第10話「代償」
戦いから、三日が経った。
四人は、まだ意識を取り戻していなかった。
「ルーク様、目を覚ましてください」
「カイ様も、サラ様も......」
医療班が、懸命に治療を行っていた。
「容態は、どうですか」
「安定していますが......意識が戻りません」
「世界の意志の力を、使いすぎたのでしょう」
「体が、耐えきれなかったのかもしれません」
「そんな......」
アレンが、やってきた。
「四人の様子は」
「まだ、目覚めません」
「くそっ......」
「俺たちが、もっと戦えていれば」
「自分を、責めないでください」
「あの状況では、仕方なかったのです」
「......」
四日目。
リオンが、目を覚ました。
「......ここは」
「リオン先生! 目覚めましたか!」
「俺は......生きているのか」
「はい、生きています」
「ルーク様たちは」
「まだ、眠っています」
「そうか......」
リオンは、横になったまま天井を見た。
「勝ったんだな」
「はい、勝ちました」
「よかった......」
五日目。
サラが、目を覚ました。
「ルーク......」
「サラ様、目覚めましたか」
「ルークは......」
「まだ、眠っています」
サラは、ルークのベッドに近づいた。
「ルーク、起きて......」
「お願い......」
だが、ルークは目を覚まさなかった。
六日目。
カイが、目を覚ました。
「僕は......」
「カイ先生、目覚めましたか」
「ルークは」
「まだ、眠っています」
「そうですか......」
カイは、ルークのベッドに向かった。
「ルーク......」
「僕は、目覚めました」
「ルークも、早く......」
七日目。
ルークは、まだ目覚めなかった。
「なぜ、ルーク様だけ」
「一番、力を使ったからでしょう」
「核に、直接剣を刺しましたから」
「その時、最も大きな負担がかかったはずです」
「ルーク......」
サラが、ルークの手を握った。
「お願い、目覚めて」
「私を、一人にしないで」
その時。
ルークの指が、わずかに動いた。
「......」
「ルーク?」
ルークの目が、ゆっくりと開いた。
「......サラ」
「ルーク!」
サラが、ルークに抱きついた。
「よかった......」
「目覚めて、よかった......」
「どれくらい、寝ていた」
「七日よ」
「七日か......」
「長いな......」
「カイとリオンは」
「もう、目覚めているわ」
「そうか......」
「よかった......」
カイとリオンが、やってきた。
「ルーク、目覚めたんですね」
「ルーク様......」
「ああ、目覚めた」
「心配かけたな」
「いいえ」
「目覚めてくれて、よかったです」
「戦いは、どうなった」
「勝ちました」
「深淵の本体は、消滅しました」
「もう、脅威はありません」
「そうか......」
「よかった......」
数日後。
四人は、体調を取り戻しつつあった。
「世界の意志の力を使った代償は」
「どうなっているんでしょうか」
賢者ガレウスが、四人を診察した。
「なるほど......」
「どうですか」
「寿命は、確かに縮んでいる」
「だが、予想よりも少ない」
「四人で分け合ったからだろう」
「一人だったら、もっと深刻だった」
「どれくらい、縮んだんですか」
「正確には分からないが......」
「おそらく、五年から十年程度」
「五年から十年......」
「それなら、まだ長く生きられます」
「ああ」
「まだ、やりたいことがたくさんある」
「十分だ」
「ルーク様、本当に良かったんですか」
「寿命を縮めてまで......」
「良かった」
「世界を守れたんだ」
「これ以上の結果は、ない」
「それに、みんなで分け合えた」
「一人で背負わずに済んだ」
「ありがとう、カイ、サラ、リオン」
「お前たちのおかげだ」
「いいえ」
「ルーク様のおかげです」
「私たちは、ルークについて行っただけ」
「あなたが、導いてくれた」
「......」
「お前たちには、感謝しかない」
数週間後。
四人は、完全に回復した。
「さあ、帰ろう」
「学院が、待っている」
「ええ」
「みんな、心配しているでしょうね」
「早く、顔を見せないと」
「そうですね」
凱旋の準備が、始まった。
「英雄たちの凱旋だ」
「盛大に迎えよう」
「いや、盛大じゃなくていい」
「静かに帰りたい」
「そうはいきませんよ」
「世界を救った英雄ですから」
「英雄か......」
「俺は、ただの教師なんだがな」
代償は、あった。
だが、それ以上のものを、得た。
仲間との絆。
守り抜いた世界。
それで、十分だった。
次回予告
学院への凱旋。
英雄たちを迎える人々。
そして、新たな日常へ──
第11話「凱旋」
「ただいま」
「おかえりなさい、英雄様」
帰還の時──




