第13話「再起の誓い」
期末考査の敗北から、一週間が経った。
訓練場に、訓練生たちが集まっていた。
「みんな、集まったな」
「「「はい」」」
彼らの表情は、暗かった。
「まだ、引きずっているのか」
「......」
* * *
「いいか、よく聞け」
ルークは言った。
「負けは負けだ。それは事実」
「......」
「だが、負けたことを恥じる必要はない」
「でも......」
「恥じるべきは、負けて何も学ばないことだ」
* * *
「学ぶ......」
「ああ。負けから、何を学んだ」
「......」
「リオン、お前はどうだ」
「僕は......」
リオンは考えた。
「力の差を、感じました」
「それだけか」
「......あと、隙を突く感覚は、掴めた気がします」
* * *
「いい答えだ」
「え?」
「力の差を知ったこと。そして、自分の成長を感じたこと」
「......」
「両方が大事だ」
「はい......」
「他の者も、同じように考えろ」
* * *
「カイ」
「はい」
「お前は、どうだった」
「僕は......」
カイも考えた。
「ヴィクトルさんとの差を、感じました」
「どんな差だ」
「スピード、パワー、そして......」
「そして?」
「経験の差です」
* * *
「経験か」
「はい。あの人は、僕より多くの戦いを経験している」
「だから、強い」
「そう思います」
「なら、お前たちも経験を積めばいい」
「経験を......」
「そのために、新しい訓練を取り入れる」
* * *
「新しい訓練?」
「ああ。実戦経験を、増やす」
「どうやって」
「学院外での任務に、お前たちを連れて行く」
「任務......!」
「危険もある。だが、それが一番の経験になる」
「......」
* * *
「怖いか」
「......少し」
「正直でいい。怖いのは当然だ」
「......」
「だが、怖さを乗り越えた先に、成長がある」
「はい......」
「やるか、やらないか。自分で決めろ」
* * *
「俺は、やります」
リオンが言った。
「俺も」
「私も」
次々と、手が上がった。
「......全員か」
「はい」
「覚悟はあるんだな」
「「「はい!」」」
* * *
「よし」
ルークは頷いた。
「では、準備を始める」
「はい!」
「サラ、任務の選定を頼む」
「分かったわ」
「できるだけ、訓練に適したものを」
「任せて」
* * *
数日後。
「任務が決まったわ」
サラが報告した。
「何だ」
「王都近郊の森林警備。魔物の討伐任務」
「魔物?」
「低級の魔物よ。訓練にはちょうどいい」
「なるほど」
「期間は一週間。全員参加で」
* * *
「一週間か。長いな」
「実戦経験を積むには、これくらい必要よ」
「分かった」
「ただ、問題がある」
「何だ」
「学院の許可が必要なの」
「許可......」
「正式な任務として認めてもらわないと、外には出られない」
* * *
「学院長に掛け合う」
「大丈夫かしら」
「やってみるしかない」
ルークは、学院長室に向かった。
* * *
「ギルバート君、また来たのか」
「お願いがあります」
「聞こう」
「訓練生たちを、任務に連れて行きたい」
「任務?」
「実戦経験を積ませたいのです」
* * *
「それは......」
学院長は眉をひそめた。
「危険ではないかね」
「危険は承知しています」
「生徒に何かあったら、責任問題になる」
「俺が、全責任を負います」
「......」
* * *
「お願いします」
ルークは頭を下げた。
「彼らには、経験が必要なんです」
「......」
「期末考査で、全員が負けました」
「聞いている」
「彼らは、悔しがっている。でも、学院内の訓練だけでは限界がある」
「......」
* * *
「実戦を経験させてください」
「......」
学院長は、しばらく黙っていた。
「......分かった」
「ありがとうございます」
「ただし、条件がある」
「何でしょうか」
「必ず、全員を無事に帰らせること」
「約束します」
* * *
許可が下りた。
「よし、任務に出発する」
「「「はい!」」」
訓練生たちは、武装を整えた。
「心の準備はいいか」
「はい!」
「では、行くぞ」
* * *
王都近郊の森林。
「ここが、任務地点か」
「ええ。この辺りに、魔物が出没しているそうよ」
「どんな魔物だ」
「ゴブリンが中心。時々、オークも出るらしいわ」
「オークか。少し厄介だな」
* * *
「まず、拠点を作る」
「拠点?」
「一週間、ここで過ごすんだ。寝床が必要だろう」
「確かに......」
「全員で、テントを張れ」
「「「はい!」」」
* * *
拠点ができた。
「よし。では、任務の説明をする」
「お願いします」
「俺たちの任務は、この森の魔物を討伐すること」
「......」
「だが、むやみに戦うな」
「どういうことですか」
* * *
「魔物と戦う前に、観察しろ」
「観察?」
「相手の動き、習性、弱点。それを見極めてから戦う」
「なるほど......」
「無計画に戦えば、怪我をする」
「分かりました」
「カイ、お前が先頭に立て」
「はい」
* * *
最初の戦闘。
「ゴブリン発見。三体」
「どうする」
「観察してから、仕掛けます」
カイは、ゴブリンの動きを見た。
「あいつら、左側が死角だ」
「なるほど」
「左から、回り込みます」
* * *
「行け」
カイが飛び出した。
「疾風連撃!」
一体目を、瞬時に倒す。
「次......!」
二体目、三体目も、連続で倒した。
「終わりました」
「見事だ」
* * *
「すごい......」
訓練生たちは、驚いていた。
「あっという間だった......」
「これが、カイさんの実力......」
「お前たちも、やれるようになる」
「本当ですか」
「訓練を続ければ、な」
* * *
「次は、お前たちの番だ」
「僕たちが?」
「ああ。ゴブリンを見つけたら、討伐してみろ」
「......」
「怖いか」
「......少し」
「だが、やらなければ成長しない」
「......はい」
* * *
リオンが、最初に挑戦した。
「ゴブリン発見......二体」
「どうする」
「観察して......あ、やっぱり左が死角だ」
「行け」
「はい!」
* * *
「はあっ!」
リオンが斬りかかった。
だが、ゴブリンは避けた。
「くっ......!」
「落ち着け!」
「は、はい......!」
リオンは、呼吸を整えた。
* * *
「もう一度......」
今度は、しっかり狙って斬りかかった。
「やった......!」
一体目を倒した。
「もう一体......!」
二体目も、なんとか倒した。
「終わった......」
* * *
「よくやった」
「ありがとうございます......」
「最初にしては、上出来だ」
「でも、カイさんみたいには......」
「カイは、一年以上訓練している。最初から同じにはいかない」
「そうですか......」
「焦るな。お前も、成長している」
* * *
一週間の任務が続いた。
訓練生たちは、次々と実戦を経験した。
「今日で、三体目だ」
「俺も、四体倒した」
「私は、まだ二体......」
「数は関係ない。経験が大事だ」
* * *
「みんな、成長してるわね」
サラが言った。
「ああ。目に見えて変わってきた」
「最初は怯えてたのに、今は自信がある」
「実戦は、最高の教師だな」
「そうね」
* * *
最終日。
「全員、集合」
「「「はい」」」
「一週間、よく頑張った」
「「「ありがとうございます」」」
「お前たちは、確実に成長した」
* * *
「でも、まだ足りません」
リオンが言った。
「分かっています。もっと強くならないと」
「いい心構えだ」
「次の任務も、連れて行ってください」
「ああ。約束する」
* * *
「カイ」
「はい」
「お前も、よくやった」
「ありがとうございます」
「みんなを引っ張ってくれた」
「......」
「お前は、いいリーダーになれる」
「リーダー......」
* * *
「これからも、俺を助けてくれ」
「はい。もちろんです」
「サラも」
「任せて」
「三人で、この仲間たちを育てよう」
「「はい」」
* * *
学院に戻った。
「お帰りなさい、ギルバート君」
学院長が出迎えた。
「全員、無事に戻りました」
「そのようだな」
「任務は、成功です」
「報告は後で聞こう」
* * *
「どうだった、任務は」
マルクスが、近づいてきた。
「順調だ」
「ふん。下級貴族と平民の集まりが、何ができる」
「見ていればいい」
「何?」
「次の期末考査で、結果を出す」
* * *
「言うじゃないか」
「言うだけじゃない。やってみせる」
「......」
「お前たちには、負けない」
「面白い。楽しみにしているよ」
マルクスは去っていった。
* * *
「大丈夫なの、あんなこと言って」
「大丈夫だ」
「でも......」
「俺たちは、成長している。彼らには負けない」
「......そうね」
「信じてくれ」
「......信じるわ」
* * *
再起の誓いは、確かな形になりつつあった。
「俺たちは、何度でも立ち上がる」
「そして、次は必ず勝つ」
訓練生たちの目には、新たな光が宿っていた。
* * *
次回予告
* * *
訓練生たちが成長する一方で、地下遺跡に異変が。
封印が、再び揺らぎ始める。
そして、ルークは選択を迫られる──
第14話「封印の綻び」
「地下から、何かが目覚めようとしている」
「俺たちで、止める」
運命が、動き出す──




