第6話「英雄の代償」
聖域を浄化した三人は、麓の町に戻った。
「おお、帰ってきたぞ!」
「聖域の深淵魔を、倒したらしい!」
「英雄だ!」
町中に、噂が広まっていた。
* * *
「英雄......」
カイは、戸惑っていた。
「僕たち、英雄になってます」
「そのようだな」
「望んでないのに......」
「仕方ない。聖域を救ったのは事実だ」
* * *
「歓迎会を開きたい!」
町長が、三人を訪ねてきた。
「あなたたちのおかげで、聖域が守られた」
「大したことはしていない」
「謙遜するな。英雄だよ、あなたたちは」
* * *
「英雄など、望んでいない」
ルークは言った。
「俺たちは、ただ旅をしているだけだ」
「それでも、結果として人々を救った」
「......」
「歓迎会くらい、受けてくれ」
* * *
「行きましょう」
サラが言った。
「断ると、角が立つわ」
「......分かった」
「一晩だけ、付き合おう」
「ありがとう!」
* * *
歓迎会は、盛大だった。
「乾杯! 英雄たちに!」
「「「乾杯!」」」
町中の人々が、集まっていた。
* * *
「カイ様、サインをください!」
「え、僕に?」
「あなたが、深淵魔を倒したんでしょう?」
「えっと、まあ......」
「すごいです! 尊敬します!」
「あ、ありがとうございます......」
* * *
「ルーク様、お話を聞かせてください!」
「話?」
「どうやって、あんな大群を倒したんですか?」
「......戦っただけだ」
「謙虚ですね! さすが英雄!」
「......」
* * *
「サラ様、お美しいですね!」
「ありがとう」
「女性でありながら、あんな戦いを......」
「女性だから、とか関係ないわ」
「かっこいい!」
* * *
宴は、夜遅くまで続いた。
「疲れた......」
「ああ」
「人気者は、大変ね」
「望んでいないのに」
* * *
翌日、出発しようとした時。
「待ってください!」
町の人々が、集まってきた。
「何だ」
「一つ、お願いがあります」
* * *
「お願い?」
「隣町で、問題が起きているんです」
「問題?」
「盗賊に襲われて、困っているんです」
「......」
「英雄様たちなら、助けてくれると......」
* * *
「俺たちは、旅の途中だ」
「分かっています。でも......」
「......」
「お願いします。英雄様」
* * *
「ルーク......」
カイが言った。
「助けられるなら、助けたい」
「......」
「僕たちは、力があるんです」
「......」
「その力を、使うべきだと思います」
* * *
「......分かった」
ルークは溜息をついた。
「隣町を、見てみよう」
「ありがとうございます!」
「だが、約束はできない」
「それでも、見てくれるだけで......」
* * *
隣町に向かった。
「ここか」
町は、荒れていた。
「ひどいわね」
「盗賊に、何度も襲われたらしい」
* * *
「助けてください、英雄様!」
「俺たちは、英雄じゃない」
「でも、聖域を救ったと......」
「......」
「お願いします。このままでは、町が......」
* * *
「情報を集めよう」
ルークは言った。
「盗賊の詳細を教えてくれ」
「はい」
* * *
「盗賊団は、約二十人」
「前に倒した連中とは、別の一味だな」
「リーダーは、残忍で知られる男」
「話し合いは、通じなさそうね」
「ああ」
* * *
「どうする」
「倒すしかない」
「また、戦いね」
「仕方ない」
「カイ、やれるか」
「はい」
* * *
盗賊団の討伐に向かった。
「いたぞ!」
「二十人、確認」
「行くぞ」
* * *
戦闘は、一方的だった。
「何だ、お前らは!」
「盗賊討伐だ」
「くそっ、やれ!」
* * *
「はあっ!」
ルークの剣が、盗賊を倒していく。
「三人! 五人!」
サラとカイも、加勢した。
「十人!」
* * *
「退け! 退け!」
盗賊たちは、逃げ出した。
「追うか」
「いや、いい。これで、しばらくは来ないだろう」
「そうね」
* * *
町に戻ると、歓声が上がった。
「英雄様! ありがとうございます!」
「お礼なんて、どうすれば......」
「いらない。旅を続けるだけだ」
* * *
「英雄様、次の町でも......」
「次の町?」
「そこでも、問題が起きているんです」
「......」
「お願いします」
* * *
「きりがないな」
ルークは呟いた。
「英雄になると、こうなるのか」
「そうみたいね」
「助けを求められ続ける」
「断るわけにも、いかないし」
* * *
「でも、このままでは......」
「聖地巡礼が、進まない」
「ああ」
「どうする」
* * *
「断るしかない」
ルークは決断した。
「すべての町を、助けることはできない」
「でも......」
「俺たちには、やるべきことがある」
「聖地巡礼......」
「そうだ」
* * *
「次の町の人には、申し訳ないが......」
「断らせてもらう」
「いいの?」
「いいも何も、限界がある」
「......」
「俺たちは、万能じゃない」
* * *
「分かりました」
カイが言った。
「全員を、助けることはできない」
「そうだ」
「でも、目の前の人は、助けたい」
「......」
「それじゃ、駄目ですか」
* * *
「駄目じゃない」
ルークは微笑んだ。
「お前らしいな」
「でも、ルークが言う通り、限界もあります」
「ああ」
「だから、選ばないといけない」
「そうだ」
* * *
「英雄の代償、か」
サラが言った。
「名声は、自由を奪う」
「そうだな」
「これからは、気をつけないと」
「ああ」
* * *
「次の町には、断りを入れよう」
「分かった」
「そして、聖地巡礼を続ける」
「はい」
「俺たちの目的は、世界を救うことだ」
「全ての町を、救うことじゃない」
* * *
「厳しい選択ね」
「ああ。だが、必要な選択だ」
「分かってる」
「行こう。次の聖地が、待っている」
「「はい」」
* * *
英雄の名声は、重荷でもあった。
だが、三人は──
自分たちの使命を、見失わなかった。
* * *
次回予告
* * *
遠征を続ける中、内部から裏切りが。
密偵の存在が、発覚する。
そして、意外な人物が黒幕だった──
第7話「裏切りの報告書」
「誰かが、俺たちの情報を漏らしている」
「まさか、あいつが......」
信頼が、揺らぐ──




