第7話「裏切りの報告書」
次の聖地を目指す旅の途中。
三人は、不穏な気配を感じていた。
「ルーク、最近......」
「ああ。俺も感じている」
「誰かに、尾行されている気がするわ」
* * *
「尾行だけじゃない」
ルークは言った。
「俺たちの動きが、読まれている」
「読まれている?」
「先回りされている気がする」
* * *
「先回りって......」
「前の町で、盗賊に襲われた」
「ええ」
「あの盗賊、俺たちが来ることを知っていた」
「えっ......」
「待ち伏せされていた、ということ?」
* * *
「そうだ」
「でも、どうやって......」
「誰かが、情報を漏らしている」
「誰かって......」
「俺たち三人以外に、知っている者がいる」
* * *
「三人以外......」
サラが考え込んだ。
「学院に残してきた、訓練生たちのこと?」
「ああ」
「でも、彼らは信頼できるわ」
「本当にそうか?」
* * *
「エドワードがいる」
「エドワード......」
「元裏切り者だ」
「でも、彼は改心したんじゃ......」
「改心した、ふりかもしれない」
* * *
「確認する方法は」
「学院に、連絡を取る」
「どうやって」
「伝書鳩を使う」
「伝書鳩?」
「出発前に、何羽か持ってきた」
* * *
ルークは、伝書鳩に手紙を託した。
『リオンへ。エドワードの動きを報告せよ。詳細は慎重に。──ルーク』
「これで、しばらく待つ」
「返事が来るまで、どうする」
「警戒しながら、旅を続ける」
* * *
数日後。
伝書鳩が、返事を持って戻ってきた。
「来たわ」
「読んでみよう」
* * *
『ルーク様へ。エドワードについて、不審な点を発見しました。彼は夜中に、こっそり外出しています。行き先は不明ですが、教会の関係者と接触している可能性があります。──リオン』
* * *
「教会......」
「やはり、裏切っていたのか」
「でも、まだ確証はないわ」
「確証を得る必要がある」
* * *
「どうやって」
「罠を仕掛ける」
「罠?」
「偽の情報を、エドワードに流す」
「それが漏れれば、黒だと分かる」
「そういうことだ」
* * *
ルークは、もう一通手紙を書いた。
『リオンへ。エドワードにだけ、次の情報を伝えろ。「俺たちは、来週、東の遺跡に向かう」と。他の者には、絶対に言うな。──ルーク』
「これで、確認できる」
「東の遺跡に、罠が仕掛けられていれば......」
「エドワードが黒、ということだ」
* * *
一週間後。
三人は、東の遺跡に向かった。
「何もないわね」
「いや、待て」
* * *
遺跡の入り口に、人影があった。
「誰かいる」
「教会の者たちだ」
「やはり......」
* * *
「待ち伏せね」
「ああ。エドワードが、情報を漏らした」
「確定したわ」
「くそっ......」
* * *
「どうする」
「ここは、引き返す」
「戦わないの」
「戦う意味がない。目的は、確認だ」
「分かったわ」
* * *
三人は、静かに引き返した。
「バレなかったようね」
「ああ」
「これで、エドワードが裏切り者だと分かった」
「どうする」
* * *
「学院に戻らなければ」
「え?」
「訓練生たちが、危険だ」
「確かに......」
「エドワードが内部にいる限り、安全じゃない」
* * *
「でも、聖地巡礼は......」
「一時中断だ」
「そんな......」
「仲間を、見捨てられない」
「......」
「カイ、お前はどう思う」
* * *
「僕も、学院に戻りたいです」
「そうか」
「リオンたちが、心配です」
「分かった。では、戻ろう」
「ええ」
* * *
急いで、学院に向かった。
「間に合うかしら」
「間に合わせる」
「でも、何日もかかるわ」
「走るんだ」
* * *
数日後。
学院に到着した。
「ようやく......」
「急いで、訓練生たちの元へ」
* * *
訓練場に、訓練生たちがいた。
「ルーク様!」
「リオン、無事か」
「はい。でも......」
「どうした」
「エドワードが、姿を消しました」
* * *
「姿を消した?」
「はい。三日前から、行方不明です」
「逃げたか......」
「おそらく」
「俺たちが、気づいたことに気づいたんだ」
* * *
「くそっ......」
ルークは拳を握りしめた。
「信じていたのに」
「ルーク......」
「俺の判断ミスだ」
* * *
「あなたのせいじゃないわ」
サラが言った。
「彼は、巧妙に隠していた」
「それでも......」
「過去を悔やんでも仕方ない。今、やるべきことを考えましょう」
* * *
「そうだな」
「エドワードが漏らした情報の範囲を、確認しよう」
「分かった」
「そして、今後の対策を立てる」
「ああ」
* * *
「リオン、エドワードが知っていたことを全て教えてくれ」
「はい」
「訓練内容、メンバー構成、活動計画......」
「全部、知っています」
「まずいわね」
* * *
「敵に、全て筒抜けか」
「おそらく」
「だが、今更隠しても仕方ない」
「どうするの」
「作戦を、変更する」
* * *
「変更?」
「敵が知っている作戦は、使わない」
「なるほど」
「新しい作戦を、立て直す」
「それなら、教会も読めないわね」
「そうだ」
* * *
「みんな、聞いてくれ」
ルークは、訓練生たちに言った。
「エドワードは、裏切り者だった」
「......」
「彼が漏らした情報は、全て敵に知られている」
「そんな......」
* * *
「だが、諦めるな」
「......」
「作戦を変える。新しく、一から作り直す」
「はい......」
「お前たちを信じている。だから、俺も裏切らない」
「ルーク様......」
* * *
「これからも、一緒に戦おう」
「「「はい!」」」
訓練生たちの声が、揃った。
「よし。では、作戦会議を始める」
* * *
裏切りは、痛手だった。
だが、三人は──
その逆境を、乗り越えようとしていた。
* * *
次回予告
* * *
エドワードを追跡し、遺跡で新たな発見が。
封印の欠片──深淵王アザルとの繋がりが。
そして、"視線"が届く──
第8話「封印の欠片」
「これは......封印の一部?」
「深淵王が、こちらを見ている」
恐怖が、迫る──




