第5話「深淵狩り」
ついに、氷結の聖域に到着した。
「ここが......」
巨大な氷の山が、目の前にそびえていた。
「美しいわね」
「ああ。だが──」
「何かが、おかしい」
* * *
「おかしい?」
「空気が、重い」
「確かに......」
「深淵の気配がする」
「ここにも、汚染が......」
* * *
「聖地が、汚染されているのか」
「そのようね」
「まずい。聖地の力を借りるには、浄化が必要だ」
「浄化......」
「深淵魔を、倒すしかない」
* * *
「どれくらいいるんでしょう」
「分からない。調べてみよう」
三人は、慎重に聖域の中へ入った。
* * *
「......!」
氷の洞窟の中は、深淵魔であふれていた。
「数が......」
「五十......いや、百以上」
「こんなに......」
* * *
「これは、巣だな」
「巣?」
「深淵魔が、聖地の力に引き寄せられて、巣を作った」
「聖地の力を、吸い取っているのね」
「ああ。このままでは、聖地が死ぬ」
* * *
「どうする」
「狩る」
「狩る? この数を?」
「やるしかない」
「......」
「聖地を救うためだ」
* * *
「作戦は」
「まず、外側から削っていく」
「外側から?」
「一度に全部と戦うのは無理だ。少しずつ減らす」
「なるほど」
「ゲリラ戦法だな」
* * *
「カイ、お前の加護が鍵になる」
「僕の?」
「深淵魔は、お前の加護を恐れる」
「恐れる......」
「お前が前に出れば、敵は怯む。その隙を突く」
「分かりました」
* * *
最初の襲撃を仕掛けた。
「行くぞ!」
「「はい!」」
三人が、深淵魔の群れに突っ込んだ。
* * *
「はあっ!」
ルークの剣が、深淵魔を斬り裂いた。
「一体! 二体!」
サラも、正確な剣術で敵を倒していく。
「三体目!」
* * *
「カイ、前に出ろ!」
「はい!」
カイが前に出ると、加護の光が溢れた。
「グルル......!」
深淵魔が、怯んだ。
「今だ!」
* * *
三人の連携で、次々と深淵魔を倒していく。
「十体!」
「二十体!」
「三十体!」
だが、敵の数は、まだまだ多かった。
* * *
「一旦、引くぞ」
「はい」
三人は、洞窟の外へ退却した。
「疲れた......」
「ああ。だが、三十体は倒した」
「まだ七十体以上いるわね」
* * *
「休憩してから、また攻める」
「分かった」
「カイ、大丈夫か」
「はい......なんとか」
「加護の消耗は」
「少し、疲れました」
「無理するな」
* * *
休憩後、再び攻撃を仕掛けた。
「行くぞ!」
「「はい!」」
同じ戦法で、深淵魔を削っていく。
* * *
「四十体!」
「五十体!」
「六十体!」
着実に、数を減らしていった。
* * *
だが、その時。
「グォォォォォ......!」
奥から、巨大な咆哮が響いた。
「何......!」
「大型だ......!」
「ボスがいたのか......」
* * *
巨大な深淵魔が、現れた。
「でかい......」
「通常の深淵魔の、五倍はある」
「これは......厳しいわね」
* * *
「カイ、お前の加護で──」
「っ......!」
カイの体から、光が溢れ始めた。
「また、暴走......」
「カイ!」
* * *
「大丈夫......です......」
カイは、歯を食いしばった。
「抑えます......」
「無理するな」
「でも......」
「あの大型を、倒さないと......」
* * *
「俺とサラで、何とかする」
「でも......」
「お前は、加護を抑えることに集中しろ」
「......分かりました」
「サラ、行くぞ」
「ええ」
* * *
二人は、巨大な深淵魔に挑んだ。
「はあっ!」
ルークの剣が、深淵魔の腕を斬った。
だが、浅い。
「固い......」
* * *
「私も!」
サラが、足を狙った。
だが、同様に浅い傷しかつかなかった。
「皮膚が、厚すぎる」
「どうすれば......」
* * *
「グォォォ!」
深淵魔の腕が、ルークを吹っ飛ばした。
「ぐっ......!」
「ルーク!」
「大丈夫だ......」
ルークは立ち上がった。
「だが、このままでは......」
* * *
「ルーク!」
カイが叫んだ。
「何だ」
「僕に、やらせてください」
「何?」
「加護の力で、倒せるかもしれません」
「だが、暴走の危険が──」
「抑えます。今度こそ」
* * *
「......」
ルークは、カイの目を見た。
強い意志が、そこにあった。
「......分かった」
「ありがとうございます」
「だが、限界を感じたら止めろ」
「はい」
* * *
カイは、深淵魔の前に立った。
「行きます」
加護の光が、溢れ出す。
「グルル......!」
深淵魔が、怯んだ。
* * *
「今だ......!」
カイは、全力で加護を解放した。
「はあああああ!」
* * *
「......!」
眩い光が、洞窟を包んだ。
「カイ......!」
「すごい......」
* * *
光が収まった時。
巨大な深淵魔は、消滅していた。
「やった......」
「カイ!」
カイは、その場に崩れ落ちた。
* * *
「カイ! 大丈夫か!」
「は、はい......」
「すごい力だったわ」
「でも、消耗も......」
「ああ。しばらく休め」
* * *
「残りの深淵魔は......」
「ボスがいなくなって、散り散りになってる」
「今のうちに、掃討しよう」
「サラに任せる。俺は、カイを見ている」
「分かったわ」
* * *
サラが、残りの深淵魔を倒していった。
「これで、最後......」
「終わった......」
「聖域の深淵魔、全滅よ」
* * *
「よくやった」
ルークが言った。
「聖域を、救えた」
「ええ」
「カイのおかげね」
「僕は......」
* * *
「お前の力が、決め手だった」
「ルーク......」
「よくやった」
「ありがとうございます......」
カイは、疲れ切った顔で微笑んだ。
* * *
聖域の奥に、古い祭壇があった。
「ここが、聖地の中心ね」
「ああ。ここで、加護を強化できるはずだ」
「でも、カイは今......」
「少し休んでからだ」
* * *
翌日。
カイの体力が、回復した。
「準備はいいか」
「はい」
「では、祭壇に触れてみろ」
「分かりました」
* * *
カイは、祭壇に手を置いた。
「......!」
光が、カイの体を包んだ。
「これは......」
「聖地の力が、流れ込んでいる」
「すごい......」
* * *
「体の中が......熱い......」
「耐えろ、カイ」
「は、はい......」
光は、しばらく続いた。
そして──
* * *
「終わった......」
カイは、手を離した。
「どうだ」
「体が......軽い」
「軽い?」
「力が、前より安定している気がします」
* * *
「加護が、強化されたんだ」
「本当ですか」
「ああ。聖地の力を吸収した」
「すごい......」
「これで、次の段階に進める」
* * *
「次の段階?」
「加護の制御が、さらに容易になる」
「本当ですか」
「試してみろ」
「はい」
* * *
カイは、加護を発動させた。
「......!」
「前より、コントロールしやすいです」
「だろう」
「これなら、暴走の心配も減る」
「よかった......」
* * *
「だが、これで終わりではない」
「え?」
「聖地は、他にもある」
「他にも......」
「全ての聖地を巡れば、お前の力は完全になる」
「分かりました」
* * *
「次の聖地を、目指そう」
「はい」
「私も、ついていくわ」
「ありがとう」
「三人で、全ての聖地を巡る」
「「はい」」
* * *
深淵狩りは、成功した。
そして、カイの力は──
確実に、成長していた。
* * *
次回予告
* * *
聖地を救った三人は、英雄として称えられる。
だが、その名声は──
新たな問題を生む。
第6話「英雄の代償」
「あなたたちは、英雄だ」
「英雄など、望んでいない」
名声の裏に、影が忍び寄る──




