第10話「剣姫の汚名」
容疑は晴れた。
だが、サラの評判は──傷ついていた。
「噂が、消えないわね」
「ああ」
「一度広まった悪評は、簡単には消えない」
* * *
「ヴァレンシュタインが、反逆者だったらしい」
「証拠不十分で、放免されただけだろう」
「でも、火のないところに煙は立たない」
ひそひそと囁かれる。
* * *
「悔しい......」
サラは、唇を噛んだ。
「私は、何もしていないのに」
「分かっている」
「でも、みんなが私を疑っている」
* * *
「名誉を、回復しないといけない」
「どうやって」
「実績を示す」
「実績?」
「言葉で否定しても、信じてもらえない」
「行動で、証明するしかない」
* * *
「行動で、証明......」
「何か、大きな功績を挙げる」
「そうすれば、噂は消える」
「でも、どうやって」
* * *
「ちょうど、機会がある」
ルークが言った。
「機会?」
「学院で、武術大会が開かれる」
「武術大会......」
「そこで優勝すれば、お前の名声は回復する」
* * *
「武術大会......」
「剣姫と呼ばれた、お前の実力を見せつけろ」
「剣姫......」
「昔の異名だろう」
「ええ。でも、今は......」
「今こそ、その名に恥じない戦いを見せる時だ」
* * *
「......分かったわ」
サラは決意した。
「優勝する」
「その意気だ」
「私の名誉を、自分の手で取り戻す」
「俺たちも、応援する」
* * *
武術大会の日が来た。
「サラ、準備はいいか」
「ええ」
「緊張しない?」
「少しね。でも、大丈夫」
「よし」
* * *
「サラ・ヴァレンシュタイン、出場します」
「おお、反逆者が出るのか」
「見物だな」
「負けたら、笑ってやろう」
観客席から、嫌味が聞こえる。
* * *
「......」
サラは、動じなかった。
「行ってくるわ」
「頑張れ」
「勝ってこい」
「ありがとう」
* * *
一回戦。
「サラ・ヴァレンシュタイン対エリザベス・ホフマン」
「始め!」
* * *
「はあっ!」
サラが、一気に距離を詰めた。
「速い......!」
「終わりよ」
一撃で、相手を倒した。
* * *
「勝者、サラ・ヴァレンシュタイン!」
「......強い」
「さすが、剣姫......」
観客席がざわめいた。
* * *
二回戦、三回戦と勝ち進んだ。
「圧倒的ね」
「ああ。サラの実力は、本物だ」
「誰も、太刀打ちできていない」
* * *
「次は、準決勝か」
「相手は?」
「マルクスの配下の一人」
「手強そうね」
「だが、サラなら勝てる」
* * *
準決勝。
「サラ・ヴァレンシュタイン対ヴィクター・シュミット」
「お前が、反逆者か」
「反逆者ではないわ」
「どちらでもいい。ここで、叩き潰す」
「やってみなさい」
* * *
「始め!」
ヴィクターが、激しく攻撃した。
「はあっ!」
「っ......!」
サラは、攻撃を受け止めた。
「力押しね」
* * *
「どうした、これだけか」
「まだよ」
サラが反撃に転じた。
「っ!」
精密な剣術が、ヴィクターを追い詰める。
* * *
「くそっ......」
ヴィクターは防戦一方になった。
「これで、終わり」
サラの剣が、ヴィクターの武器を弾いた。
「参った......」
「勝者、サラ・ヴァレンシュタイン!」
* * *
「やったわ」
「決勝進出だ」
「あと一つ、勝てば......」
「優勝ね」
* * *
「決勝の相手は?」
「......マルクスよ」
「マルクス?」
「彼も、勝ち上がってきたわ」
「なるほど」
* * *
「因縁の対決ね」
「ああ」
「マルクスが、私を陥れようとした」
「その相手と、戦うことになるとはな」
「望むところよ」
* * *
決勝戦。
「サラ・ヴァレンシュタイン対マルクス・フォン・ヴェルナー」
「ついに、この時が来たな」
「ええ」
「お前を、この場で叩き潰す」
「それはこちらの台詞よ」
* * *
「始め!」
二人が、同時に動いた。
剣と剣がぶつかり合う。
「っ......!」
「ふん......!」
* * *
「やるな」
「あなたもね」
「だが、俺の方が強い」
「どうかしら」
* * *
激しい攻防が続いた。
「はあっ!」
「くっ......!」
どちらも、一歩も譲らない。
* * *
「サラ、頑張れ......!」
「負けるな......!」
ルークとカイが、声援を送る。
* * *
「邪魔だ」
マルクスが、渾身の一撃を放った。
「っ......!」
サラは、なんとか受け止めた。
「力は、お前の方が上ね」
「分かっているなら、降参しろ」
「断るわ」
* * *
「力で負けるなら、技で勝つ」
サラは、動きを変えた。
「何?」
「見切ったわ。あなたの動き」
「馬鹿な......」
* * *
サラの剣が、マルクスの隙を突いた。
「っ......!」
マルクスの体が、よろめいた。
「今よ」
* * *
「はあっ!」
サラの連撃が、マルクスを追い詰めた。
「くそっ......」
「終わりよ」
サラの剣が、マルクスの喉元に突きつけられた。
* * *
「......参った」
マルクスが、敗北を認めた。
「勝者、サラ・ヴァレンシュタイン!」
* * *
「「「おおおおお!」」」
歓声が上がった。
「剣姫、復活だ!」
「すごい、マルクスを倒した!」
「やはり、彼女は本物だ!」
* * *
「サラ、おめでとう」
「ありがとう」
「見事な勝利だったわ」
「いいえ、あなたたちの応援のおかげよ」
* * *
「これで、名誉は回復したわね」
「ああ。誰も、お前を疑う者はいない」
「反逆者の汚名は、晴れた」
「よかった......」
* * *
「サラ・ヴァレンシュタイン、優勝おめでとう」
学院長が、賞状を手渡した。
「ありがとうございます」
「お前の実力は、本物だ。誰も、疑う余地がない」
「光栄です」
* * *
表彰式の後。
「ルーク」
「何だ」
「ありがとう」
「何のことだ」
「私を、信じてくれて」
「当然のことだ」
* * *
「でも......」
「お前は、俺の仲間だ」
「......」
「仲間を、見捨てるわけがない」
「ルーク......」
「これからも、よろしく頼む」
「ええ。こちらこそ」
* * *
剣姫の汚名は、晴れた。
サラは、自分の手で名誉を取り戻した。
「これで、また前に進める」
「ああ」
「三人で、世界を救おう」
「「はい」」
* * *
次回予告
* * *
サラの名誉は回復した。
だが、カイの前に新たな問題が。
英雄か、自由か──選択を迫られる。
第11話「カイの選択」
「英雄になれ、と言われている」
「でも、僕は......」
カイの葛藤が、始まる──




