第14話「振り返り」
深淵との戦いから、一年が経った。
学院は、ますます発展していた。
「今年も、入学希望者が増えています」
「そうか」
「もう、施設が足りないくらいです」
「拡張を、考えないとな」
「はい」
ルークは、窓の外を見ていた。
「一年か......」
「早いものだな」
「この世界に来てから」
「何年経っただろう」
「......」
ルークは、過去を振り返った。
転生したあの日。
「ここは......どこだ」
「俺は......死んだはずじゃ」
見知らぬ世界。
見知らぬ体。
「転生......したのか」
最初は、戸惑った。
何も分からなかった。
だが、原作の知識があった。
「この世界は、俺が知っている物語だ」
「カイという主人公がいる」
「そして、俺は......ざまぁ役」
「踏み台にされて、没落する役」
絶望しそうになった。
だが、諦めなかった。
「運命を、変える」
「俺は、没落しない」
そして、カイと出会った。
「初めまして、僕はカイです」
「俺は、ルークだ」
最初は、警戒していた。
原作では、カイに滅ぼされる立場だったから。
だが、すぐに分かった。
「この子は、純粋だ」
「悪意なんて、ない」
カイを、育てることにした。
コーチとして。
「カイ、剣の持ち方が違う」
「こうだ」
「はい、ルーク」
カイは、素直だった。
教えれば、すぐに吸収する。
「才能があるな」
「ありがとうございます」
そして、サラと出会った。
「初めまして、サラ・ヴァレンシュタインです」
「ルーク・ギルバートだ」
最初は、敵対的だった。
だが、次第に打ち解けた。
「あなた、面白い人ね」
「そうか?」
「ええ」
「貴族らしくない」
「褒めているのか」
「さあ、どうかしら」
サラは、強い人だった。
自分の道を、自分で切り開く。
そんなサラに、惹かれた。
「俺は、お前のことが」
「......」
「私も、よ」
リオンとも、出会った。
「俺は、リオンです」
「ルーク様の訓練生になりたいです」
「なぜ、俺のところに」
「ルーク様の剣術が、憧れなんです」
「......いいだろう」
「俺の弟子になれ」
リオンは、努力家だった。
才能は、特別じゃなかった。
だが、誰よりも努力した。
「リオン、もう休め」
「いえ、まだやれます」
「無理をするな」
「でも......」
「休むのも、訓練だ」
「......分かりました」
多くの仲間に、出会った。
多くの敵とも、戦った。
深淵王アザル。
教会の陰謀。
国境戦争。
そして、深淵の本体。
全てを、乗り越えてきた。
仲間と共に。
「......」
ルークは、目を開けた。
「振り返ると」
「長い道のりだったな」
「でも、後悔はない」
「全てに、意味があった」
「この世界に来てよかった」
「心から、そう思える」
「ルーク」
「サラか」
「何を、考えていたの」
「過去を、振り返っていた」
「そう」
「どうだった」
「いい人生だった」
「まだ途中だけど」
「まだ途中よ」
「これからも、続くの」
「ああ、そうだな」
「まだまだ、やりたいことがある」
「学院を発展させる」
「若い世代を育てる」
「お前と、一緒に」
「......」
「ルーク」
「何だ」
「私も、あなたに出会えてよかった」
「この人生で、一番の幸せよ」
「......」
「俺も、だ」
二人は、手を繋いだ。
「さあ、仕事に戻ろう」
「明日も、やることがたくさんある」
「ええ」
「行きましょう」
振り返りは、終わった。
だが、人生は続く。
これからも、前を向いて──歩いていく。
次回予告
第7部、完結。
ルークたちの戦いは、一区切りを迎える。
そして、最終章へ──
第15話「新たな夜明け」
「俺たちの戦いは、終わった」
「だが、新しい物語が始まる」
第7部、完結──




