第15話「次なる戦場へ」
封印修復の報告から、数週間が経った。
学院は、いつもの日常に戻りつつあった。
だが、ルークたちは知っていた。
これは、嵐の前の静けさだと。
* * *
「ルーク」
サラが声をかけた。
「何だ」
「そろそろ、次の段階について話し合わない?」
「次の段階......」
「封印の問題は、一時的に解決した」
「ああ」
「でも、根本的な対策が必要よ」
* * *
「分かっている」
ルークは頷いた。
「カイの力を、さらに高める必要がある」
「ええ」
「そのために、新しい訓練方法を考えている」
「どんな?」
「聖地巡礼だ」
* * *
「聖地巡礼?」
「古い時代、勇者は各地の聖地を巡り、力を高めたという」
「聞いたことあるわ」
「その聖地には、加護を増幅する効果があるらしい」
「カイの加護も?」
「可能性は高い」
* * *
「でも、聖地って......」
「各地に散らばっている」
「そう。巡礼するには、学院を長期間離れないといけない」
「......」
「学院長の許可が必要ね」
「ああ。それに、敵の動きも気になる」
* * *
「敵の動き?」
「マルクスたちは、まだ諦めていない」
「確かに......」
「俺たちが学院を離れている間に、何か仕掛けてくるかもしれない」
「訓練生たちが、心配ね」
「ああ」
* * *
「どうする?」
「二つの方法がある」
「聞かせて」
「一つ目は、訓練生たちも連れて行く」
「全員で、聖地巡礼を?」
「ああ。そうすれば、学院に残す心配がない」
「でも、人数が多いと......」
「目立つし、動きが遅くなる」
* * *
「二つ目は?」
「誰かに、訓練生たちを任せる」
「任せる......誰に」
「エドワードだ」
「エドワード?」
「あいつは、元々俺の側にいた。訓練生たちの面倒を見る能力はある」
「でも、信用できるの」
* * *
「完全には、まだ」
「なら......」
「だが、試してみる価値はある」
「......」
「エドワードに任せて、俺たちは聖地巡礼に行く」
「もし、裏切られたら」
「その時は、対処する」
* * *
「ルーク、あなたって......」
「何だ」
「思い切りがいいわね」
「そうでないと、前には進めない」
「......確かにね」
「で、どうする。賛成か」
「......賛成よ。あなたを信じるわ」
* * *
「カイ」
「はい」
「聖地巡礼に、行く」
「聖地巡礼......」
「お前の加護を、さらに強くするためだ」
「分かりました」
「長い旅になる。覚悟はいいか」
「はい。どこへでも、ついていきます」
* * *
「エドワード」
「はい」
「俺たちが留守の間、訓練生たちを頼む」
「......本当に、いいのですか」
「何がだ」
「僕なんかに、任せて」
「お前しか、いないからな」
「......」
* * *
「お前を、試している」
「試す......」
「この任務を成功させれば、俺はお前を完全に信用する」
「......」
「やれるか」
「......やります。必ず」
「よし」
* * *
「学院長に、許可を取ってきます」
「頼んだ」
サラが学院長室に向かった。
* * *
「聖地巡礼、ですか」
「はい。カイの加護を強化するためです」
「......」
「封印の問題は、ご存知でしょう」
「ああ。深刻だな」
「カイの力が強くなれば、封印も安定します」
「確かに......」
* * *
「許可を、いただけますか」
「......分かった。許可しよう」
「ありがとうございます」
「だが、気をつけろ。聖地は、危険な場所も多い」
「心得ています」
「無事に、帰ってこい」
「はい」
* * *
「許可が下りたわ」
「そうか」
「準備を、始めましょう」
「ああ」
* * *
出発の日。
訓練生たちが、見送りに来た。
「ルーク様、お気をつけて」
「ああ」
「カイさんも」
「はい。みんなも、頑張ってね」
「もちろんです」
* * *
「エドワード」
「はい」
「任せたぞ」
「......はい。必ず、務めを果たします」
「信じている」
「......ありがとうございます」
* * *
「リオン」
「はい」
「みんなをまとめてくれ」
「分かりました」
「お前なら、やれる」
「......はい。任せてください」
* * *
「サラ、カイ」
「はい」
「行くぞ」
「「はい」」
三人は、学院を後にした。
* * *
「最初の聖地は、どこ?」
「北の山岳地帯にある、『氷結の聖域』だ」
「氷結の聖域......」
「古い時代、勇者がそこで修行したという言い伝えがある」
「寒そうね」
「覚悟しておけ」
* * *
「旅は、どれくらいかかりますか」
「片道で、二週間ほど」
「長いですね」
「ああ。だが、その価値はある」
「分かりました」
「道中、訓練も続ける。時間を無駄にはしない」
「はい」
* * *
三人は、北へ向かって歩き始めた。
「ルーク」
「何だ」
「第2部が、終わろうとしてるわね」
「何の話だ」
「いいえ、何でもない」
「......変なやつだ」
「ふふ」
* * *
旅は、順調に進んだ。
道中、野盗や魔物にも遭遇したが、三人で撃退した。
「カイ、動きが良くなったな」
「ルークのおかげです」
「謙遜するな。お前の努力の結果だ」
「......ありがとうございます」
* * *
一週間後。
「見えてきた......あれが、氷結の聖域」
「すごい......」
巨大な氷の山が、目の前にそびえていた。
「美しいけど......寒そう」
「寒い。だが、行くしかない」
「はい」
* * *
「ここから先は、さらに危険だ」
「分かっています」
「油断するな」
「はい」
「一歩一歩、確実に進もう」
「「はい」」
* * *
氷の聖域への挑戦が、始まろうとしていた。
そして、これは新たな物語の幕開けでもあった。
* * *
「第2部は、ここで終わりだ」
ルークは、氷山を見上げて言った。
「だが、物語は続く」
「ええ」
「俺たちは、まだ始まったばかりだ」
* * *
第1部では、カイと出会い、師弟関係を築いた。
第2部では、その関係を公表し、政治の渦に巻き込まれた。
そして、第3部では──
* * *
「新たな試練が、待っている」
「でも、怖くないわ」
「俺もだ」
「僕も、です」
「三人いれば、何だってできる」
* * *
「行こう」
「ああ」
「はい」
三人は、氷の聖域へと足を踏み入れた。
* * *
振り返れば、長い道のりだった。
ルークは、悪役として目覚め、運命を変えることを決めた。
カイと出会い、彼を鍛え、仲間を得た。
敵も増えたが、味方も増えた。
そして今、新たな旅が始まる。
* * *
「俺は、この世界の物語を書き換える」
それが、ルークの決意だった。
「原作のような悲劇は、許さない」
「カイを守り、世界を救う」
「そのために、俺は戦い続ける」
* * *
「ルーク」
「何だ」
「何を考えてるの」
「......これからのことを」
「私たちのこと?」
「ああ。そして、世界のことを」
「大きく出たわね」
「俺は、本気だ」
* * *
「分かってる」
サラは微笑んだ。
「だから、ついていくの」
「......」
「あなたの夢が叶うまで」
「サラ......」
「私たちは、仲間よ。忘れないで」
「忘れるものか」
* * *
「カイ」
「はい」
「お前は、どう思う」
「僕は......」
カイは考えた。
「ルークについていきたいです」
「なぜだ」
「ルークが、僕を変えてくれたから」
* * *
「変えた?」
「はい。平民だった僕に、可能性をくれた」
「......」
「だから、今度は僕が、ルークを助けたい」
「カイ......」
「一緒に、世界を救いましょう」
「......ああ」
* * *
「よし、行くぞ」
「「はい」」
三人は、氷の聖域へと歩み始めた。
寒風が吹きすさぶ中、彼らの足取りは力強かった。
* * *
第2部「師弟契約公表篇:貴族政治と管理」
これにて、完結。
* * *
次なる戦場で、彼らを待ち受けるものは何か。
第3部「加護覚醒篇:聖地巡礼と力の試練」
新たな冒険が、始まる──
* * *
第3部予告
聖地巡礼が始まる。
カイの加護は、さらなる覚醒を遂げる。
そして、新たな敵と味方が現れる──
第3部「加護覚醒篇:聖地巡礼と力の試練」
「この力を、制御する」
「そのために、聖地を巡る」
新章開幕──




