
* * *
「深淵魔も、出ているわね」
「五十体以上......」
「まず、これを片付ける」
「はい」
* * *
戦闘が始まった。
「はあっ!」
ルークの剣が、深淵魔を斬り裂く。
「サラ、右側を!」
「分かったわ!」
* * *
「カイ、裂け目に近づくな。まだ危険だ」
「分かりました」
「俺たちが道を開く。それまで待て」
「はい」
* * *
激しい戦闘が続いた。
「十体! 二十体!」
「こっちも、十五体倒したわ!」
「残り、二十体程度......!」
* * *
「今のうちだ、カイ!」
「はい!」
カイは、裂け目に向かって走った。
「封印の欠片と、加護の力を合わせて......!」
* * *
「......!」
封印の欠片が、光を放った。
「共鳴している......」
カイの加護と、欠片の力が共鳴する。
「この力で......!」
* * *
「封じる......!」
カイは、全力で裂け目に力を放った。
「......!」
裂け目が、少しずつ閉じていく。
* * *
「もう少し......」
「カイ、頑張れ......!」
「閉じろ......!」
* * *
「......!」
裂け目が、完全に閉じた。
「やった......」
「カイ!」
「大丈夫です......今度は、倒れませんでした」
* * *
「成長したな」
「ルークのおかげです」
「いや、お前自身の力だ」
「......ありがとうございます」
* * *
「一つ目、終了ね」
「ああ。残り八つ」
「先は長いわね」
「だが、やるしかない」
* * *
次の裂け目へ向かった。
「東の海岸沿い......」
「ここにも、二つあるのよね」
「ああ。効率的に回ろう」
* * *
二つ目の裂け目を塞いだ。
三つ目も、塞いだ。
「三つ目、完了」
「カイ、疲れていないか」
「少し......でも、まだ行けます」
* * *
「無理はするな」
「大丈夫です」
「体を壊したら、意味がない」
「......分かりました」
「今日は、ここまでにしよう」
* * *
野営をした。
「残り、六つ......」
「このペースなら、あと二日」
「深淵魔の被害は、どうなっているかしら」
「各地の軍が、抑えているはずだ」
「だといいわね」
* * *
翌日、旅を続けた。
「四つ目......」
「五つ目......」
「六つ目......」
着実に、裂け目を塞いでいく。
* * *
「残り三つ」
「もう少しだ」
「カイ、大丈夫?」
「はい......でも、正直、きついです」
「......」
* * *
「休もう」
「でも......」
「お前が倒れたら、元も子もない」
「......分かりました」
* * *
休息を取った後、残りの裂け目へ。
「七つ目......」
「八つ目......」
そして、最後の裂け目。
* * *
「これが、最後」
「南の山岳地帯......」
「一番大きな裂け目が、残っている」
「気を引き締めていこう」
* * *
最後の裂け目は、巨大だった。
「これは......」
「今までで、一番大きい」
「塞げるでしょうか」
「やってみるしかない」
* * *
「深淵魔も、百体以上......」
「まず、これを片付ける」
「俺とサラで、道を開く」
「カイは、準備しておけ」
「はい」
* * *
激しい戦闘が始まった。
「来い......!」
ルークとサラが、前線で戦う。
「五十体......七十体......」
「こっちも、三十体......!」
* * *
「カイ、今だ!」
「はい......!」
カイは、最後の力を振り絞った。
「封印の欠片......加護の力......」
「全て、合わせて......!」
* * *
「はあああああ......!」
* * *
「......!」
巨大な光が、裂け目を包んだ。
「閉じろ......!」
* * *
「......」
裂け目が、ゆっくりと閉じていく。
「もう少し......」
「......」
「閉じた......!」
* * *
「やった......」
「カイ!」
「全ての裂け目を、塞げました......」
カイは、その場に座り込んだ。
「疲れた......」
* * *
「よくやった」
「本当に、よくやったわ」
「ありがとうございます......」
「帰ろう。お前には、休息が必要だ」
「はい......」
* * *
全ての裂け目を塞いだ。
だが、これは一時的な措置に過ぎなかった。
「封印自体が弱まっている」
「いずれ、また裂け目が開く」
「根本的な解決には、ならないわね」
* * *
「ああ。深淵王を倒さない限り」
「この問題は、解決しない」
「......」
「俺たちは、決戦に向けて準備を続ける」
「そうね」
* * *
次回予告
* * *
全ての裂け目を塞いだ三人。
だが、上層部から予想外の命令が。
撤退──それは、覚醒を促す罠だった。
第14話「撤退命令」
「撤退しろ、だと......」
「何か、おかしい」
陰謀が、動き出す──




