第12話「夜襲」
その夜は、静かに始まった。
ルークは、書斎で調べ物をしていた。
「深淵王アザル......」
「目覚めるまでに、どれくらいの時間がある」
* * *
突然、警報が鳴り響いた。
「何事だ......!」
窓の外を見ると、異様な光景が広がっていた。
「深淵魔......!」
* * *
学院の周囲に、深淵魔の大群が押し寄せていた。
「馬鹿な......こんな数......」
「百......いや、二百以上......」
「なぜ、こんなところに......」
* * *
「ルーク!」
カイが駆け込んできた。
「深淵魔が......!」
「見た。サラは」
「もう、外に出ています」
「俺も行く。お前もだ」
「はい!」
* * *
外に出ると、混乱していた。
「深淵魔だ!」
「逃げろ!」
「誰か、助けて!」
学生たちが、パニックになっていた。
* * *
「落ち着け!」
ルークが叫んだ。
「戦える者は、前に出ろ!」
「戦えない者は、建物の中へ!」
「俺たちが、食い止める!」
* * *
「ルーク様!」
訓練生たちが、駆けつけた。
「俺たちも、戦います!」
「よし。陣形を組め」
「「「はい!」」」
* * *
「サラ!」
「こっちは、何とか持ちこたえてるわ!」
「カイは」
「前線で、戦ってます!」
「よし。俺も行く」
* * *
ルークは、前線に向かった。
「はあっ!」
深淵魔を、次々と斬り捨てる。
「一体! 二体! 三体!」
だが、倒しても倒しても、次々と湧いてくる。
* * *
「きりがない......!」
「どこから、来ているんだ......!」
「発生源を、見つけないと......!」
* * *
「カイ!」
「ルーク!」
「発生源を探せ! どこかに、裂け目があるはずだ!」
「分かりました!」
カイは、加護の力で探索を始めた。
* * *
「......見つけた......!」
「どこだ」
「学院の北側......地下からです......!」
「地下......やはり、封印か」
「おそらく......」
* * *
「俺が行く。お前は、ここを守れ」
「でも......」
「一人で大丈夫だ。お前は、学生たちを守ってくれ」
「......分かりました」
* * *
ルークは、北側へ向かった。
「地下への入り口......」
地下遺跡への扉が、開いていた。
「やはり、ここか」
* * *
地下に降りていく。
深淵の気配が、どんどん濃くなる。
「封印が......完全に破れかけている......」
* * *
奥に進むと、裂け目が見えた。
「これが、発生源か......」
巨大な裂け目から、深淵魔が次々と湧き出ていた。
「塞がないと......」
* * *
だが、一人では無理だった。
「カイの力が、必要だ......」
ルークは、引き返した。
* * *
「カイ!」
「ルーク! どうでした!」
「裂け目を見つけた。だが、俺一人では塞げない」
「僕の力が......」
「来てくれ」
「はい!」
* * *
「サラ、ここを頼む!」
「分かったわ! 任せて!」
「訓練生たち、サラの指示に従え!」
「「「了解!」」」
* * *
ルークとカイは、地下へ向かった。
「ここです......」
「ああ。見えた」
裂け目は、さらに大きくなっていた。
* * *
「僕の加護で、塞げるでしょうか」
「分からない。だが、やるしかない」
「......はい」
「俺が、深淵魔を抑える。お前は、裂け目に集中しろ」
「分かりました」
* * *
「来い......!」
ルークは、裂け目から出てくる深淵魔と戦い始めた。
「はあっ!」
一体、また一体と倒していく。
* * *
「集中して......」
カイは、裂け目に向かって加護の力を放った。
「封じる......!」
光が、裂け目に流れ込んでいく。
* * *
だが、裂け目は大きすぎた。
「くっ......力が、足りない......」
「カイ......!」
「もう少し......もう少しだけ......」
* * *
「俺も、限界が近い......」
深淵魔の数が、どんどん増えている。
「このままでは......」
* * *
「......!」
カイの体から、異常な光が溢れ始めた。
「カイ......!」
「大丈夫です......これなら......」
カイは、覚醒の手前まで力を引き出していた。
* * *
「はあああああ......!」
カイの加護が、最大限に解放された。
「......!」
* * *
光が、裂け目を包み込んだ。
「......!」
そして、裂け目は──
閉じた。
* * *
「やった......」
「カイ......!」
カイは、その場に崩れ落ちた。
「カイ! 大丈夫か!」
「はい......なんとか......」
* * *
「裂け目は、閉じたようだな」
「はい......」
「よくやった」
「ありがとう、ございます......」
カイは、意識を失った。
* * *
ルークは、カイを抱えて地上へ戻った。
「戦況は」
「深淵魔が、消え始めています!」
「裂け目が閉じたからだ」
「やりました......!」
* * *
「カイは......」
「気絶しているだけだ。すぐに、医務室へ」
「分かりました!」
* * *
翌朝。
カイが、目を覚ました。
「ここは......」
「医務室だ」
「ルーク......」
「無茶しやがって」
* * *
「深淵魔は......」
「全て倒した。お前のおかげだ」
「よかった......」
「だが、お前は倒れた」
「すみません......」
* * *
「謝るな。お前のおかげで、学院が救われた」
「本当ですか」
「ああ。英雄だ」
「英雄......」
「教会の英雄じゃない。本当の英雄だ」
* * *
「本当の、英雄......」
「自分の意志で、人を救った」
「......」
「それが、本当の英雄だ」
「ルーク......」
* * *
「ゆっくり休め。体を回復させろ」
「はい......」
「俺たちは、お前を待っている」
「ありがとうございます」
* * *
夜襲は、乗り越えた。
だが、これは──
より大きな危機の、序章に過ぎなかった。
* * *
次回予告
* * *
夜襲を乗り越えた学院。
だが、深淵の裂け目が各地で拡大していた。
そして、封印の欠片が共鳴し始める──
第13話「境界の咆哮」
「裂け目が、増えている......」
「深淵王が、目覚めようとしている」
終末の足音が、近づく──




