第8話「封印の欠片」
エドワードの裏切りが発覚してから、数日。
三人は、彼の行方を追っていた。
「手がかりは」
「一つだけ。エドワードが、古い遺跡に向かったという目撃情報」
「古い遺跡?」
「学院から南に、半日ほどの場所」
* * *
「行ってみよう」
「危険かもしれないわ」
「分かっている。だが、放置もできない」
「確かに」
「カイ、お前も来るか」
「はい。もちろんです」
* * *
三人は、遺跡へ向かった。
「見えた。あれか」
「古い建造物ね」
「入ってみよう」
* * *
遺跡の中は、不気味に静まり返っていた。
「誰もいないみたいだな」
「エドワードは、どこに......」
「奥に、何かある」
* * *
遺跡の奥に、祭壇があった。
「これは......」
祭壇の上に、光る石片があった。
「何だ、あれ」
「触らない方がいいわ」
「分かっている」
* * *
「でも、あれは......」
カイが近づいた。
「僕の加護が、反応してます」
「反応?」
「あの石片と、共鳴している感じがします」
* * *
「共鳴......」
「前にも、こんな感覚がありました」
「いつ」
「地下遺跡の、封印の近くで」
「......!」
* * *
「あれは、封印の欠片か」
「封印の欠片?」
「深淵王アザルを封じた、封印の一部」
「なぜ、こんなところに」
「分からない。だが......」
* * *
「持ち帰った方がいいかしら」
「危険だ」
「でも、放置すれば、誰かに悪用されるわ」
「確かに......」
「カイ、触れられるか」
* * *
「やってみます」
カイは、慎重に石片に手を伸ばした。
「......!」
触れた瞬間、光が溢れた。
「カイ!」
* * *
「大丈夫......です......」
「何が起きた」
「分かりません......でも、何か......」
「何か?」
「見られている気がします」
* * *
「見られている?」
「誰かが、こちらを見ている......」
「誰が」
「分かりません......でも、とても大きな存在が......」
「......!」
* * *
「深淵王だ」
ルークは確信した。
「深淵王アザルが、こちらを見ている」
「そんな......」
「封印の欠片を通じて、視線が届いている」
* * *
「カイ、手を離せ」
「は、はい......」
カイが手を離すと、光は収まった。
「......」
「大丈夫か」
「はい......少し、怖かったです」
* * *
「深淵王に、見られていた」
「どういうこと」
「封印が弱まっているから、視線が届くようになった」
「視線だけ?」
「今は、そうだ。だが、いずれ......」
「封印が破れれば、実体が......」
「そうだ」
* * *
「石片は、どうする」
「持ち帰る」
「危険じゃない?」
「放置する方が危険だ」
「分かったわ」
* * *
カイは、再び石片に触れた。
「今度は、大丈夫です」
「視線は」
「感じません」
「さっきのは、一時的なものだったのか」
「おそらく」
* * *
石片を持ち帰ることにした。
「これで、封印の一部を確保した」
「敵に渡さずに済んだわね」
「ああ」
「エドワードは、これを狙っていたのかも」
* * *
「おそらく、そうだ」
「教会と繋がっていたなら......」
「教会が、封印の欠片を集めている」
「目的は?」
「分からない。だが、ろくなことじゃない」
* * *
学院に戻った。
「石片を、安全な場所に保管しよう」
「どこがいいかしら」
「俺の部屋に、隠し金庫がある」
「そこなら、安全ね」
* * *
「しかし......」
「どうした」
「深淵王に、見られていた」
「ああ」
「あの存在が、目覚めようとしている」
「原作より、早く」
* * *
「俺たちのせいだな」
「せい?」
「カイを強くしすぎた」
「それで、均衡が崩れた」
「深淵王が、早く目覚めようとしている」
* * *
「後悔してる?」
「いいや」
「なら、いいじゃない」
「そうだな」
「起きたことは、仕方ない。対処するだけよ」
「ああ」
* * *
「カイ」
「はい」
「深淵王を見た時、何を感じた」
「......」
「正直に言ってくれ」
* * *
「怖かった、です」
「怖い?」
「あの存在は......とてつもなく大きかった」
「......」
「僕なんかじゃ、到底かなわないと思いました」
* * *
「それは、当然の感覚だ」
「ルーク......」
「深淵王は、この世界最強の存在だ」
「......」
「だが、怖がる必要はない」
「え?」
* * *
「お前は、一人じゃない」
「......」
「俺がいる。サラがいる。仲間がいる」
「......」
「みんなで戦えば、勝てる」
「本当に......勝てますか」
* * *
「勝つ」
ルークは断言した。
「俺は、そのために動いている」
「......」
「お前を強くし、仲間を集め、準備を整える」
「......」
「そして、深淵王が目覚めた時──」
「俺たちで、倒す」
* * *
「......はい」
カイは、少し安心した顔になった。
「信じます」
「よし」
「ルークを信じます」
「ああ。その信頼に、応える」
* * *
「私も、手伝うわ」
サラが言った。
「三人なら、何でもできる」
「ありがとう」
「これからも、一緒に戦いましょう」
「「はい」」
* * *
封印の欠片は、確保した。
だが、深淵王の影は──
確実に、近づいていた。
* * *
「俺たちは、時間と戦っている」
ルークは、夜空を見上げた。
「深淵王が目覚める前に、準備を整えなければ」
「そのために、できることを全てやる」
* * *
次回予告
* * *
物語補正が、動き出す。
新たな"ざまぁ"の標的は──サラ。
濡れ衣を着せられ、処分の危機に。
第9話「台本の修復」
「サラが、反逆者だと......」
「嘘よ。私は、裏切っていない」
運命が、牙をむく──




